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百英雄伝レビュー(switch版)

2024-07-02 13:26:45 | ゲーム

百英雄伝の二週目も終わったので、まとめとしてレビューを行う。※色付き箇所のみネタバレあり

一周目 68時間、二週目 60時間 →合計128時間となった。全体の時間数で見ると一週目だけでも60時間オーバーである為、十分なボリュームと思わせる。が多少のからくりはあると思う。やはり本作の肝である仲間集め120人分をコンプリートすることに半分以上の時間を費やすと言っても過言ではない。逆に言うと仲間集めがなければ素通しプレイで見事に30時間程度で収まってしまうような内容であり、全体的に薄いと感じざるを得ない仕上がりとなっていた。その仲間集めについては一人ひとりの加入条件はさほどきつくはないが、単純に一人あたり20分間隔で仲間を増やしても40時間はかかる試算となるわけだからプレイ時間として膨らむのは当然というところか。面倒だと捉えればそれまでであるが、これこそが本作の特長であるがゆえに、是非を論ずるのもどうかと思うのでコレについては置いておこう。何よりの問題はプレイに挟まれるロードであったり、キーレスポンスの悪さであろう。これだけで数時間のロスタイムが発生していると言っても過言ではない。戦闘や移動などの一般的に差し込まれるロードの場面で毎回10秒程度、キーレスポンスで約1秒程度の遅れが生じる。ロードはまだ我慢できるがキーレスポンスのストレス性は頂けなかった。更に本拠地内に点在する施設の導線も悪く、行ったり来たりの無駄足が多かった。もちろん本拠地内でのファストトラベルも存在するが、コレは定位置に配置された石碑がアクセスポイントとなる為、そもそもこの石碑の配置が悪いとあまり意味を成さない他、ファストトラベルを実行したところでロードが差し込まれる為 明らかに離れた施設の場所にアクセスしない限りは歩いたほうが早いというプレイヤー泣かせな場面が見受けられた。こういったところが膨大なプレイ時間を費やす からくりの一つである。この環境が良くなっていれば少なくとも10時間程度の削減は出来たと思われる。

シナリオはおしなべて言えば可、という結論になる。しかし良には至らなかった。まず全体的に緊迫感がない。序盤のノアの故郷襲撃やエルティスワイスの占拠。ここは序盤の盛り上がりシーンではあるが悲壮感が足りないなぁ と思えた。占拠された後も普通に町への出入りが出来て、普通に帝国兵と会話も出来てしまう始末。帝国軍の緩さが微笑ましく思えてしまう程である。その感じのまま終盤まで走ってしまっていたのが残念である。オルドリックという敵役を最後まで立ちはだからせてはいたが、この大役を担うにしては薄味のキャラクターであった。無難に中盤の難所程度で退場させた方が良かったかな。また、ノア・セイ・メリサという3人を主役扱いとしているが、そもそもこの3人自体がかなり薄味なことも考え物である。重要人物としては申し分ないがオルドリックと直接的な因縁があるわけではなく地に足がついてない関係性であった。ラスボスたるもの主人公との深い因縁がなければならない なんてことを言うつもりはないが、君たちがそれをしなければならないのか?という疑問は拭えない。「薄い人間関係の主役キャラ達が深い因縁があるかのような演出に寄せてしまった」ことが原因かと思う。しかしこういった点を省けば悪いところばかりではない。帝国の立ち位置や脅威というものは作中でプレイヤーに落とし込むような表現は出来ていたし、ぺリエールという領主の存在も連合軍の立ち上げとしてわかりやすい旗頭であった。またオルドリックと君主との関係性についても触れる場面も少なからずあった。実際の史実においても皇帝の暴走ではなく、一介の公爵身分が権力を握り、君主を囲い込んで国を牛耳るなんてことは珍しくなく、そういった演出を施しているあたりシナリオの妥当性があったりもする。しかしこの場合、権力を握る公爵側も国内有権者間での権力争いなどがしっかり描かれるの常である為、その描写があればもっと良かったと思う。とは言えども描くとなると大河ドラマのように人間関係の入乱れや思惑の乱立になるのでシンプル且つ明瞭にするという判断であれば致し方なしとも思える。少なくとも連合軍(仲間内)でも領主同士のいざこざがあり一枚岩の難しさは描いていたから最低限、可と思えるシナリオであった。またシナリオを形成する世界観として「魔導レンズ」という背景がある。本作では国家間での騒動が終始フォーカスされていたため、世界観に触れるシナリオはなかった。もし続編という話があるのであれば、もっと戦争をフックにした世界観の深掘りを描いて欲しいものである。

