♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

Shut Down Volume 2 :US #13

2005-11-13 | 1曲ずつ一言

The Beach Boys
1964.3
Produced by Brian Wilson

ビートルズはまだ2作目なのに、ビーチ・ボーイズは5作目かよと、偏りを感じられ方もいるかと思いますが(…いないでしょうが)、実はビートルズの3作目とビーチ・ボーイズの6作目は同時にリリースされてますので、結構妥当なんですよ

ビーチ・ボーイズは63年~65年の3年間で、ライヴ版を入れてアルバムを10枚出してます
・・・3ヶ月に1枚そりゃ精神的にやられるよ。

よく、この現象を「レコード会社の圧迫で…」という文脈で説明する方を見ますが、僕はこれは微妙です
ってのも、ビートルズも抱えたキャピトル・レコードが、ビーチ・ボーイズを焦らせる理由ってのが良く分からないからです
やっぱブライアンやボーイズが、ある程度は望んでこうなったのではないでしょうか?

「年3枚」なんて意味不明な契約が、仮にあったとしても、ブライアンなりに自ら質量共にを考えていた点がないと結ばないでしょうし。
その気になったら、父親の強圧だって、跳ね返すようなパワーもある訳で

僕は、いつでもブライアンを被害者に、周りを加害者に設定して描く見方は、ちょいブライアンの自叙伝等に振り回され過ぎかと思ってます

64年という年は、ビートルズのアメリカ進出で幕をあけたようなもんで、ブライアンやマイク・ラヴも、前年辺りから相当意識をしていたそうですよ。全然気にしていなかった説もありますが。

ですのでこのアルバム、ブライアンはもっと丁寧に作りたかったとこぼしていたとか

この辺りを境に、若者向け音楽の市場がガラリと変わり、昨年までヒットを持っていて、本年で消えたってアーティストがウジャウジャ
プレスリー(Elvis Presley)やリック・ネルソン(Ricky Nelson)、レイ・チャールズ(Ray Charles)なんぞは顕著な部類でしょうか?

これに耐えた存在がビーチ・ボーイズとフォー・シーズンズ(The Four Seasons)
注:スプリームズ(The Supremes)は、ブレイクしたのがビートルズ登場以降なので“耐えた”わけではない。

シーズンズは「Dawn (Go Away)」や「Ronnie」で、ビーチ・ボーイズは「①ファン・ファン・ファン」でその存在感を示しました

特にビートルズが64年4月に、全米ビルボード・チャートの1~5位を独占した時、2月に発売された①がまだチャート上(しかも確か6位に)に残ってまして、いやぁ、これはインパクトありますよね

微妙な曲多し、と囁かれる本作ですが、だからこそブライアンに「もっと良い作品を」と奮起させたのでは、と考えたくなる一品です。

そういえば、なぜ「Volume 2」なのかって話ですが、それは「Volume 1」があったからです(笑)。
キャピタルがオムニバスで『シャット・ダウン Vol. 1』というホットロッド集を出していたんです

ビーチ・ボーイズも「409」と「リトル・デュース・クーペ」「シャット・ダウン」が収録されていたはず
既発表曲のみですので、そんなにマニアが求めている訳ではありませんが、存在そのものはレア・アイテム
CD化したのは、確か日本だけではなかったか???
前回の再販ではあったんだよなー

トラック・バイ・トラック

① Fun, Fun, Fun B.Wilson - M.Love :US #5
ビーチ・ボーイズ初期は、この一曲で表現されつくされてると思う
「ビーチ・ボーイズの特徴は?」と尋ねられたら、これを聴かせますよ勿論彼らの“良さ”はと聞かれたら、別の曲になるかも知れませんが。

まさに際立っている1曲
当時「あぁ、ロックンロールもここまで来たか」みたいに思った人いたのではなかろうか?

