高断熱デザイン住宅お任せブログ

優れた環境性能と美しいデザインを併せ持つ家づくりに邁進する一設計者のつれづれ日記

60歳から家を建てる?

2014年07月19日 | 間違いだらけの家づくり




60歳から家を建てる?


最近は定年退職を迎えてから新居を計画される方が多い様に感じられます。
私の所に相談にいらっしゃる方の40%近くは
50代後半から60代に入った方なのです。

子供の結婚を機に二世帯住宅を、と考える方もいらっしゃいますが
郊外に移って晴耕雨読の生活をしたいと考える方、
利便性の高い都市部にマンションを持ち、
郊外に趣味の家を持ちたいと考える方など
どちらかと言えば、子育てから解放された夫婦が
思いっきり自分達の好きな事ができる家を建てたいと望んでいるのです。

そんな家なら設計するのも楽しかろう、と思われるかも知れません。
何十年も連れ添った夫婦なら、お互いの事をよく分かっているので
設計の打ち合わせもすんなり行くのではないか、
と思われるかも知れませんが、実はそうではないのです。

打ち合わせをはじめると、
ご夫婦の意見が全く噛み合ないことが良くあるのです。
実は、その時はじめてお互いの思惑の違いを知って愕然としてしまうのです。

設計者としては、事前に擦り合わせをしておいて欲しいと思うところなのですが、
ご本人同士がまさかお互いに意見が違うなどとは思ってもいないので
あわや夫婦喧嘩の渦中に投げ込まれることになりかねません。

実際に夫婦喧嘩の仲裁をしなければならない打ち合わせが多々あります。(笑)

では、どうしてこの様な事が起こるのでしょうか?

今、定年を迎えようとしているのは団塊の世代と呼ばれた、
日本の戦後復興、経済成長を担って来た世代です。
夫は家族の為に夜遅くまで必死で働き、
夫にとっての家は、殆ど寝る為の家でした。

妻は子育てを任され、家は正に子供を育てる為の「巣」でしたが、
子供に手がかからなくなれば、パートで食費を稼いだり
子供が経済的に自立し始めると、サークル活動などで
地域の人達との繋がりを深くしてゆきます。

しかし、夫は会社と自宅を往復するだけで地域との繋がりが希薄なので
これまで暮らしていた土地にはさほど執着心がありません。
夫は定年になったら好きな趣味を思う存分やりたいと思います。



都会を離れてのんびり暮らせる所に居を移そうと考え始めます。
親が残してくれた土地が田舎にあるので、田舎に新居を、と考える人もいます。
勿論、夫の思いの中には、これまで苦労をかけた妻を労おうという気持ちもあるのです。

しかし、多くの妻達はそんな夫の思いに二の足を踏んでしまうのです。
妻にとっては、これまで培って来た地域や人との繋がりを断って、
全く知らない土地で暮らすことなど不安でしかありません。

定年退職組の夫婦の思惑の違いは、大方この様なことがベースにあるのです。

しかし、この思いのズレは、良く話し合えば解決できない問題ではありません。
少なくとも60歳からの家づくりは、
家族の為の家ではなく、自分の為の家なのです。


実は、60歳からの家づくりには大きなメリットがあるのです。
例えば

1)もう転勤はないし、通勤・通学の便を考える必要がないので、場所が限定されない。

2)二人暮らしの小さな家で良いので、価格も安い。

3)都市部に持つ家を売って田舎に移れば、ローンを組まなくて済む。

4)老後を考えた(バリアフリー、平屋など)設計ができる。

5)60歳から80歳まで20年間住むと考えれば、メンテナンスやリフォームの心配がない。

6)高齢化社会になるので、老後を考えて設計された家の方が売り易い。

7)勿論、私共に頼んで頂ければ、生涯温度差の少ない暖かい環境で過ごす事ができる。


最後にちょっとコマーシャルが入ってしまいましたが、
60歳からの家は「暮らす」ための家ではなく、「楽しむ」ための家なのです。
ご夫婦の楽しみ方をよく話し合ってみて頂ければと思います。

勉強するほど理想の家から遠ざかる?

2014年07月05日 | 間違いだらけの家づくり




勉強するほど理想の家から遠ざかる?



私が断熱の本を出してから10年以上が経つのに
未だに、断熱マニアからの相談メールが入ります。

インターネット時代になると、古い本であっても簡単に検索でき、
欲しければ簡単に古書をネット上から購入できるため
大した売れなかった本が、今でも活かされていることになるのですね?

さて、断熱マニアは非常に良く勉強しています。
ネット時代の恐ろしさは、
下手をすると、プロである私達よりも知識が豊富で
新しい情報をよく知っている人達がいるということです。

しかし、勉強熱心なのはいいのですが、
これまで私が見て来たマニア達の末路は、
例外なく家づくりに失敗しています。

それは何故でしょうか?

まず、一番いい断熱材を使えば、
それでいい家ができると思ってしまうこと。

断熱、構造、材料総てに最高を求めて
結果的に全く予算に合わない家になってしまい
挙げ句の果て、間違った選択をしてしまうこと。

知識が豊富になると、プロの意見を聞かなくなること。

今まで私が接して来たマニアの方達が、
およそこの様な感じで、
いかに「勉強」があだになってしまっていることか。


建築は非常に多くの要素の組み合わせによって成り立っています。
これは言って見れば、極めて高度なゲームとも言えます。

このゲームのルールは、
敷地条件、施主の要望条件、そして予算です。

このゲームのゴールは「最良の家を実現すること」ですが、
一番苦しめられるのが「予算」という条件です。

この条件がなければ、楽しいゲームになるのかも知れませんが、
逆を言えば、ゲームとして成立しない、とも言えます。

即ち、マニアの方達のゲームはハナから成立していないのです。

このゲームを解く鍵は「バランス感覚」です。
設計の仕事というのは、言って見れば、
ルールに従って諸条件に合ったベストバランスを導き出すことなのです。

これは本を読んで勉強しても得られるものではありません。
相応の経験が必要となるのです。

ですから、私はマニアの方達に常々言っているのです。
「ご自身で技術的な勉強をするよりも、
信頼できる建築家を見つける目を養った方がいいですよ」と。


以前、設計をさせて頂いた2世帯住宅のおばあちゃんから
リフォームを頼まれた事があります。
要望事項を細かく伺ったのですが、
「あとは先生、信頼してますから好きにやって下さい。」
と言われて、身が引き締まった思い出があります。

ある著名なお医者さんの自邸を設計させて頂いたときも
同じ様な経験をしました。
要望条件は厳しかったのですが、
「あとはプロに任せる」とおっしゃるのです。

お客さんに信頼されていると感じると、
誰しも決してその信頼を裏切ってはいけない、
という想いに駆られるものではないでしょうか?

豚もおだてりゃ木に登るのです。

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