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moi! タンペレ

フィンランドのタンペレに半年滞在することに。その滞在記です。

暑いヘルシンキ、カモメの都?

2019年06月14日 | 日記

moi~!

前回、ちょっとお伝えした通り、6月5日から太極拳の友人、玉川さんことたまちゃんが、

日本の懐かしい味をあれこれ携えて、フィンランドに遊びに来てくれました。パチパチパチ

せっかくフィンランドに来てタンペレだけというのも何なので、ヘルシンキにアパートホテルを借りて3泊、

その後タンペレに2泊するということに相成った。


5日の14時前、たまちゃんを乗せた飛行機が無事ヘルシンキ空港に到着。

そのままVRでヘルシンキ中央駅に移動し、チェックインまで駅の近くのオープンカフェでお茶をすることに。

 それにしても、2ヶ月ぶりに見たヘルシンキは、全く印象が違っていた。

4月に来たときは小雪のちらつく極寒の日で、人影も少なく、灰色に垂れこめた空が陰鬱な印象を与えた。

はぁ~、なんだか北の果てに来ちまったもんだなぁ...と、やさぐれた心を抱えて宿に向かったものだ。

しかしこの日は、夏の太陽がじりじり照りつけ、どこから湧いて来たかと思われるほどのたくさんの人たちが、

いかにも楽し気な様子で街を行き交い、さすが一国の首都と思わせるような華やかな雰囲気に満ちていた。


アイスカフェオレを飲みながらたまちゃんが言う。「こっちにはアイスコーヒーってもんがないのね?!」

コーヒーそのものを味わってみたかったたまちゃんは、驚きを隠せない様子 ( このアイスカフェオレは自体はとてもおいしかった ) 。

うむ。たしかに、そうなのだ。アイスカフェオレはあるのにアイスコーヒーはない。

アイスカフェオレの作り方はというと、抽出したエスプレッソに牛乳を入れてさらに氷を入れるわけだからして、

牛乳の代わりに冷水を入れればいいのよ!と思うのだが、なぜかそれはしないのだ。不思議だ。

ちなみに私はアメリカンコーヒーを頼んでみたのだが、店のおにいさんは抽出したエスプレッソにポットのお湯を注いでいた。

だから、そのお湯を冷水にすればいいのよ!と思うのだが、なぜかそれはしないのだ。不思議だ。

まあ、いいや。フィンランドだけじゃなくて、ヨーロッパはいずこも冷たいコーヒーは邪道のようだ。

 

このカフェで、わたしたちは恐ろしいものを目撃した。

カモメたちのご乱行である。

私たちのテーブルの前方のテーブルには、客が食べ残していった皿がそのままになっていて、どうやらそこにサンドイッチの切れ端が

残っていたみたいなのだ。それを目ざとく見つけたカモメがどこからともなく舞い降りてきて、やにわにそれを啄み始めた。

げげっ、でかいぞカモメ! と思う間もなく、二羽、三羽と次々に舞い降りてきて、押し合い圧し合いサンドイッチを啄みはじめ、

テーブルに乗りきれないカモメが「はやくどけよ! 俺にも食わせろ!」的なホバリングをしながら順番待ちをするという

なんともホラーな光景がしばし展開されたのであった。隣の席の人が「シーッ!、シーッ!」と野良犬を追っ払うみたいにして

カモメたちを追っ払うまでカモメたちのご乱行は続いたのだが、フィンランドに来て以来漠然と思っていた

「カモメとは白いなりをしたカラスである」という自説を裏付ける重要な証拠を目撃した私は、わが意を得たりと大きく頷いたのであった。


そんなこんなで16時過ぎにチェックイン。

今回の宿は、「セカンドハウス」が運営する物件の一つで、建物は20世紀初頭に建てられたのか!?

と思われるような古さだったが ( エレベーターがピューニッキみたいに手で開け閉めするタイプ ) 、

中はリフォームされていて使い勝手よくできていた。

ヘルシンキはホテル代やレストランが高いので、自炊もできるアパートホテルは何かと便利。

ちなみに、部屋はリビング ( ベッドあり ) とキッチン、ベッドルームという間取りで、お風呂はバスタブはなくシャワーブースのみである。


  

 

  

 

一息ついて、近くのカンピセンター内のKマートに食材の買い出しに行く。歩いて10分足らず。

帰りにLidlにも寄って、鶏の骨付きもも肉を購入。この日はオーブンを使って、いつもの鶏もも料理でかんぱ~い♪

積る話に花を咲かせ、なかなか沈まない太陽を愛でながら、そして鳴きやまぬカモメたちの嬌声を聞きながら、

楽しいひと時を過ごしたのであった。

この日は日中かなりの暑さだったが、夜は窓を開けていると気持ちのいい風が通り、快適に過ごすことができた。

日中いくら暑くても、朝夕は気温が下がるというのがありがたい。


翌日はヘルシンキ探訪の日。朝から太陽全開!