戦闘システムは今時のゲームとしては物足りなさを感じつつも、この辺が手打ちかなとも思える。やはりプレイアブルキャラが数十人にもなる本作で考えれば、ルーンという概念と英雄コンボという協力攻撃を図っただけでも十分であろう。何せこれだけキャラが多いと調整の工数が半端じゃない。近代RPGはシステムに力を入れることでキャラクターのカスタマイズ性を重視する傾向があるが、もちろんこれはプレイアブルキャラが少ないから出来る芸当であり本作との相性が悪いのは火を見るよりも明らかである。例として軌跡シリーズの「創の軌跡」を取ってみるとこのゲームはキャラが持つ固有オーダーとオーブメントの組合せでプレイアブルキャラのカスタマイズ性を見出すように頑張っていたが、総勢40人も超えるプレイアブルキャラがいるとなると案の定、ステータスの数値が4桁を超えるなど かなり大味な調整っぷりとなっていた。やはり相性が悪いのである。事実本作においてもキャラステータスはある程度似通っているキャラが多く、キャラ一人ひとりの独自性を出すのは正直難しい。本作程度のカスタマイズが手打ちであろう。とは言えども仲間にしたキャラクターを順繰り使い回しながらプレイしていれば飽きもしづらいし発掘気分もあって楽しさはある。悪くはない。

難易度はノーマルでヌルい部類に入るかな、と。ハードにするとちょっとわからないが変に難しくストレスを感じるよりは良いかと思う。また、所々での難所もあり決してヌルいだけではない。合計で6人枠での戦闘となるが4人枠をしっかりとした強キャラで埋めておけば攻略に苦労することはない。他の2人枠は愛のあるキャラで遊びを持たせることも可能であることは評価点に値する。強制参加の仲間もいるが同行者枠に配置させれば無理に参戦させることもない配慮がある。素晴らしいと感じた。一応クリア後のやり込みとして強キャラとバトルすることが出来るおまけ施設もあたりする。この辺の配慮も良きものとして受け止めることが出来る。

楽曲は素晴らしい仕上がりとなっている。序盤のうちは楽曲全体が小さくまとまってしまっている印象であったが、ゲームを進めているうちに使用されている楽曲が増え、ボス戦だけでも5、6種類くらい揃えている印象があり、どれも良かった。本拠地序盤のBGMもかなり聞きなじみがよく永遠ループして流れていても不快にならない程の完成度の高さ。後半から終盤に至っては本拠地BGMに緊迫感が漂うカッコ良さげな曲調となり佳境であることを匂わせてくれる。楽曲の使いどころのセンスが光っており、この場面でこのBGMは盛り上がるよねというツボをしっかり押さえている為、シナリオの演出に一役買っていること請け合いだ。

グラフィックは90年~2000年代ゲーマーには満足が出来る仕上がりとなっている。本作は近年注目を集めているHD-2Dのような作りをしており、リアル系CGのような映像美で勝負する作品ではないが 往年の親しみやすいドットキャラが精細に描かれており、単純な2Dとは違う、奥行も表現された今時の2D手法である。2DのRPGが主戦であったころのRPG好きからするとワクワク感が隠せないものであろう。更に作中ずっと2Dだけで描かれるのではなく要所要所ではある程度作りこんだポリゴンCG等のムービーシーンも差し込まれ、出来も悪くない。

