♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

Pet Sounds :US #10 /UK #2

2007-12-31 | 1曲ずつ一言
The Beach Boys
1966.5
Produced by Brian Wilson

前半より

① Wouldn't It Be Nice T.Asher - B.Wilson :US #8
この前奏、この前奏こそ『ペットサウンズ』の魅力
本当に見事すぎる前奏、口笛や鼻歌で再現しようと思っても、意外にうまくいかない、実に不思議なメロディ
ライヴでこの前奏が流れた時の反応も素晴らしいですよね

この前奏一つとってもアルバム時代
印象的にアルバムを始めるというのが大事
ビートルズやミレニアム、S&Gは、短い1曲を入れることで実現しました

この曲全体を支えている楽器は、何とアコーディオン
まるでベースかパーカスのように鳴り続けるアコーディオンが、見事な音のふくらみを実現
まさに天才ブライアン

またこの歌詞が素晴らしいんだ
高3当時、仲良しの女の子と、「好きな人とこんな風に一緒になれたら本当に素敵だよね」なんてイチャイチャしていたことが懐かしい(笑)。

コーラスも絶好調
これのオケなし(アカペラ・ヴァージョン)はもう涙もの
もし発表していなかったら、暴動でも起きたんじゃないか
ブライアンの少しソウルフルなリード、中間部で登場するマイクのバラード用ジェントル・ヴォイス、奇跡のようなフィット感です

マイクといえば、最後の「Good night ,ho ho, baby」という歌詞の歌い方は大正解だと思います
ここで、「Ho ho」ってのが入ってないヴァージョンが出回って、なるほど、これは入れて正解って思いました。

このアルバムに乏しいスピード感を味わえる、まさに見事な冒頭部分でした

② You Still Believe in Me T.Asher - B.Wilson
前回、このアルバムのテーマは“喪失感”なんて書きましたが、幸せルンルンの1曲目に続くこの曲、早速失われ始めています(笑)。

クリスマス・キャロルを思わすほどホーリィな出だし
エコーたっぷりのハミング、そしてピアノ。。。。
そう、ピアノなんですよねーーー、あの弦楽器の音(笑)。
グランドピアノの弦部分を、押さえながらヘアピンで弾いたという超有名なエピソード
コロンブスの卵だよなー、この話

ところで、1曲目から感じることなんですが、ブライアン、ちょっと声が変わりましたよね???
彼は自分の声のか細い要素が嫌いで、太く歌いたがってたっていうけど、それの流れで考えれば良いのでしょうかね

このアルバム、よく帯に「悲しいほど美しい」という表現を書かれるんですが、この曲の“美しさ”はまさに“悲しさ”だと思います。

最後の「I wanna cra---a-aaa--a--a--aaa--a--a--aaa-a--」の連続は狂気的ですらある悲しさ

③ That's Not Me T.Asher - B.Wilson
近年、ドラムが実はハル・ブレインではなく、デニスであったことが判明し、話題になった曲

序盤のベースが本当に印象的
構成もなんとも不思議
ほとんど同じメロディを繰り返しているだけなんですよね~~~
これぞペット・サウンズ、とでも言うべき仕上がり

マイクとブライアンがリードを交代している瞬間、買った当初はまーったく気づいていませんでした
このアルバム全体で、この2人のデュオはいつも以上に完璧ですね

・・・“あんな僕、僕じゃないよ”という言い訳が始まりました(笑)。

④ Don't Talk (Put Your Head on My Shoulder) T.Asher - B.Wilson
「ザッツ・ナット・ミー」はこれの前奏のように感じることがあります(笑)