午前中はオールドマーケット→マーケット広場、ウスペンスキ寺院、ヘルシンキ大聖堂、デザイン博物館などを回る。

  

   マーケット広場

   

露店を端から端まで歩いたら、汗をかいた。朝から暑いよ~💦  


   ウスペンスキ寺院

     

中はこんな感じです。

ロシア正教の教会って、どこも彫像がないように思うのだが気のせいだろうか。

ここも絵画のみで、ゴールドがふんだんに使われている。

天井がなんともメルヘンチックで不思議。

     

 

  ヘルシンキ大聖堂と元老院広場

  

やっぱり天気がいいと、建物の白が映える。4月に見た時とは大違いだ。

教会正面に立ちはだかる心臓破りの階段を気合で登り終え、中に入るとパイプオルガンの演奏が...

と思ったら、正式の演奏ではなくミサのための練習をしているようだった。礼拝用の長椅子に腰かけ、耳を澄ます。

涼しい教会の中で珍しいオルガンの練習を聞きながらしばし心を遊ばせる時間は、なかなか得難いものであった。

教会って入るだけなら無料なので ( 特別な塔などに登るのは別 ) 、良い休憩場所になるとひそかに思っている。アーメン。


デザイン博物館は、うーん...これは評価が難しい。

なんとなくテキスタイルデザインのイメージを持って入ったのだが、もうちょっとデザインの意味するところが広くて、

食器からバイクまで、より幅広くフィンランドの工業デザインの成功例みたいな製品を展示するところだった。

1階部分が常設展示のようだが、スペースの関係からか展示品の数が少な目で、もう少しボリュームがあれば、と悔やまれる。

 

2階部分は企画展になっているようで、その時は芸術家である何とかさんと何とかさん(たぶんご夫婦?)の私的な作品や

各国で収集したコレクション ( 主に日本のこけし関係 ) の展示になっていたのだが、

彼らのこけしからのインスパイアのされ方が尋常じゃなく(笑)、その「こけし愛」とでも言うべきものには心を打たれた。

人が何かから決定的な影響を受け、それを自分なりに消化して新しいものを生み出す過程ってこういうものなのか、と興味深かったし、

芸術に限らず何ものかに学ぶ、というのはこういうことなんだろうな、と思わされた。


と、書いていて思ったのだが、この博物館の根本的な問題は展示品の数ではなくて、解説のなさなんじゃないだろうか。

どちらかというと物が漫然と並べられている印象で、そこに博物館としてのコンセプトが感じられないのだ。

思い返してみると、常設展ではそこに展示されている品々が、デザインが、どういう発想や思想の下に生み出されたのか、

それがその時代にとってどういうインパクトを持っていたのか、というようなことを解説するパネルがほとんどなく、

そもそもこの博物館の成り立ちについての解説も、企画展の意図 ( 常設展との関係 ) についての解説もなかったような気がする。

この博物館で何を見せたいのか、という方針をまずは明確にし、それにのとった展示品の編集、陳列を行い、

さらにそのことが見に来た人にはっきりわかるように解説  ( パネルでも音声ガイドでもよし ) を充実させる、

という一連の作業が必要だと思われる ( 私だったら常設展の方を広々と開放的な2階にもってくるけどな )。

博物館におかれましては、それら一連の作業を可能ならしめる、フィンランドデザインに対する愛と情熱と

そして編集能力をもった統括ディレクターあるいは学芸員の配置を、早急にお願いする次第です。


お小言はこれくらいにして...

この後はお腹がすいた!ということで、エスプラナーディ公園のほうにぶらぶら歩いていき、

フィンランドの老舗チョコレートメーカー、ファッツェルが経営する「カール・ファッツェル・カフェ」でお昼代わりにケーキを食べた💓


下の写真は公園入口の所にあるバルトの乙女の像。

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したフィンランドの彫刻家、ヴィッレ・ヴァルグレンの作で、

当時は女性の裸体像が大変珍しく、評判になったのだとか。

私的には、四方から口を開けて懸命に水を吐いてるアザラシちゃんに目が行ってしまう💕

  


公園中ほどにあるJ.Lルーネベリの像。

フィンランドを代表する詩人で、フィンランド国歌の作詞者でもあるという。

  

頭上に止まってるのはカモメです。

ルーネベリさんのお顔についている幾本もの白い筋は...?! 

あら、あんたたち、偉い詩人さんの頭でなんてことすんの!