ミニゲームについては過去の投稿である程度書いているので、この場で改めて是非について一個ずつ評価するつもりはないが端的に言うと、「種類は多すぎるし、色々不具合もあるが ここまで作りこんでくれたのはありがたい」と思うことである。

本作における一番の癌は操作性・融通性・快適性などのいわゆるユーザビリティが極端に悪いところだ。これはswitch版という製品であるがゆえ という理由もあるかもしれないが、高規格なマシンスペックを要求する仕様のゲームであるとは思えない。switchでも十分な稼働を約束出来る仕様である。冒頭にあるロードやキーレスポンスの他に、オートセーブ機能の仕様が粗末である。ワールドマップから何かしらのオブジェクト(町やダンジョン)にアクセスしない限りオートセーブが発動しないであったり、そもそも大概のゲームはオートセーブが発動した段階で画面上に表示されるものであるが、それもないから わかりづらい。挙句の果てにはフリーズやエラーによる強制終了。オートセーブの機能も大した役に立つものではないから被害が及ぶこともしばしばである。オートセーブ機能など実装しなくても良いからどこでもセーブできる機能であったりセーブポイントをもっと多く配置する等の配慮が欲しいし、今時のゲームなのだから「中断」があって然るべきであろう。所持品の制限も深刻だ。拠点解放で制限値を緩和していくのは良いがデフォルトで40種というのはストレスの部類にあたる。ルーンの付け替えが拠点倉庫かルーンのショップでしか出来ないというのも悪しき作りである。極めつけはアップデートで実装された「パフォーマンス優先」が全くパフォーマンス向上されていない点である。流石に首を傾げた。例を挙げれば枚挙に暇がない状態であり、ここに書かれているのは氷山の一角と言っても過言ではない。もちろんゲーム作品全てにおいてユーザビリティが欠けている例なんていくつもあるが、これだけ致命的な欠陥が多い作品は珍しい。少なくともswitch版をプレイする人は余裕を持った心で遊ぶことを推奨する。

何かとここまで書いてしまうと完全な欠陥品作品ではないかと思われるが、そうではないと否定したい。なぜならレビューなんてものは大概悪いことを中心に書きたがるものだからだ。逆に言うと改善して欲しいという裏返しでもあると思っているし、個人的にはそういう気持ちで書いている。そういった目線で本作が面白いか つまらないか というならば、大いに面白いだ。(このまとめにおける評価というのは何か相対的な尺度において判断をしているのではなく、自分自身の感覚的な評価である為 どこまで参考になるかはわからないが)そもそも個人的な性質としてRPGを2周することがまずない。しかもやり込み要素なんて不要だと思っており、あってもまず手を付けないのが常である。その自分自身がここまでやりこんだという事実が何よりも楽しかったんだなと思える絶対的な感覚だ。もちろん過去の幻想水滸伝2という作品の系譜であるから、という色眼鏡もないとは言えないが、恐らくそういった触込みがなくとも、同様に楽しめたであろう。何だかんだでプレイヤーが楽しくなるツボは抑えてある。仲間集めも楽しいし、ストーリーも先が気になる作りである。新しいルーンが手に入れば試したくなるし、本拠地の拡張や探索も楽しい。ワールドマップという存在も嬉しいし新しいダンジョンがあればワクワクもする。二週目では言えば一週目で仲間にしたキャラを引継いでプレイできるというトンチンカンな面白要素もある。往年のPS時代のRPGに頑張って寄せちゃってるよねと言えばそれまでだが、決してそれだけで終わっている作品ではないなと個人的には思っている。何よりも制作会社が極少人数でありマンパワーが不足していることは明らか。更に開発自体はほぼフル外注であろうと思える作品としては丁寧だと思う。そんな環境である中でも「楽しいRPGを作ろう」という気持ちは十分に伝わってくる立派な作品であった。そういった目線で見ると多々見受け粗末な点も致しかなし、と寛容になれるのではないだろうか。

個人的な結論は「ちゃんと面白くプレイできる作品であるし何よりも制作の真心を感じ取れるゲームなのだから温かい目で遊んであげようよ」という気持ちだ。

 

 

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