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moi! タンペレ

フィンランドのタンペレに半年滞在することに。その滞在記です。

ネシ湖のその後

2019年04月28日 | 日記

前回ご紹介した標高が高いほうの湖、ネシ湖。

あの後10日後ほど経ってから、湖の氷はどうなってるのかしら?と気になって、

再び訪れてみたのが4月21日。そう、イースターのミサの後です。

朝は冷え込むとはいえ、日中は16、7℃くらいまで上がる日が続いていた。

昼間の日差しは意外に強い。

さすがにいくらなんでも溶けてるだろう、と思っていた。


湖にいたる道には雪がない。

よく見るとわずかに芽吹き始めた木も。


しばらく行ったところで、道のすぐそばの水たまり池に

カモのつがいがいるのを発見。近づいてもまったく動じない。 

 

雌ガモはいたって食欲旺盛。

忙しく泳ぎ回って食べ物のありそうな所を突っつき回したり

水に潜って水草をむしったりして腹ごしらえに余念がない。

そんな雌ガモを、雄ガモは時々気にしてるようなそぶりを見せつつも、

おおかたは悟りきった表情でボーッと遠くを見つめていらっしゃる。

「まあ、女ちゅうもんはね、こんなもんでしょ。こうなったら待ってるよりしょうがないでしょ。」

そんな雄ガモの心の声が聞こえてきた。

 


問題の湖はというと、こんな感じでした。

半ば溶け、半ば凍っているという状態。

街中のピュハ湖は全く凍っていないのに、18mの差でこんなに違うものなんですね。

真ん中の浮島になっているところは、実はカモメたちの基地になっている。

とうてい鳥とは思えない、サル山のサルのような獣くさい声で鳴きながら、

あちこちでなにやら密談していらっしゃる様子。


カモメって、海だけにいるものじゃなかったの?! 

体感的にはここも立派な海なのだが、いわゆる淡水の湖にカモメが

生息しているらしいことを発見して驚いたのであった。

そういえば、タンペレの街中を時々カモメが飛んでるな(今さら気づく)。

早朝の広場で食べ物を物色している彼らのお振る舞いは、まるで日本のカラスですけどね。


そして、湖のほとりに建つサウナ小屋はこの日も大入り満員のようだった。

実は、梯子を伝って湖へ入っていく人々を、遠慮しいしい撮った写真が一枚あったのだが、

いかにも隠し撮りしたような怪しい一枚になってしまったので

掲載は差し控えたいと思います、はい💦


しかしなんですね、みなさんただサウナに入るだけでなく、

サウナ小屋の前のベンチで体を冷ましながら四方山話に興じていらっしゃるのを見ると、

サウナは一種の社交場なのだな、ということがつくづく感じられる。

昔の日本の銭湯も、ちょっとこんな感じだったんじゃないだろうか。


この日はさらに足をのばして、もう一つのサウナ小屋とビーチがある場所まで

湖沿いの道を歩いてみることにする。

奥に進むほど氷が厚くなっていくような...

 

途中、湖に突き出た桟橋を発見。

ワンワンを連れたお散歩中のカップルが休憩している。

「ねえ、もう行こうよ~!。いつまでこんなとこでじっとしてるのさ~!」

そんなワンワンの心の声が聞こえてきた。

 

そして、辿り着いたビーチにはまだ厚い氷が残っていた。

「今、何月だと思ってんだよー」と思わず湖に突っ込みをいれる。


水際で遊んでた女の子と子犬。

氷におどろく子犬のしぐさが可愛すぎる♡

それにしても、タンペレの犬は幸せだなぁ。

こんなにいいお散歩コースがあって、おまけに夏は涼しいんだから。

 

このビーチの右手にもう一つのサウナ小屋と水浴場がある。

この日はティーンエイジャーとおぼしき若者たちでにぎわっている。

サウナ小屋の水浴場周辺は氷が溶けていた(やはり温水が送り込まれているのか?!)

