♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

Back to Mono CD 2

2005-10-22 | 1曲ずつ一言

Vorious Artists
Produced by Phil Spector
1963①~⑦、1964⑧~⑲

僕はこのボックスを、ロサンゼルスで買うという楽しいことをしました。

買った当時はさっぱり分からなかったんですが、よくよく見ると、フィルの録音に関わってる人たちの顔ぶれ、いわゆるレッキング・クルーって凄いですよねー


ジャック・ニッチェ(Jack Nitzsche)、ラリー・レヴィン(Larry Levine)、ハル・ブレイン、レオン・ラッセル(Leon Russell)、ラリー・ネクテル(Larry Knechtel)、グレン・キャンベル、アル・デロリー(Al Delory)、ソニー・ボノ(Sonny Bono)、ニノ・テンポ(Nino Tempo)、キャロル・ケイ(Carol Kaye)、スティーヴ・ダグラス、いやはや。

初めてフィル・スペクターを聴こうって方へおそらく“古いなー”って思うかと

僕的にオールディーズ的なポップスと、次世代のポップスの間にあるような、そんな音楽だと、思っております

何もないところから、様々な試みを行い、揺るがぬスタイルを築き上げた、フィル・スペクターの“音”への情熱・姿勢は、狂気とも思えるくらい。
今の世相では有り得ないですよね。まさに“録音”の開拓者

2枚目では、ブリティッシュ・ビート華やかなりし年代も勢いを衰えさせないスペクターの活躍っぷりが伺えます
ロネッツという逸材も得て、絶好調

The Ronettes Be My Baby P.Spector - J.Barry - E.Greenwich :US #2 /UK #4
バリー&グリニッチ夫妻は、この一曲を作ったというだけで、音楽史に名を残す存在になれたでしょうね

まさに究極のポップス

63年の最高峰に位置するのではとも思う、脅威のウォール・オブ・サウンドは、意外にもスペクター初のフル・オーケストラ

白眉はハルのドラム
印象的なイントロで始まり、曲の間中ひたすら正確に(少々地味に)鳴り続け、最後のリフレインでは涙を誘うほど情熱的に
・・・一曲通して、頭の中でドラムのフレーズが追えるわ、俺(笑)。

ヴェロニカの咽喉を絞るような、歌声もメロディの抑揚と凄く合いますね。
一人で静かに口ずさんでみると、こんなに悲しいメロディだったけか?なんて思います
特に「Be my baby na-----ow」のくだりとか。

多くのアーティストが影響を受け、死直前のゲイリー・アッシャーを見舞ったブライアンが、二人で涙を流しながら口ずさんでいたなんてエピソードまで

ブライアンは、先日の雑誌『ロッキン・オン』でも「アーティスト、この一枚」みたいな質問に「ビー・マイ・ベイビー」をあげてましたね

そういえば、日本語カヴァーもありましたよね?

The Crystals Then He Kissed Me P.Spector - J.Barry - E.Greenwich :US #6 /UK #2
63年のバリー&グリニッチ恐るべし
これまた素晴らしいメロディ
最高傑作級を2曲同時に書くとは

天才エンジニア、ラリー・レヴィンの失敗か何かで、異様なエコーが実現されてますカスタネットが良いですよね

間奏のストリングス、明けて始まる「Then he asked~」のハーモニー、、、盛り上がりとは何たるかをつかみ切ったスタッフたちが、完璧なお仕事
フィル自身、この曲は相当自身があったらしい

ビーチ・ボーイズもこれを男性側の視点の歌詞に変えて、英ヒット
しかし、これ程の完成度を持つ曲を、ビーチ・ボーイズ風にカヴァーできたのは、何気に恐ろしいことではないかと考えてしまう。。。

リードはララ・ブルックス
ガール・グループの中で、何とも微妙な位置にあったクリスタルズですが、この曲と「ダドゥロンロン」がある限り、彼女らは語り継がれていくでしょうね

Dalene Love Fine, Fine Boy P.Spector - J.Barry - E.Greenwich :US #53
素晴らしいたたみかけパワー満点な女性です

The Ronettes Baby I Love You P.Spector - J.Barry - E.Greenwich :US #24 /UK #11
①からの勢いそのままに、という超々名イントロたまらないですね。

間奏からブリッジ部分のストリングスはとろけるように格好良い
アレンジャーのジャック・ニッチェ、完璧なお仕事です

つくづく、ヴェロニカの「Wo-hoh」とか「Oo-wee」とかの合いの手は上手いなーと。

The Ronettes I Wonder P.Spector - J.Barry - E.Greenwich
シングル・カットしても良かったのでは??
クリスタルズのヴァージョンはイギリスで36位のヒット

ドラムとカスタネットに混ざり合うようなコーラスが、バッチリ“ウォール・オブ・サウンド”してる。
「ワンダー、ワンダー」ってカッコイイですよね

The Crystals Girls Can Tell P.Spector - J.Barry - E.Greenwich
これも確かロネッツのヴァージョンがありますね。
何となく、クリスタルズに見切りをつけ始めてる感じがしてしまいます。