  


気を取り直して、カフェでケーキ。

わたしはベリータルトとカフェオレ。定番のザッハトルテも捨てがたかったが、暑い日には白い系のものが食べたい。

ヘルシンキのカフェでは、カフェオレはこの瓶ジョッキで供されるものらしい。前日のもそうだった。

  


こちらはたまちゃんのメレンゲバナナケーキと「ゲイシャ」というドリンク。

店員さんのおすすめなので、チャレンジャーたまちゃんが頼んでみたところ、こんなのが来た!

カフェオレにヘーゼルナッツチョコレートのフレークが入っていて、その上にはたっぷりの生クリーム。

  

「でもさ、何でこれがゲイシャなわけ? ピンクだからゲイシャっていうの?そんな短絡的なのやめてほしいわ!」

と、ネーミングセンスの悪さについて二人でひとしきり憤慨。

でも、味は見た目ほど甘くなく、チョコレートフレークが美味とのこと。


ファッツェル・カフェを後にし、ここからは、フィンレイソン、マリメッコ、イッタラ、アラビアなどのショップ巡り。

さすが、ヘルシンキだけのことはある。品揃えが豊富で、買わずとも目の保養になる。楽しいな~💕

私はかねてより欲しかった鍋つかみ ( オーブンから取り出す時困ってたんです ) を、

わがタンペレ発祥のテキスタイルメーカーであるフィンレイソンで購入。ムーミンママの鍋つかみよ~♪

フィンレイソンには他にもシーツやブランケット、ソファカバーやタオルなど、ムーミン関連商品が色々置いてある。


たまちゃんはというと、自宅の壁に掛ける布地をマリメッコで物色。

若いおねえさん店員が甲斐甲斐しく台に布地を広げたり、あれこれアドバイスしてくれたりと、実によくやってくれる。

ついに最後の三点に絞られ、さんざん悩んだあげく決定~!

シンキングタイムが終わったころに再びおねえさんがやって来て尋ねる。

「それで、どうしますか? 何か気に入ったのがありました?」

「うん、私はもう決めたよ~。」

「そうですか? どれ?」

「どれだと思う?」

もう、たまちゃんたら、おねえさん忙しいんだから遊んでないの! 困ってるじゃないの...

それでもおねえさん、ちゃんと付き合ってくれる。エライ、店員の鑑だ。

「うーん、...これですか?」

「ちが~う、これでした~💓」

なんか、たのしそうね、あなたたち。


この布地、マリメッコの会員になると20%offになるというので、たまちゃんはその場で会員登録。

年会費無料で、世界各国のマリメッコの店とインターネットショッピングで使えるとのこと。

レジで名前を告げればよいらしく、嵩張る会員カードなるものもなし。

そんなわけで、お気に入りの布地を購入し、お店を後にしたのであった。満足、満足。


この後はこの日三つ目の教会、「石の教会」として知られるテンペリアウキオ教会へ向かう。

16時近いというのに日はまだ高く、じりじりとわが柔肌 (?) を焼くも、負けてはおれぬ。

明日はタリンへの日帰り旅行ゆえ、行きたいところは今日行っておかねば~!

街の中心部から北西方向に向かってちょっと離れたところにあるこの教会、途中、ああでもない、こうでもないと

軽く迷ったりしながらようやく辿り着く。いや、しかしこれは苦労して来た甲斐があった。


 1969年創立のこの教会、なんと氷河時代の岩をくり抜いて造られたそうだ。地下になっている教会内部に入ると

岩肌がむき出しになっている壁に囲まれた空間が広がり、そこにパイプオルガンや祭壇が自然な形で溶け込んでいる。

ガラス越しに入ってくる自然光もやわらかで、どこからともなく音楽がしめやかに流れ、ずっと座っていたくなる居心地のよさ。

音響効果が高く、コンサートホールとしても人気があるということだが、これなら演奏するほうも聴くほうもさぞ気持ちよかろうと思われた。

 

      

 

教会を後にし、フレドリキン通りを南下、前日と同様、カンピセンターのKマートで夕飯の買い物をして帰ることに。

カンピセンターを目前にして、こんなでかいカモメに遭遇する。

何かのミュージアムらしいのだが、このセンス、どう思います!? 

   

 

顔のたるみじわが妙にリアルだし、目がこわいよ~💦

カモメって、ヘルシンキの鳥かなんかなの?とたまちゃんと言い合いながら、足早に前を通り過ぎる。

ヘルシンキの鳥かどうかはわからなかったが、ヘルシンキにいるとカモメの存在が濃い気がするわ~。 


この日の夕食は、肉厚サーモンのソテーとたまちゃんご推薦のドイツはリースリングの白ワイン。うまい!!