覗き込むと、透明度はあるものの、水の色は茶色っぽい鉄錆色。

ミネラル分をたくさん含む水なのかもしれない。

 

ネシ湖の二つのサウナ場を巡るこの散策路は、森と湖の良さを

存分に楽しめるおすすめのコースだ。

途中休憩したり、景色をのんびり楽しんだりしても、うちから

歩いて二時間もあれば行って帰って来られるのも魅力。

新緑のころがまた楽しみである。


 


森と湖とサウナ

2019年04月27日 | 日記

ブログを読み返したら、なんだかんだと食にまつわる話がほとんどだということに気がついた。

いかん、いかん。

せっかく自然豊かなフィンランド、その中でもとりわけ「湖水地方」と呼ばれるタンペレに来たのに。

このままでは、スーパー巡りをしてはキッチンで料理して食べてるだけの

ただの食いしん坊だと誤解されてしまう・・・、という猛烈な危機感に襲われたところで、

今日は今までさすらった森と湖の写真を公開いたしましょう!

こう見えて、天気のいい日には森の散策にけっこう出かけてるんですよ。


タンペレはネシ湖とピュハ湖という高低差が18mある二つの湖に囲まれた街。

標高が高いほうのネシ湖は、こちらに来て2日目の4月12日に行った時には、まだ完全に凍結していた。

その頃はいわゆる寒の戻りで、最低気温がマイナスを下回るような日が2、3日続いていた。

それにしても、この見事な凍りっぷりには驚いた。


それにもまして驚いたのが、この湖の身を切るような冷水(想像の域を出ませんが)の中に

進んで入っていく人たちがいることだった。

下の写真、右のほうに見える薄黄色の建物が実はサウナ小屋。

観察していると、ゆでだこみたいに真っ赤っかになった人たちが、

わらわらと小屋から出てきては、梯子を伝って湖に入っていく。


小屋の左っかわの湖面が灰色っぽく見えるのは、氷が溶けているからなんです。

みなさんさすがに水着着用で、さすがに飛び込んでもいなかったが(飛び込み禁止の看板が出てます)、

老いも若きも当然のように湖に入っていく姿を見て、

ああ、フィンランドに来たんだなぁ~と実感。

しかし、なぜサウナ小屋の周りだけ氷が溶けておるのじゃ???

不審に思ってよくよく近づいて見てみると、湖の下のほうから何やらぽこぽこ湧き出しているものが。

温泉でも湧いてるのか?!と思ったが、察するところ、ポンプか何かで

人工的に温水を送り込んで、氷を溶かしているのだろうという結論に落ち着いた。


思わず引いてしまうようなこのサウナ愛💦

サウナというものに全く興味のない私には、とうてい理解できない境地である。

当地にいる間に、サウナに開眼する日がくるのかどうか・・・(一応水着は持ってきたけど)

 

湖へ至るまでの森にはモミの木のような針葉樹と白樺の木立が混在している。

愛らしい鳥たちの鳴き声に耳を澄まし、冷たく澄んだ森の空気を呼吸しながら歩いていると、

体中の細胞が生き返ってくるのを感じる。

新緑のころがまた楽しみだ。

 

一方、標高が低いほうのピュハ湖は、街中にある。

湖のほとりは背の高い木々が立ち並ぶ緑道になっていて、

人々はジョギングをしたり、犬の散歩をしたり、はたまたベンチでボーッとしたりと、

思い思いに水辺の時間を楽しんでいる。

 

湖のほとりには駐ボート場もあって、この時期、サマータイムで16:00ぐらいに

仕事を終えた人たちがマイボート(シンプルな木のボート)で湖に漕ぎ出し、

日が沈むまでのひと時を湖の上でのんびり過ごしたりしている。

いいなぁ~

 

森と湖とサウナ。

タンペレの(あるいはフィンランドの?)人たちの穏やかさは、

こうして自然の中に自分を解放する時間を豊かに有していることと

何か関係があるのかもしれない。

 

