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忘れ形見

桐竹鳳凰文

2019-10-02 20:10:50 | 着物/Kimono

鳳凰は、桐の木に棲み、竹の実を食するという。聖人が生まれるときにのみ姿を現すという瑞鳥。中国の故事に因む縁起の良い文様。

文様を眺めているだけで、ありがたみを感じてしまうから、なんとも不思議。

嵯峨天皇以来、天皇のみが着用するものと定められている黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)には、桐竹鳳凰文があしらわれている。

霊力の創造。文化というものの極みでありましょうか。

 


麻の葉文様

2018-09-07 20:16:15 | 着物/Kimono

あ・さ・の・は。心地よい音の連なり。

麻の葉文様は無限文様で、放射状にどこまでも伸び広がる力を秘めている。

眺める角度、焦点の置き方によって、六つの菱形から成る麻の葉文様のみならず、いろいろなパターンの文様がとめどなく湧き上がってくる不思議な文様。それぞれの文様が生み出すリズムが快い。

いにしえより日本人は麻とは縁が深く、縄文人は麻の縄によって土器に文様を施し、神社においては麻で作られた注連縄で結界を張る。天に向かって真っすぐに、すくすくと育つその生命力にあやかりたいと、赤ん坊には麻の葉文様の産着を着せて健やかなる成長を祈ってきた。

麻の葉文様に、想いを托す。結ぶ力を、そう、「むすひ」の力を。


源氏香の図 

2018-07-24 15:59:00 | 着物/Kimono

私が最初に手にした帯は、源氏香の図の織り込まれた綺麗な銀鼠の博多織。とある娘(むすめ)が選んでくれた。源氏香の図の、規則的なようでいて不規則な、不規則なようでいて規則的な五十二の幾何学模様。それぞれの図柄に源氏物語の「桐壷」と「夢浮橋」を除いた五十二帖の名が当てられている。雅(みやび)と幾何学という異質な組み合わせを眺めていると、こころざわめき、幻想の世界へと誘(いざな)われる。魔に逢うための仕掛けのよう。泉鏡花は、源氏香の「紅葉賀」を羽織の紋にしていたという。鏡花の師は尾崎紅葉であった。鏡花に近づきたく、「紅葉賀」を紋にとも思ったがやはり憚られ、娘との再会を果たす縁(えにし)となった文楽の「生写朝顔話」にちなみ、源氏香の「朝顔」を紋にと娘に伝えたところ、「紅葉賀」と「朝顔」とは鏡像の間柄よと涼しげに微笑む。奇しくも、鏡ごしに鏡花の魔と通ずることに。私はこの娘の底知れぬ力を信じている。