三輪山の坐します姿の得も言われぬ美しさ。大物主大神(おおものぬしのおおかみ)が鎮まるという。大神(おおみわ)神社は三輪山そのものを御神体として、結界としての三ツ鳥居の手前に拝殿のみがあり、また、大物主大神は蛇体となって顕現すると信じられてきたことなどから、三輪山信仰は神道以前の古い信仰に起源があるものと考えられる。三輪山信仰については、能「三輪」に描かれているが、現れた三輪明神は男神かと思いきや女神の姿であり、さらに天照太神の天の岩戸の物語を舞い、「思へば伊勢と三輪の神 思へば伊勢と三輪の神 一体分身のおんこと いまさらなにといはくらや」と謡われる。能が、触れてはならぬ三輪山伝説を扱えるのは何ゆえか。三輪明神は神楽を舞い続け、夜明けとともに消えてゆく。大神神社への参拝は、まだ夜も明けきらぬころがよい。