 


第三のスーパー

2019年04月23日 | 日記
みなさん、お待たせいたしました。
いよいよタンペレ第三のスーパーの回です。

その名は「LiDL」。
ん?
えっと、これって、どう発音するのかしら💦
リドル?
なんかちょっと違う気もするけど、だいたいそんなもんでしょ💦

タンペレ駅の西側の出口を出るとちょっとした広場があって
その広場をつっきったところに建っている。
うちからだと駅を経由しないルートで歩いて6、7分もあれば着いてしまう。
近い。

名前が「〇〇マート」になっていないことからもわかるように
ネットで見たところ「LiDL」はフィンランドのスーパーではなく、
ドイツのディスカウントスーパーチェーンのようだ。
道理で安いと思ったわ。

野菜や肉といった生鮮品、あとはハムやチーズ、ピザ、
それからコーヒーやチョコレートといった嗜好品も安い。
その分、商品の種類は少ないようで、調味料など
こまごまとしたものはあまり置いていない印象だ。
大量に安く仕入れたものをドドーンと売る、という手法だろうか。

なんとなく店の雰囲気が、日本で我々が週末にまとめ買いしていた、
OKストアに似てなくもない。最近は、
「今日はOK行く?」で話が通じるようになった。
「LiDL」って言いにくいしね。

突然ですが、ここでタンペレ滞在2週間で賞味した
「LiDL」の安くてうまいものベスト4を発表~♪
(日本円は1ユーロ=130円で計算)

鶏の腿肉味付け 3本 1.95ユーロ(250円)




いきなり中身の入ってない空パックの写真で申し訳ない。
下は調理後の写真。
こうして見るとクリスマスディナーっぽいな。

調味液でマリネされた大きな鶏腿肉が3本入っている。
買って帰ってオーブンで焼くだけの簡単調理。
しかも味は絶品!!
テレビの食レポではないが、皮はパリパリ、中はジューシーで、
肉がホロッと骨からはずれるやわらかさ。
いや、参りました。

日本だと味付け肉ってあまりこポピュラーではないが、
こちらではとっても種類が豊富で驚いた。
きっとみなさんこういうのをよく食べてるんですね。
決して売れ残った肉の再生法などではなく、
肉をいかにおいしく食べるかを追求している感じがして好ましい。

「LiDL」のマリネ肉シリーズのいいところは
「200℃ 60分」とか「225℃ 30分」とかいうように、
明確に調理温度と時間が表示されている点だ。
オーブン料理に慣れていない私のような者でも、
ちょっとやってみようかな、という気になる。
まんまとその手にのってやってみたら、手間いらずで、あら簡単。
ちなみにオーブンだけじゃなくてフライパンで焼くシリーズもある。

ジャガイモ2㎏ 0.99ユーロ(128円)


パッケージにある「SUOMALAINEN」はフィンランド産の意味。
数を数えたら26個入ってた。
これは文句なく安いでしょう。
しかも味がまた絶品!!
じゃがいもで絶品って大げさじゃない?って思ってるあなた。
いえいえ、それがそんなことはないんですよ。

メークイーンでも男爵でもなく、
色は黄色みががって、きめが細かく、濃密な味。
日本では食べたことのない味なんだな、これが。
何なんでしょ。栗に近いのかな?
とにかく、茹でて塩を振りかけただけで十分においしい。
ポテトサラダにしてもよし、肉料理の付け合わせにしてもよし。

冷凍ピザ2枚入り 2.65ユーロ (345円)


他のスーパーだと、他社製品だが1枚がこれぐらいの値段で売られている。
それでも十分安いと思っていたので、
初めてこのピザを見つけた時は何かの間違いかと思った。

見たところ、フィンランドの人はピザが好きらしい。
外食店のピザ屋比率が妙に高いし、
冷凍ピザの種類も豊富で、味のレベルも高い。

私のおすすめはこのモッツァレラ味。
惜しげもなくモッツァレラチーズがのっていて、トマトもフレッシュ。
この味、店で食べるのと同じじゃない?!と驚くこと請け合いだ。