テーマ“喪失感”から言えば、最初の持ち直し
でも、次の曲からすると、時すでに遅しになってからの男性のエゴかも知れない

大人な空気漂う管弦楽をバックに、リードは珍しくブライアンのソロ
ボックスセットには、なんと管弦楽オンリーというマニアなトラックが入っていましたね

ビーチ・ボーイズ・サウンドとは異質すぎるこの世界には、ピート・タウンゼントならずとも、多くのファンは戸惑ったでしょうね

そういや、コーラスを入れようとした痕跡が、ボーナストラックとして広く出回ってましたね
すっげ~ハーモニーしてましたよねー、アレ

⑤ I'm Waiting for the Day M.Love - B.Wilson
従来のファンでしたら、この曲でちょっとは安心したのではないでしょうか??(笑)
ヒット曲の①以外では唯一のアップテンポ

しかし、何ともクセのあるアップテンポ
ティンパニーでどんどん引っ張るのかと思いきや、という訳でもなく、、、サーフ・ミュージック時代によく使っていたエレクトーンのサウンドがちょっと浮いてて、、、
そういや、ギターのサウンドが琴っぽいのは、裏ジャケットの兼ね合いを感じさせるんですが、それも一瞬のこと
しばらくすると、そんなこと意識しなくなる展開

これだけ作詞がマイク・ラヴ
だから彼がリード、というヴァージョンが残っています

ティンパニーの使い方は本当に見事
こんな曲が1曲ここに入っているのがまたうまい
この曲はティンパニーの迫力を見せるための曲

⑥ Let's Go Away for Awhile B.Wilson
このアルバムもこれまで同様、インスト曲がふっと入っています

BB5におけるインスト作品というのは、どう受け止めたら良いものやら、難しいものがあります
曲数確保のため、レコード会社の要請、そんな理由で入ることもあるんでしょうが、このアルバムの⑥と⑫は、“音楽家”ブライアン・ウィルソンの裸の勝負として受け止められやすいですよね

確かにこの曲は、後にあの「グッド・ヴァイブレーション」のB面を飾るほどの名インスト

山場があるようでない、何ともつかみどころのないメロディ、どうしてこんなのが思いつくのだろうか

確かに、「グッド・ヴァイブレーション」のような強烈な曲のB面には、こんな摩訶不思議な曲でないとおさまりがつかないかも

次の⑦が、アルバムの流れから言ってあまりにも浮く1曲なんですが、その1曲前がこんなタイトルなのは面白い

⑦ Sloop John B. Trad. B.Wilson :US #3 /UK #2
よくこの曲は『ペット・サウンズ』用ではなかったなんて言われることが多かったんですが、どうもそういう訳でもないようですね
確かに、冒頭から強烈なベースライン、分厚いパーカッション、充分『ペット・サウンズ』してます

アレンジャーとしてのブライアン、最高の仕事は、泥臭いカントリーを“悲しいほど美しい”アルバムに相応しい仕上がりにした、まさにこの曲のアレンジですよね

ビーチ・ボーイズ得意の複雑オープン・ハーモニーをたっぷり効かせ、見事に英米で大ヒット
ヴォーカルの入れ替わり方、テンポの変え方、本当に完璧
唐突に始まるアカペラは至極の響きテープを切ったんですよね?

そう、『ペット~』ってなんだかんだヒットしてるんですよね
よく言われるように、このアルバムの難解さが凋落の一歩なんじゃないと思います。この直後の精神分裂が第一歩なんですよ。

ところで、『サージェント~』には、ビートルズの(一般的な)代表曲はないんですが、『ペット~』には、①⑦⑧という、どんなベスト盤でも必ず入りそうな曲が3つもあります
コンセプトの縛りの弱さもあると思うんですが、反面、割とキャピタルが必死にPRしたんだろうなーと感じる一面

この曲、ライヴでも見事な盛り上げ曲として使われます
この辺が超一流ライヴ・バンド、ビーチ・ボーイズの凄さ

⑧ God Only Knows T.Asher - B.Wilson :US #39 /UK #2
ポール・マッカートニーの“今まで聴いた音楽の中で一番美しい”という名言を生んだ傑作
ポールは“一体どうやってこんなメロディを思いついたのか”ともコメントしてますが、まさにポップ・ミュージックの持つメロディの魅力の、一つの頂点とも言うべき、強烈な存在感を持っています