YouTubeでアルフィー・ボーの素晴らしい歌声を聞きながら、ゴージャスな夕餉のひと時を過ごしたのであった。






 



ラトビア・リーガの旅~インスタレーション~

2019年06月12日 | 日記

moi~!

みなさま、お久しぶりです。

6月5日~10日まで太極拳の友人が日本から訪ねてきて、ヘルシンキ~タリン~タンペレと、遊びほうけておりました(^^♪

その時の様子はまた次回以降、じっくりお伝えしたいと思います。


今回は、間が空いてしまいましたが、リーガの旅の最終章、間違って入ってしまった美術館の話をお送りします。

その日行きたかったのは、美術館の内装も見どころのひとつと言われている証券取引所美術館だったのだが、

間違ってその向かいの「DIGITAL ART HOUSE」という所に入ってしまったらしい。

入り口のところに「ゴッホからカンディンスキーまで」と銘打たれたゴッホの絵のポスターが貼ってあるので、

てっきりこれだと思ったんだけど💦 この美術館、普通に絵を見せるところではなく、

絵画と音楽を使ったマルチメディアインスタレーションの展示を行っている美術館だった。

まだ新しいのか、手持ちのガイドブックにも載っていない。


インスタレーションって最近のはやりなのかもしれないが、わたしは今回が初めてで、これがなかなか刺激的で面白かった。

時間にして約1時間、16人の画家たちの5000点にものぼる作品を再構成し、それを音楽にのせて

正面と左右の壁面、そして床一面に映し出す。観客はソファーにそっくり返ってそれを鑑賞するという趣向だ。

一人の画家の展示に割り当てられている時間は約3分半ほど。それぞれの展示では、画家のモチーフやテーマ、

作風の変遷といったものが浮かび上がるような構成になっていたり、作品の切断やつぎはぎによって制作者の作品解釈が示されたり、

はたまた見る側の無意識の願望を投影して絵の様々なパーツが動いてみたりと、これまでにない角度や視点からの絵画鑑賞を促してくれる。

この時私が見たのはこんな感じのものです。実際はどんどん動いてるんだけど、しょうがないから静止画像で。


   フアン・グリス

   

 

   クリムト

   


   ゴッホ

   


   モネ

   


こんな風に作品を切り貼りされちゃって、オリジナルの画家たちはどんな気持ちなんだろうとも思うが、

技術の進歩が不可逆的なものであることを考えれば、こうしたデジタル技術を駆使した展示は、今後さらに洗練されつつ増えていくことだろう。

要は、制作者の側にオリジナルに対する敬意と理解がどれだけあるか、ということなのかもしれない。

ちなみに、美術館はリーガ大聖堂の隣にある三階建ての建物です。↓    

   


インスタレーションといえば、別の日に行ったリーガのゲットー博物館にも、単に歴史的事実を伝えるための展示だけでなく、

その空間とセットで展示内容を体験するような設えが随所にあって、印象に残った。

たとえば、ゲットーに収容された人の名前を一人一人記したパネル。これが入り口から延々と続く。   

   

来場者は入り口から続くアプローチを辿りながら、その人数の圧倒的な多さを実感する。

文字で示された収容人数からは感じとれない痛ましさのようなものが、胸に迫る。


こちらは、強制収容所を表現したインスタレーション。

   

地面に埋め込まれているのは名前が記された墓石。 

ポーランドのビルケナウで見た、前は馬小屋として使われていた強制収容所を思い出した。

 

そしてこちらは、収容された人の生没年の入った写真や家族に宛てた手紙などが貼られた灯篭。

これが点々と天井から吊るされている。

   

当然のことながら、収容された人たちには「数」に回収されない一人一人の人生があった。

来場者は暗闇の中をひとつひとつの灯篭を辿りながら歩くことで、その短かった一生と向き合うことになる。


こうして改めて見てみると、この博物館が悲劇的な歴史を伝える場であるばかりでなく、

犠牲になった人たちの鎮魂の場でもあるのだなぁ、という思いを強くする

そうした場の形成に、インスタレーションという芸術の手法が関わっていることが興味深い。

ポーランド旅行から始まった博物館巡り。今後はさらに展示手法にも注目していきたいと思う。



ラトビア・リーガの旅~ユーゲントシュティール建築群~

2019年06月01日 | 日記

今日は朝から変わりやすいお天気。晴れたり曇ったり、急に雨が降り出したり。

最高気温も15℃いくかいかないかで、ひんやりしている。

来週後半は一気に気温が上がる予報なのだが、それもどうかなぁ ( これが、なかなか当たらない天気予報なのです )。

どちらにしても、しばらくは不安定な天気が続きそうだ。

 