大きさも二人でシェアして食べるのにちょうどよく、
日本では冷凍ピザなんてほとんど食べたことがなかったのに、
今や我が家の昼食にはかなの頻度でピザが出現する。
225℃のオーブンで15分焼けばOK。

パン4個 2.7ユーロ(350円)

スーパーに行くと、袋入りのパン売り場以外に、
ショーケースで売られているパンのコーナーがあるのだが、
「LiDL」のパンは一個が大きく、生地がしっかりしていて、風味が豊か。
シナモンロールももちろんだが、このクロワッサンのおいしさには驚いた。
裏で焼いてすぐ出しているので一味違うのかもしれない。
お昼を簡単に済ませたい時にも重宝するパンたちだ。

あっ、「LiDL」ではSマート、Kマートのように自分で量って
値段シールを貼る、という作業は必要ない。
野菜のところに秤は置いてあるが、あくまで重さと金額を確かめるためのもの。
実際に金額を決定するのは、レジ打ちの店員のさんの仕事だ。
見ていると、レジ台に量り売り対象商品をのせるや瞬時にセンサーが反応し、
金額が表示されるようになっているようだ。

以上、第三のスーパー「LiDL」についてでした。
店舗数は少ないみたいだが、Sマート、Kマートと合わせて利用すると
買い物の幅が広がってまた楽しい。



















スーパーの量り売り

2019年04月23日 | 日記
第三のスーパーについて書く前に、
買い物をする際に、SマートとKマートが日本のスーパーと
決定的に違う点について書いておかねば、と思い立った。

そう、こちらでは野菜や果物、一部のパンなどが
量り売りになっているんです。

この事実に気づいたのは、ヘルシンキに到着したその日,
夕食を終え宿に帰る途中、食後のデザートでも買おうと
帰る道すがら見つけたKマートに立ち寄った時のことだった。

ナイフがないからりんごの丸かじりでもするか~♪
くだもの売り場をうろつく私の目に留まったのがこの秤。



わーっ!なに!?
この全身ビンゴカードのお化けみたいな秤は~!?
写真が見づらくてすみません。
一番上の列左から順に1、2、3、4...と
下のほうの白ボタンも含め、全部で216もの数字ボタンが並んでいる。
くらくら・・・

辺りを見回すと、同じような秤が野菜、果物売り場にいくつか置かれている。
んー、これはひとまず観察するしかないな。
みなさんどんな風にして買ってるのかね。
じーっ(凝視)

間もなく、一人のおばさまが私の近くの秤のところにつかつかとやってきた。
そして秤の横に設置されているビニール袋を無造作に引きちぎり、
オレンジのところに行っていくつかぽいぽいっと袋の中に放りこみ、
また秤のところに戻ってくると、袋を秤にのせ、ピッと謎の数字ボタンを押した。
すると寸分もおかず右隅のスリットから数字が印字されたシールがピロッと出てきて、
おばさまはそのシールをチッと剝がすとオレンジの袋にピタッと貼って、
何事もなかったように立ち去って行ったのだった。
(擬音語が多くてすみません)
秤にのせてから立ち去るまで、3秒足らず。

いろんな秤に目をやるに、いずこもピッ、ピロッ、チッ、ピタッが
なんの遅滞もなく繰り返されているではないか。
うーむ・・・

私の疑問は一点に集約された。
それは最初のピッの部分、つまりなぜ人々は何の迷いもなく
商品を秤にのせるやいなやその数字ボタンを押せるのか、ということである。

ひゃ~、こわい~💦何、何、これ~💦
もう、見れば見るほど不思議。
何かのマジック?
そうでなきゃ、フィンランド人にだけわかる暗号かなんかがあるわけ~?