The Crystals Little Boy P.Spector - J.Barry - E.Greenwich :US #92

The Treasures Hold Me Tight J.Lennon - P.McCartney
何とビートルズ・ナンバーをカヴァー

が、とってもオールディーズ然にまとまった感じです
特に、アイヤイヤイヤイって、あれはないだろう(笑)。

これ聴くと、「あぁ、ビートルズの良さはメロディだけじゃなく、構成やアレンジが大事なんだな」と再認識

ただ、問題は歌っているトレジャーズなんです
例によって、実はこんなグループは存在しません
トレジャーズとは、当時ブリビルに出入りし始めた、ヴィニー・ポンシア(Vincent Poncia)とピーター・アンダース(Peter Andreoli (aka Anders))、通称アンダース&ポンシアのことなのです
・・・と言ってもさっぱり無名ライターコンビの部類ですよね

フィル・スペクターが関心を寄せた、新進気鋭の若手ライターコンビ

後に様々な活躍が待っています。

The Ronettes (The Best Part of) Breakin' Up P.Spector - V.Poncia - P.Andreoli :US #39 /UK #43
そのアンダース&ポンシアにフィルが近づいたのは、実はバリー&グリニッチとの関係が崩れ始めたかららしいです

んで、こっからこの二人組み、ガンガン良い曲を書きます

イントロなしで始まるこの曲、今まであまりなかったハイ・トーンの幽玄なコーラスも面白いのですが、「ケンカの一番良いトコは、仲直りできること」という歌詞が秀逸

後にシンボルズが、ビートを加えた、見事なカヴァーを世に出し、ヒットさせてます

ちなみに、アンダース&ポンシアが有名なのは、後にソフトロック・ファンが喜ぶ音楽を作ったからですね
イノセンス(The Innocence)、ポップコーン・ブリザード(Popcorn Blizzard)何ちゅう名前だ、トレイドウィンズ(The Trade Winds)、とか

The Ronettes Soldier Baby (Of Mine) P.Spector - V.Poncia - P.Andreoli

Dalene Love Strange Love P.Spector - V.Poncia - P.Andreoli

Dalene Love Stumble and Fall P.Spector - V.Poncia - P.Andreoli
何でヒットしなかったんだろう
ってすぐに回収されたかららしいのですが、それこそ何で??
歌詞がまずかったんですか??
それとも、スペクターの精神状態がまずくて、まともに売らんかったんかな

曲の中身ですが、メロディを奏でるかのようなドラムも格好良い
ダーリン・ラヴとデュエットするかのようなサックスがまた良い

The Ronettes When I Saw You P.Spector
意外に珍しいスペクター単独作品
こんな曲は分厚くせずに、淡い音でシトシト歌っても良かったんかな、とも

Veronica So Young W.H.Tyus,Jr. / Arr. P.Spector
原曲はスチューデンツ(The Students)っていう連中 たぶんこの曲だけで名が知られているタイプ。

後にビーチ・ボーイズもカヴァーすることで有名ですが、まさに“ウォール・オブ・サウンド”の好例

The Ronettes Do I Love You? P.Spector - V.Poncia - P.Andreoli :US #34 /UK #35
これぞアンダース&ポンシアの傑作
前奏の弾むベース(?)や妙なパーカスが良いですよね~。
後のビーチ・ボーイズのスタイルを思うと、つくづく、ブライアンはスペクター・ファンだったんだなと感じる(笑)。

ひたすら「Do I~」って、自身なさ気に自分に問いかける歌詞がとっても魅力的

そして「Do I~」でなくなる3番
「Oh I swear I'm gonna get you」と始まった途端に感じる疾走感と高揚感が本当に感動
歌詞の中身も本当に上手いと思う

The Ronettes Keep on Dancing P.Spector - J.Barry - E.Greenwich
ヴォーカルがころころ変わり、何だか訳の分からない存在だったクリスタルズと比べると、ロネッツってヴェロニカで安定してますよね
スペクターがどれほど熱を入れてたかが分かるなー
古い曲の焼き直しだそうです。

The Ronettes You Baby P.Spector - B.Mann - C.Weil
有名な、ローリング・ストーンズとのツアー直後の曲

久々にブリビルの旗手、マン&ワイルですが、これもシングル狙えたよなぁ

ラヴィン・スプーンフルは実に彼ららしくカヴァーしてる僕はそっちが好きです。

そういや、ストーンズはもろにスペクター・サウンドの影響を受けてますよね
勝手な推測ですが、「サティスファクション」って曲、ブリティッシュ勢の中では、ストーンズでないと出来なかったって思うんですよ
スペクターっぽいというか

そういえば、ブリル・ビルディングってニューヨークにあったんですよね??でもスペクターの録音はロサンゼルスのゴールド・スターでしょ??
共作ってどうしてたんですか?(笑)楽譜とか送ってたの??それとも何か根本的に勘違いしてます??
答え

The Ronettes Woman in Love (With You) P.Spector - B.Mann - C.Weil

The Ronettes Walking in the Rain P.Spector - B.Mann - C.Weil :US #23
のSE(サウンド・イフェクト)や鈴の音も楽しく、コーラスを遠くに配置して、珍しくストリングスはないですが、かなり凝った曲ですよね

サビのメロディは本当に出来が良く、ヒットを狙いにいったな、って感じ(笑)

スペクター・サウンドの体現者、ウォーカー・ブラザーズ(The Walker Brothers)も末期に好カヴァーしてます



1 コメント

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TBどうもです (BYRD)
2007-03-19 22:53:17
フィル・スペクターの一番ピークの時期の楽曲がズラリと並んでるので何もいうことはありませんね。グレイト!!

それとフィル・スペクターがソング・ライターとして必ずクレジットに記載されてるのは"お前の曲を採用してやってるのだから、俺の名前も載せろ"ということと印税の分け前も欲しかったということだったような(自信ありませんが)
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