さてリーガの旅、今回はリーガで見たユーゲントシュティール様式の建築群をご紹介。

あっ、どうやら「リガ」はドイツ語読みで「リーガ」と伸ばすのがラトビア語の発音らしいので、

今回よりリーガと改めさせていただきます( 時間があったら、前のも改めときます )。


モノの本によると、ユーゲントシュティール  ( ドイツ語 ) は19世紀後半から20世紀初頭にかけて

全ヨーロッパに広がった新興芸術運動で、フランス語でいうところのアールヌーボーであるらしい。

折しもリーガの大建築ブームと重なり、1900年からのわずか十数年間の間に膨大な数のユーゲントシュティール建築が生み出され、

現在も市内中心部の建物の実に4割がこの様式で占められているという。

ちなみになぜ大建築ブームになったかというと、当時リーガはロシア帝国の中心都市として発展を遂げ、住宅の需要が一気に増えたからだとか。


ユーゲントシュティールの特徴は、建物の機能性や構造を重視すると同時に過度の装飾性を追求する点にあるようだ。

この「過度の装飾性」という言葉には、建築家の唯一無二の芸術性というものが含意されているらしい。

その装飾の際に好まれたのが、ユーゲントシュティール全般に共通する曲線や動植物、女性のモチーフであったという。

つまり機能性(実用性)と芸術性という一見相反するように見える命題を、ふたつながらに実現しようとする様式だということか。

 

実際はどうなんだろう? ということで、この日はリーガで最も有名なユーゲントシュティールの建築家、

ミハイル・エイゼンシュテイン ( 映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインのお父さん ) の代表的な建築群を見に行った。

目指すは新市街のアルベルタ通り界隈だ。

 

最初に見つけたのはこんな建物。

ファサードには女性の像や馬、人の顔などの浮彫りの他、一見、実用性には関係ないと思われるような

( ほんとうはあるのかも ) 細かい装飾が施されている。水色のラインが意外に美しい。

  


次はこちら。

裸体の女性像と独特の表情を見せる人の顔がひと際目を引く。

  


驚いているような悲しんでいるような...

この帽子は何をしてる人がかぶってるものなんだろう?

  

 

はっ、もっと強烈なのを発見。

スフィンクスは体がライオンじゃなくて人間のままだ。しかし足はライオン。

  


激しい怒りの表情か、はたまた戦の前の雄叫びか?

  

 

 もはや人面コレクターと化したわたし。建物よりも人の顔ばかりが気になってきた。

こちらは端正なマスク。

  

 

髪の毛が蛇? 真ん中がメデューサで、両サイドは石に変えられてしまった人かもしれない。

  


人面ばかりじゃなくて、ドラゴンもいる。これはたぶんエイゼンシュテインじゃないんじゃないかな?

不覚にも、今は亡き愛犬モモ(ビーグル犬)を思い出す(涙)。

鼻づらの長いところが何となく似てるんです...

  

   

二階部分、古代ギリシアの彫刻を思わせる彫像が印象的。

わたしには準備運動をしている人に見えた。

  

 

最上部にふたつの巨大な人間の横顔。2メートルほどあるという。

やはりこのセンスは只者ではない。

  

 

いかがでしたか?

奇妙な人面や人体が目立つ建築群であったなぁと思うのだが、私見によればこうした奇妙な人面、人体の多さは、

ユーゲントシュティールに普遍的な特徴というよりもむしろエイゼンシュテインという一建築家の個性なのだと思われる。

奇妙な、ということはつまり、見る人に心地よさを与えるものではなく、逆に見る人の心をざわつかせ、

時に苛立たせるようなものになっているということだ。芸術でいうところの異化作用が強烈なのだ。

おそらくそこには、ギリシアやエジプトの神話からとってきた様々なモチーフを組み合わせつつ、

彼なりの社会や時代状況に対するメッセージが込められているようにも思えるのだが、残念ながら私にはそれを読み解く力がない。

ともあれ、エイゼンシュテインが自らの芸術の唯一無二性を貪欲に追求し、その際立った個性で

ユーゲントシュティール建築の第一人者として、歴史にその名を留めることに成功したことは間違いないだろう。


ちなみに、これらの建物の多くは、アパートなどとして現在も使用されているようだった。

部屋の窓から「また観光客か...」みたいなうんざり顔でこちらを見ている住人の方も...

このあとの旧市街の街歩きの際にも、ちょっと気をつけて見てみると、女性の顔や植物、動物のモチーフで

ファサードや入り口部分を装飾している建物がかなりあることに気がついた。

リーガという街が纏うどことなくアートな雰囲気も、そんなところに由来しているのかもしれない。



ラトビア・リーガの旅~美しき教会群~

2019年05月31日 | 日記

moi~!