...むろんそんなものがあるわけはない。
その疑問は、りんごをあきらめ、ふらふら店内をうろついていた
私の目がパン売り場でショーケースに並んだシナモンロールを発見し、
あまりの食べたさに、なけなしの勇気を振り絞って
「この番号は何ですか???」と
近くにいた人に聞いたことであっけなく氷解した。

はたして、みなさんが押していたのは、商品の値札の
(たとえば野菜なら500g当たりの値段が書いてある)
右下の隅っこのほうに小さく印字されている数字だったのだ。
量り売りになっている商品には、
あらかじめ商品番号がふられている、というわけだ。

番号を確認してから品物を秤にのせているわけだから、
のせたとたんに番号が押せるのは当然のこと。
考えてみれば謎でも何でもない。
ただ、そんな番号があるとは思ってもみない我々には、
その右下隅の番号がまったく目に入らなかったというにすぎない。

この量り売り、自分が買いたい分だけ買えるから
ちょっと面倒なようだが無駄がなくて合理的。
野菜はや果物は、束になっていたりパックに入っていたりするもの以外は
このシステムで売られているようだ。
どちらか分かりにくいときは、その値札の右下隅っこ辺りを見ればいい。
そこに小さく番号が記されていれば、それは量り売り商品ということだ。

してみると、あの全身ナンバー秤、一見ダサダサに見えて、
中身は超ハイテクなのではないだろうか。
(こんなのハイテクッって言うの?という声も聞こえてきますが...)
だって、200を超える商品の基準価格を覚え、
商品がのせられたら瞬時に重さを感知し、その商品の基準価格に基づいた
実際の商品の値段を確定、シールに印字して吐き出すわけだからね。
商品にしても一年中同じではないはずで、基準価格の設定を変えなければ
ならない必要も出てくるだろうに、その辺はどうしてるんでしょうね。
まあ、私が心配することではないが...

日本のスーパーに飽きたみなさん、
フィンランドのスーパーはなかなかスリリングです。





イースターのミサ

2019年04月21日 | 日記
前回の予告通りSマート、Kマートに続く第三のスーパーについて
書こうと思っていたのだが、急遽予定変更。

昨日、4月21日、日曜日はキリストの復活を祝うイースター。
アパートにほど近い、歩いて10分ほどのタンペレ大聖堂でも
朝10時からミサがあるというので行ってみることにした。

このことを教えてくれたのは、フィンランド出身のシスターにして
オルガニストでもある方で、今は日本の教会で働いている。
私が勤務している日本語学校に以前通っていた縁だ。
きっと我々のようなものが参列しても問題ないということなのだろう。
彼女は言った。
「ミサでは音楽が奏でられます。ぜひ聴いてみてくださ~い♪」

というわけで、今回はその時の様子をレポート~!

9時45分、教会の前庭に到着。
空は気持ちよく晴れ、時折小鳥のさえずりが聞こえてくる。
カラーン、カラーン、カラーン・・・
間もなくミサが始まりますよ~♪の鐘が鳴り響く。



重い扉を開けて教会の中に足を踏み入れる。
正面奥に祭壇がしつらえられ、その後ろに掛けられた壁いっぱいの
大きな祭壇画がまず目に飛びこんでくる。
祭壇画の上のこれまた大きな丸窓には、ローズピンクとクリスタルのガラスで
大胆に十字架をかたどったステンドグラスが嵌め込まれ、
そこから薄暗い室内にやわらかい光が差し込んでいる。



ちょっと遠慮して後方左隅に着席。
複雑なアーチ構造になっている天井には、魚の鱗のような、
鳥の羽のような、不思議な模様が描かれている。
何度目かに天井を見た時、それが左右に広げられた天使の羽根に見えた。