どこかで聴いたことある、典型的なギターのリフで始まり、マイクの、天才的に速いリード・ヴォーカルが駆け抜け、サビでとんでもなく分厚いコーラスが登場
呆気にとられて2番に入ると、これまた驚きのハーモニー
あの合いの手コーラスの格好良さを上回るのは難しい

ところで、このギターのリフで始まる曲なら、ビートルズもカヴァーした、チャック・ベリー(Chuck Berry)の「ロール・オーバー・ベートーベン(Roll Over Beethoven)」があります。
しかし、不思議なことに、半年前のビートルズの「ロール・オーバー・ベートーベン」(セカンドの⑧)と比べて、格段に“音”が良いんです
ふくらみがある上に、こっちの方がノリがより出てる
「あ、機材が進歩したのか」って判断するには、半年でそんなに変わるもんでもないでしょうし

実はこれ、ギターと全く同じフレーズを、目立たないようにピアノが入っているんだそうです
言われても分かりづらいです。
でも、その結果“音の厚み”だけが耳に残るという

僕は60年代のこういうところが好きです素晴らしい創造力
バカラックも“目立たないサックス”の使い方していたと思います

なお、終わり方の違う、モノラルのシングル・ヴァージョンは、最近は必ずボーナスについておりますね
僕は圧倒的にシングルの方が好きです

② Don't Worry Baby B.Wilson - R.Christian :US #24
どなたかが“20世紀最高のポップス”と呼んでいたこの曲が2曲目

シングルでも全米1位の「アイ・ゲット・アラウンド」のB面収録と、常に凄まじい曲の直後に置かれているのに、ちっとも色褪せないですね

出だしのドラムは、言葉では再現不可能
恐らく演奏の段階ではもう少し前から叩いていたのでしょうが、テープを切ったのか、えらく半端なトコから始まる
それが素敵に聴こえるから、ブライアンってつくづく天才

マイクの超低音とブライアンの超高音を、抜群に活かした奥行きのあるコーラスに、ツヤのあるギター
後にテリー・メルチャーが、バーズの「ミスター・タンブリンマン」をプロデュースした際に、拝借した“あの音”ですね

ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」に捧げた曲だけあって、ポップス万歳な出来なんですが、楽器の種類で言えば、コンボ編成のバンドでほぼ再現可能なロック曲
うーん、コーラスの勝利ですね

③ In the Parkin' Lot B.Wilson - R.Christian
ビーチ・ボーイズ得意の“合体”曲
前奏の優雅さは、今までの曲のどれと比べても素晴らしい
が、中身はガラリと陽気なホット・ロッド
エンディングでもっかい前奏を出したのが良いですね

④ "Cassius" Love Vs. "Sonny" Wilson B.Wilson - M.Love
え~、彼らはアルバム内にこういう“トーク・ショー”を良く入れます
あまりのアホくささに失笑してしまう場面が多いですよ
ミッキーの声に似てるってあんた(笑)。

しかしだ、なぜこんなもんが入るのでしょう??
時間がなくて曲が足りなかった??
中山康樹氏が指摘したようにサウンド・コラージュの先駆け??
…あ、誰かが「アイドルっぽい」と言ってましたが、他のアイドルはこんなことしてないかと

僕は中山氏の説、好きですね。
ってのも、彼らも毎回割りと真剣に録音してるしさ

⑤ Warmth of the Sun B.Wilson - M.Love
馬鹿っぽい“トーク・ショー”を展開していた“声たち”が、直後にこんな完璧なコーラスをキメると、その落差で感激度がするように思う
是非、続けて聴いてみて欲しいです

驚くべきコーラス・アレンジの美しさと、これまでのバラードとは一線を画すような深さを感じるこの曲は、アメリカ初のカトリック系大統領、ケネディが暗殺された数時間後に、ブライアンとマイクで作ったとか。
ウィルソン一族も熱心なカトリック信者です。
彼らのコーラスのルーツに教会音楽があげられるほど。

⑥ This Car of Mine B.Wilson - M.Love
次男デニスが久々のリード
彼の好きなディオン(Dion)の真似をするように歌っているんだとか
最後「Doo di pop」のコーラスは楽しい

⑦ Why Do Fools Fall in Love F.Lymon - M.Levy :US #120
アルバムB面はシングル①のB面も飾ったこの曲から
天才少年、フランキー・ライモン&ザ・ティーネイジャーズ(Frankie Lymon & The Teenagers)の56年のヒット曲