タンペレは朝からいい天気。

空が高くてカラッとしてて、なんだか秋晴れみたいだ。

 

ラトビアのリーガ、今回は教会をご紹介します。

まずはこちら、聖ペテロ教会から。

13世紀の初めに最初の教会が建てられ、その後何度かの改築を経て、18世紀にほぼ現在の姿になったという。

9€の入場料を払えば、塔に登ってリーガの街を一望することができる。

 

  聖ペテロ教会                       

      


中はこんな感じ。

ステンドグラスのないシンプルな窓からやわらかな外光が差し込み、静謐な美しさがあった。

  


写真は塔からの眺め。中央やや左に写っているのが、リーガ大聖堂。

   

 

続いて、聖ヨハネ教会。

こちらも13世紀に創立され、その後16世紀に再建されたらしい。

破風板のカッティングが個性的でなんだかメルヘンチック。

  聖ヨハネ教会(右奥)

  


中はこんな感じ。天井の模様がユニークだ。

破風といい、天井といい、建てた人の独特のセンスが光る教会だ。

  

 入り口で作業をしていた案内の方によると、木曜日にスウェーデンの合唱団のコンサートがあるという。

でも出発は水曜日。残念... 合唱、聞きたかったなぁ。

 

そして最後は、リーガのシンボルともいうべきリガ大聖堂。

1211年にドイツのブレーメンからやって来た僧正アルベルトが建設を始め、その後増改築を重ねて18世紀後半に現在の姿になったという。

今ではカフェが立ち並び、観光客でにぎわう教会前の広場は、1991年の独立運動のさなか、ソ連の介入を阻止するために

街の人たちによってバリケードが築かれた場所でもある。その際、ソ連部隊からの銃撃を受け、7人の方が亡くなった。

当時の状況については、大聖堂近くにある1991年のバリケード博物館に詳しい。


  

 

   

 

教会創立の来歴を物語るステンドグラス。右の赤い衣装をまとった人物がアルベルト。

僧正とはいえ、1201年にドイツからこの地に渡ってきて要塞を築き、リヴォニア騎士団を組織し、

リガという街そのものを建設していったことを考えると、純粋な宗教家というわけではなかったのだろう。

  

 

大聖堂南側には、中庭を囲むように古い回廊がある。かつては修道院があったという。

  

 

 そして、リーガ大聖堂と言えば有名なのがパイプオルガン。

世界で4番目という大きさもさることながら、フレームに施された精巧な装飾が見事である。

日曜を除く毎日正午から、オルガンのミニコンサートが行われているらしいのだが、訪れたのは日曜日。

しかしその日は、夜7時からパイプオルガン、バイオリン、ソプラノ歌手によるコンサートがあるというので、聞きに行くことにする。

チケットは15€、20€、30€の三種類。迷わず15€のチケットを購入し、夜出直すことに。


  

 

コンサートの始まる15分ほど前に到着。案内された席はというと、正面の祭壇からはずいぶん離れており、

しかも柱がちょっぴり邪魔して見えにくい。まあね、一番安い席だから、しかたないか...