私たちが来た時はまだ空きが多かった席も、ミサが始まる10時には
手に手に聖書を持った人たちで8割がた埋まっていた。

驚いたのは、ミサがまさに音楽とともに進められていくことだった。
それは「奏でられる」以上のものであり、
音楽なくしてはミサは一歩たりとも先に進まないのであった。

荘厳なパイプオルガンの音色がミサの始まりを告げ、神父さんのお説教が始まる。
お説教が終わるやいなや、今度はその一説を復唱するようににコーラスが入り、
それを受けて再び神父さんのお説教が入り、
それに応えるように今度は弦楽の演奏でソロのアリアが入り・・・、
というように、ミサはそれぞれの役割を担った人たちの阿吽の呼吸によって
一点の破綻もなく滑らかに進行していく。
それは入念に準備された一幕の音楽劇のごときであった。

むろん我々もその音楽劇の参加者であってみれば、
観客としてただそこに座って劇を見ているわけにはいかない。
コーラスの場面では立って一緒に唱和するように求められたりするから
うかうかしていられない💦

そんな時、参列した人たちは律義に立ち上がりはするものの、
意気揚々と大声で歌うわけでもなく、
信仰心を吐露するかのように晴れやかな歌声を響かせるわけでもなく、
ただ神妙な面持ちでうつむきがちに、もごもごと口を動かすばかりなのだ。
なんだか日本人に似てるなぁ...
彼らのはにかみを含んだ消極的姿勢は、
むしろ私にフィンランド人に対する親近感を抱かせた。

かつて合唱団に10年ほど在籍していた私は、これまで楽曲としてのミサ曲なら
それこそ何曲も歌ってきたが、それがミサという実際の宗教儀式の中で
どのように歌われ、どのような機能を果たしているのかについては、
恥ずかしながら想像するよりほかなかった。
それが今回、期せずして体感できたことは大きな収穫であった。
ミサにおけるコーラス、それは悩み、救いを求める、愚かな人間の声に他ならなかった。

ここで終わればかっこよかったのだが、これには少し続きがある。

ミサも終わりに差し掛かったころ、信徒さんと思しき4人が
物干しざおのような長い棒の先に、サンタさんからのプレゼントを入れる
靴下のようなものをぶら下げた道具を携え、それぞれの列に散らばって、
前から順に参列者の前に差し出している。
人々はカバンからおもむろに財布を取り出すと、
その中にお寺さんでいうところのお布施を入れていく。
参列者の義務なのだろう、誰一人、入れない者はいない。
チャリン、チャリン、とあちこちから音が聞こえてくるから、
みんなが入れているのは1ユーロか2ユーロ硬貨であると思われた。
慎み深い人たちは、周りから手元が見えないように上手にお金を入れる。

我々は思わず顔を見合わせた。
こちらへ来てからほぼ100パーセントカードで支払いをしていたから、
現金の持ち合わせがないのだ。
いや、正確には紙幣はあったが、それを崩す機会がほとんどないから、
硬貨の手持ちがないのだ。
財布の硬貨入れを確かめると、なぜか50セント硬貨が1枚。
靴下はもう、我々の前の前の列まで迫っている。

差し出された夫の手に50セント硬貨を渡し、
私は紙幣の中で一番小さい5ユーロ紙幣財布からを引き抜くと
素早く四つに折りたたんだ。
「もったいない」と思ったことを、正直に告白する。
アーメン

善良そうな笑みを湛えたあごひげのおじいちゃんだった。
夫がまずチャリンと入れた。
続いて私も。
チャリンと音がしなかった。
一瞬、怪訝な表情がおじいちゃんの顔に浮かんだような気がした。

慎み深い私も手元がわからないように入れたから、
おじいちゃんには私が何を入れたかわからなかっただろう。
あの見慣れない東洋人の女は、金を入れなかったな、と思っただろうか。
それとも、回収したお布施の中に5ユーロ紙幣を発見して、
ああ、あの時音がしなかったのはそういうことだったのか、
と納得してくれただろうか。

意外に小心者の私は思う。
どうか後者であってくれますように。
アーメン

みんさん、ミサに参列する時は、ぜにとも小銭のご用意を。