が、これはもう究極のカヴァーでしょう
ドゥ・ワップの曲なんですが、これでもかってほど“ウォール・オブ・サウンド”をかけ、カスタネットやハル・ブレインのドラムも凄まじく、パッと開けるコーラスは絶品
一大傑作

・・・シングル・バージョンはこれとちょっと違うらしいが、聴いたことがない

⑧ Pom Pom Play Girl B.Wilson - G.Usher
ブライアンがリードと書いてあるが、“カールでは?”と指摘した鰐部さん(日本のファン・クラブ運営者)は鋭い(笑)。
カールは“覚えてない”って、オイ

⑨ Keep an Eye on Summer B.Wilson - B.Norman
初期お得意のバラード用コードですね
同じような曲も、マイクの低音や、デニスの枯れ声をどう使うかで、充分変化を付けられるこの表現力の豊かさ

⑩ Shut Down, Pt. 2 C.Wilson
出だしのずっこけたサックス…なんでスティーヴ・ダグラスにやらせなかったんだ(笑)。
ミスを残して発表するってのは、昔の音楽の良さかなぁと今の音楽にはありえないべ

カール自作のインストです

アルバムのタイトル曲みたいに思うのですが、、、中身は数合わせで入れたかのような、結構どうでも良い1曲(笑)
ちょっとした冗談で、こんなタイトルをつけたのではないでしょうか??

⑪ Louie, Louie R.Berry
キングスメン(The Kingsmen)のガレージ・サウンドの古典をカヴァー
間奏後に転調するのは、ブライアンの得意技

ところで、この原曲、メジャー・リーグの試合で、回の合間に良く流してますよ
お客さん踊ってます

⑫ Denny's Drums D.Wilson
今度はデニスの出番です。何と2分弱のドラムソロ(笑)。

中山康樹氏なんかそうですが、ブライアンが顔を立てて、カールやデニスの出番を用意したという人がいて、
「リーダーは大変だ」
と“ブライアン被害者”史観を語られるようですが、、、

むしろ、忙しいお兄ちゃんとしては、彼らが一部曲を担ってくれて、助かったのではないのかなー、なんて思いますが、いかがでしょう??



さてさて、以下はこの時期の未発表~。

I Do B. Wilson
が付いてきます。伝統コーラスのグループ、キャステルズ(The Castells)にプレゼントしたこの曲、なんであげちゃったのと言いたくなる名曲

不思議な前奏に、ファースト②のメロディが(なぜか悲しげに)流れ、ハルの情感的に速打ちのドラム(ベスト・プレイ!)で一気にサビへ

このサビの追っかけコーラス・スタイルは名“発明”ですよね~



4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
I Doについて (うし)
2005-11-15 02:26:42
すいません、コメント付けないと言っていたのにBB5がらみなのでつい笑。



ボーナスのI Doですが、Surfer Girlとの2 in 1に入っているボーナスですよね?

実はこれ、日本盤だとI DoはアルバムSurfer Girlの方に、Shut Down vol.2のボーナスはFun, Fun, Fun(シングルバージョン)だけなんです。

なので日本盤を買い集める予定でI Doを聴きたい、という人はSurfer Girlを買いましょう♪



そんな人いないでしょうが。
返信する
ありがとう! (fenbu)
2005-11-16 00:00:46
それはうっかり

レコーディングが、『リトル・デュース・クーペ』の後だったから、てっきりこちらかと思ってました~。

あ、そういやビーチ・ボーイズのレコーディング・データ、クソ分厚い本で今年出てたのね。77年くらいまでのが。
返信する
"I Do"について (わにべとものり)
2005-12-06 23:32:54
ここでははじめまして。mixiから来ました。

"I Do"は結婚式についての歌なので、当時のBBには時期尚早と判断されたのでしょう。

BBより一世代上のCASTELLSにはむしろ"適齢期"だったと思います。

返信する
わ、わ、わ、 (fenbu)
2005-12-07 14:04:47
鰐部様ではないですか

ご訪問、ありがとうございますいつも陰に陽に、お世話になってます~。しかも貴重な情報まで頂いてしまい恐縮です。

またあちこちでお世話になりますm(_ _)m
返信する

コメントを投稿