ややテンション下がり目なのは否めない。

早めに着いた人たちはパイプオルガンの写真を撮ったり、会場の雰囲気をビデオに収めたりと、コンサート前の時間を思い思いに過ごしている。

そうこうしている間も、教会に足を踏み入れた人たちが係員によって次々と後方の座席へ流し込まれていく。

祭壇により近いエリアや、通路近くの見通しのよいエリアは空席のまま、私の周りの15€エリアと思われる一角だけがたちまち満席に近い状態に。

なんだかその辺一体に、15€によって醸成された連帯感が漂う。

と、私のさらに左奥、柱のせいでほとんど祭壇のほうは見えないんじゃないの?と思われる席を宛がわれたおばちゃんが、突如不満を口にする。

「まったく、あっちはあんなに空いてるじゃない! どうしてあそこに座らせてくれないんだかねぇ。」

ブルージーンズにバックパックの何となくやさぐれた感じのそのおばちゃんは、同意を求めるようにこちらを見る。

「それは、あそこがきっと20€だからですよ」と言いたかったが、グッとこらえ、「ほんとですねぇ」と苦笑いしながらやり過ごす


開始のベルが鳴る。しばしの静寂のあと、パイプオルガンの独奏が始まった。オルガンのある後方頭上から聞こえてきているはずの大音響は、

しかしたちまちのうちに教会全体を包み込み、音源がどこにあるのかわからなくなる。なんともいえない浮遊感。

オルガンのオープニングが終わると、間を置かずにバイオリンが、わずかに開けた窓から忍び込む風のように聞こえてきた。

細く、やわらかく、それでいて妙に艶やかなその音は、今まで聞いたバイオリンのどの音とも違っていた。

やがてそのバイオリンの音に、存在感のあるソプラノの声が静かに重なる。


あっ、歌も後ろからなんだ! 完全に不意を突かれた。オルガンとバイオリンといった楽器は後方からだと思っていたが、

歌は前のほうで歌うんだろうな、となんとなく思っていた。なかなか歌の人、登場しないのね...、と気を揉みながら。

これなら柱があろうが、前方が見えなかろうが関係ない。

「ちょっと、ちょっと、見て! 後ろ! あそこで歌ってるわよ!」

さっきのおばちゃんが驚きと喜びを隠しきれない表情で、後方頭上を指差しながら教えてくれる。

わかってますとも。よかったねー。神の前で人間は皆平等なのよ、と鷹揚に微笑んでみせるわたし。

 

それにしても、前ばかり気にしていたわたしの背面はまったくの無防備だった。そこに抒情的とも天上的ともいえる

バイオリンとソプラノの静かな調べが降り注いでくる。知らぬ間に涙が流れていた。これはいかん、と思うがどうしようもない。

慣れぬ異国暮らしの緊張が一気にほどけて...とか、これまでの罪がすべて洗い流されるかのように思えて...とか

そんな殊勝な話ではない。ただ教会中に立ち込めた細かく振動している音の靄に包まれ、体の細胞が勝手に反応しているみたいだ。

であるからして意志の力で涙を止めることは不可能であった。

わたしの知らない一曲目が終わると、潮が引くようにその魔法のような時間も終わった。


二曲目以降は、だんだん調子が上がってきたソプラノの独壇場となっていき、その声質のよさと声量を十分堪能したが、

わたしにとってはやはり、バイオリンと声と空間とが混然一体となって溶けあっていたあの一曲目が一番よかった。

いや~、これまでにない音楽体験だったわ。

そして教会の、音楽ホールとしてのポテンシャルの高さを思い知らされた日でもあった。







 

 

 

 

  


ラトビア・リーガの旅~楽しき中央市場~

2019年05月30日 | 日記

moi~!

みなさまお久しぶりです。

日本は各地で猛暑が続いているみたいですが、お元気でお過ごしでしょうか。

突然ですが、5月26日から3泊4日で、バルト三国の一つラトビアの首都リーガへ旅行に行ってまいりました。

よほど日ごろの行いが悪いのか、最後の日以外は連日小雨交じりの肌寒い天気でちょっと残念でしたが(泣)

リガは中世から続く美しい街並みとそこに暮らす人々の活気が身近に感じられる、さらにアートな魅力が満載の街でした。

ということで、旅行の報告を簡単にいたしましょう!


今回リーガまでのフライトで使ったのは、ラトビアのフラッグキャリアでありLCCでもあるという、一風変わったバルティックエアー。

ヘルシンキからリーガまではおよそ1時間、飛んでる時間は正味45分くらいで、あっという間に着いてしまう。

乗客数85人ほどの小さなプロペラ機なので、乗る前は少々不安だったのだが、着陸前の降下時がちょっと怖かったぐらいで、

乗り降りもスムーズだし(全員の搭乗が完了したので5分早く出発しちゃったり)、席も普通のエコノミー席の広さだしで全く問題なかった。


ただ無料手荷物には制限があるので、乗る前はけっこう気を使った。

サイトによると、機内持ち込み用の小型のスーツケースとハンドバック合わせて8㎏以内は無料となっているのだが、

制限を超えてしまうと60ユーロという高額な追加料金が取られるように書いてある。

体重計がないので8㎏の重さがわからず、10㎏の米の重さを我が身によみがえらせ、だいたいこんなもんかと荷物を詰め込んだのだが、

乗る前までは、重量オーバーだったらどうしよう...と何だか落ち着かない気分。

なにせ往復の航空運賃が1万円ちょっとなのに、荷物のせいで60ユーロ(7800円)払うなんてバカみたいじゃない?

しかし、実際には重量チェックなどはなかったのです!(まあ、そんなことだろうと思ったよ...)