そうそう、以前、何かのドキュメンタリー番組がバック・ミュージックにこれを使っていたんですが、完全に失敗してたと思う(笑)。
音楽が勝ち過ぎてた

メロディの良さを500%引き出しているのが、20歳直前のカール・ウィルソンのヴォーカル
“悲しいほど美しい”歌声、ビーチ・ボーイズでなければ『ペット・サウンズ』は出来てないと思う
ブライアンがライヴで⑧を歌った時に感動するのは、聴衆の意識の中にカールの声があるからだと、僕はよく思うのです。

声と言えば、最後の幻想的なリフレインにブルース・ジョンストンの声が登場します
ここから正規のメンバーとして認知され、活躍していきます

そしてそのリフレインが凄いっすよね
もう美の極致
2人の追っかけの上空を通過するファルセットの「What I be witho------ut you」に涙
このリフレインをポールとジョンは何度も聴いたらしいですね
そして生まれたのが「She Said She Said」だとか

また、この美しさへの返歌が「Here There and Everywhere」とも言われてますね。

そんな美しい曲のバックでずっと鳴り続けているパーカスが、オレンジジュースの空容器だという点が、このアルバムのミソでもあるわけですが。

⑨ I Know There's an Answer M.Love - T.Sachen - B.Wilson
印象的なイントロの出来具合から言ったら⑧に引けを取らない
ブライアンの力強く伸びやかなヴォーカルが、これでもかというくらいに発揮されています
ブライアンのヴォーカル・ワークではトップクラスの仕上がり

この曲、元々は「Hang on to Your Ego」という曲で、これでは余りにビーチ・ボーイズらしからぬテーマだからということで、歌詞を変更したというお話が超有名です

※歌詞変更に尽力したテリー・サッカンは、この事実だけでWikipediaに載ってますこの時期のマネージャー。『スマイル』でもブライアンを支えます。

この変更の事実は、“マイクたちが勝手に”という論調で語られ、ブライアンの意図が歪曲された等と語られがちですが、それは言い過ぎでしょう

そもそも、セールス面を意識した変更だからダメだとのことですが、完成形の⑨だって、それほどポップ・ミュージシャン的な曲じゃないと思いますし

マイク・ラヴもヴォーカリストという芸術家なんですから、いつでも彼の異論には芸術的理由はゼロで、商業的な理由ばかりと見るのは偏見でしょう

ちなみに、「Hang on to Your Ego」はほぼ完成形が出回ってますが、僕は出来具合も⑨の方がいいと思いますし

⑩ Here Today T.Asher - B.Wilson
そんなに賛同者はいないと思うんですが、『ペット・サウンズ』がどのようなアルバムかを伝えるには、この⑩が一番分かりやすいと思います

難解さやスリルと、キャッチーさや美メロという二つの面が元気いっぱい共存しているのが『ペット~』の特徴だと思うのですが、この曲はその特徴そのものだと思う

マイクの鼻にかかった声がノーイントロで始まる出だしから、スピード感を感じさせながらスタート
サビ前のブリッジ部分のベース音はさらにスリリング(笑)。
それの頂点が来るのが間奏部分
さぞかしポール・マッカートニーを始め、多くのベーシストたちを驚愕せしめたでしょうね

⑪ I Just Wan't Made for Times T.Asher - B.Wilson
山下達郎を始め、多くの人がベストトラックに挙げる傑作

まずは何より、トニー・アッシャーを褒めるべきでしょう
「I guess I just wasn't made for these times」
とは、本当に凄いフレーズ
当時のブライアンの姿・心境を、永遠に残すフレーズ

そのサビのバックで「Ain't found the right thing I put my heart and sou l into」と「People I love don' want me」というフレーズをコーラスで追っかけにしてくるセンスなんて、本当にどうかしてると思うぞ