とにかく小型のスーツケース&身の回り品バッグといういで立ちであればOK、という感じであった。

 

リーガでは、占領博物館、軍事博物館、リーガ・ゲットー博物館、1991年のバリケード博物館など、

ポーランドの時と同様、戦争関連、ユダヤ人関連の博物館を巡ったほか、リーガ大聖堂、聖ペテロ教会などの教会や

中央市場、ユーゲントシュティールの建築群、そして新手の美術館などを見て回った。


まず印象的だったのが、着いて早々に訪れた中央市場の賑わいだ。

かまぼこ型のドームが四つ並んだ巨大な市場には、肉、魚、野菜、果物、乳製品といった生鮮品がずらりと並び、

さらに買い物客や観光客目当ての多種多様なカフェやレストランがひしめいている。

場外では旬の果物や生花、それに服や靴、カバンなどの衣料品までありとあらゆるものが売られ、

日々の食材や日用品を買い求める街の人々や、わたしのように店を冷かして回る観光客でごったがえしている

中でも盛況だったのは、今が旬のイチゴやブルーベリー、サクランボを商ってる店だ。

一軒のみならず同じような店が延々と軒を連ね、価格設定も似たり寄ったり。

よくこれで商売が成り立つなぁと思うのだが、これでもやっていけるぐらい、買う客が多いということなのだろう。

私も1㎏2.5ユーロのイチゴを500gほど買い求めたが、大きくて甘くて新鮮! 値段は日本の1/3ぐらいの感覚だ。


  

 

   


場内はこんな感じ。

天井が高いのは、この施設が元々ドイツのツェッペリン飛行船の格納庫として設計されたからだとか。

  


海産物の種類も豊富。塩サバ(左手前)を発見し思わずてうれしくなる。

あれを焼いて白いご飯といっしょに食べたら、さぞおいしかろう...(じゅるじゅる)

      

 

この日は折しも日曜日。

場外市場横の広場では、ラトビアの民族ダンスの催しが行われ、市場に買い物に来た人たちが次々に足を止めていた。

民族衣装に身を包み、楽しそうにダンスに興じているのは皆、年配の方々。実にエネルギッシュである。

ラトビアは合唱が盛んなお国柄だということは知っていたが、踊り好きの人たちでもあるのだろう。


  


と、ダンスに見入ってる私の横にするすると寄って来る輩がいる。

うぬ、なに奴?! と見れば、一杯機嫌の一人のおじさん(いや、おじいさん?)。しきりにラトビア語でダンスの説明をしてくれる。

なにゆえ私がラトビア語を解すると思うのかね? どう見ても東洋人のお上りさんスタイルじゃないか?

と思いつつ、しょうがないから思い切り日本語で相槌を打つ。「へぇー、そうなんですか。ほほーっ。」

そんな私の対応にひるむことなく、向こうもラトビア語で話し続ける。

まったく、何なんだ、この会話。わかんないけど、何となくわかるような気がしてくるじゃないのよっ!

こうやって踊るんだ、と手を取って教えてくれる。どうだ、いいだろう。簡単だよ。ほらね。

そしてしきりに舞台を指さす。踊ろうといっているようだ。

いやいやいや、それはダメでしょ~💦 皆さん、衣装付けて本格的にやってるのに、飛び込みはないよ。

おじさんが「ニェー?」というので「ニェー!」と答える。「ニェー」は「No」のことなんだろう。

気がつくと、右のほうからもう一人のおじさんが、ニヤニヤしながらやってみなよ、的な目配せをしてくる。


何なんだ、あんたたちは💦 ひょ、ひょっとして、わたしがこう見えて盆踊ラーだということを見破っているのか!?

そう、田舎で夏場に行われる地区の盆踊り。何を隠そうこの私、盆踊りの曲が聞こえてくると踊らずにはいられない盆踊ラーなのであった。

運よくおじさんに携帯がかかってきたのを機に、『地球の歩き方』旅の会話術にあった「ありがとう~♪」「さようなら~♪」

をラトビア語で連呼し、その場を足早に立ち去ったのであった。

ふ~、あぶない、あぶない。 もう少しでほんとに踊りそうになってた自分がコワイ...


こうしてラテン系の楽しい市場を後にしたのであったが、たったひとつ心残りが。

やっぱり、花屋ですずらんのブーケを買って帰るんだったわ...

場外の花屋さんのいたるところで売られていた小さい小さいすずらんのブーケ。

子どもが野原で摘んできたような1.5ユーロの可憐なそのブーケは、しかし市場のあちこちで、とんでもなくいい香りを放っているのだった。

すずらんって、こんなにいい香りだったんだ~~💓 ひとたび嗅げば忘れられないあの香り。

ああ、それなのに、短い滞在のこと、チェックアウトした後すぐ捨てられるのもかわいそう、と結局買わなかった。

でもあのブーケが部屋にあったら、どんなにかホテル滞在が潤いのあるものになっただろうに。

いつかもっと年をとってラトビアの旅を思い出す時、あの買わなかったすずらんのブーケのことが、胸をかすめるんだろうな。