演奏は狂気の一言
これまた実に見事なベースラインを披露しながら、表に出てこないチェレスタと、エコーたっぷりなパーカスと、初使用のテルミンと、信じられない次元に旅立ってしまった感がある
全体的に不協和音スレスレ
サビで急に目立つドラムまで狂気的
・・・実際、この曲のカラオケ・ヴァージョンを聴いた時は気が狂うかと思った。

この曲が流行ることなんて絶対にないと思うが、永遠の名曲だと思います

⑫ Pet Sounds B.Wilson
スループ・ジョン・Bなんかより、絶対この曲の方が浮いていると思うんですけどね、僕
だってこれ、タイトル曲ですよ???
何でこんな位置で、しかもインスト?

確か、映画007のために書いた曲らしく、本当に『ペットサウンズ』用ではなかったらしいんですが、それがタイトル曲を飾るというこの裏切られ感(笑)
レコード会社的にはこれで良かったんでしょうか?

この辺、『トゥデイ』や『サマーデイズ』の時よりは、メンバー側が制作の主導権を握っていたんだろうなー、とも思います。

オーヴァーダブしたギターが主役のトロピカルなインストは、⑥同様、天才ブライアン伸び伸び本領を発揮している曲よろしく、若干つかみどころのない仕上がり

“お気に入りの音”がこれだと言われた日には、戸惑わずにはいられませんよね(笑)
ある意味で、このアルバムを象徴する曲、と言っていいんでしょうか

⑬ Caroline, No T.Asher - B.Wilson :US #32(Brian Wilson名義)
喪失感の極致とも言うべき、バラードの傑作
ブライアンの渾身のソロヴォーカルが光ってます

初めて買ったBB5のベスト盤におさまっていたのを聞いたのが最初なんですが、アップテンポ好きの僕には”なんでこんな曲がベスト盤に?”というのが正直な感想でしたね(笑)。

そのくらい、暗くて重い、これまでのBB5のバラードとは一線を画す作品
前奏からして異様

喪失感の極致、と書きましたが、本当に本当の喪失感は曲が終わってから襲いかかってくるんですよね
66年の音楽シーンで、おそらくは最も物議をかもしたのではないかと思われる、究極の“違和感”

・・・僕はこれを、夜の住宅街を歩きながらイヤホンで初体験したんですよーーーー。すっげー怖かったです
思わず立ち止まって、あたりをキョロキョロ挙動不審
轟音が立ち去った後、こだます鳴き声の静寂さに、もう半べそ

この奇妙奇天烈なエンディングのおかげで、私たちはアルバム『ペット・サウンズ』に続けて、何か別の音楽を聴くことは滅多にあり得ません。
まずは列車の音と犬の咆哮を聴いてからですんで。

このアルバムがコンセプチュアルなイメージを抱かれやすいのは、始まりと、終わりが、強く強く全体を支配しているからではないでしょうか?

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○ Trombone Dixie B.Wilson
『ペットサウンズ』に入る可能性があったのに外れた曲は2曲
1曲はご存じ「グッドヴァイブレーション」
もう1曲がこちら、トロンボーン主体のジャズインスト

こちらのトラック、どう聴いてもヴォーカルの存在を前提としたカラオケ仕上がりをしていまして、きっと歌があったに違いないと考えたくなるのですが、今日に至るまで発見されていないので、きっと存在しないのでしょう

もしくは、当初存在していた歌詞が、別の曲に移行されているかですが

んで、この曲がすっばらしいんですよ
ググッ、ググッと引っ張られていくサビ部分は、完全にツボです

未発表に隠れている宝物
別ヴァージョンとか発掘されないかな、と期待している1曲です
・・・BBファンってこういうことがあるからしんどいんですよね



と言う訳で、本年もお付き合いいただき、ありがとうございました
来年もよろしくお願いいたします


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