♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

Pinkerton's Assorted Colours

2008-08-27 | 1曲ずつ一言
僕の一番のお気に入りアーティストは、文句なしでビーチ・ボーイズですが、2番目は、となると結構悩みます
ビートルズかフォー・シーズンズあたりが妥当な候補ですが、実は、彼らじゃないかも知れません

フライング・マシーン(The Flying Machine)を選びそうな気がするんです

なんてマニアックなチョイスっていうか、スタジオグループでは?
・・・とか思われるかもしれませんが、彼らのコーラスが愛しいのです
それぞれの声が生きてるんですよ、元気いっぱいに

・・・僕は、路上とかで、大学生とかのアカペラ・グループのハーモニーを聴いてると、それぞれの声は死んでるな~って思うことが多いのです
それぞれの声が消えることで、1つのハーモニーがイキイキとしている、というか。
西海岸系のハイトーン・コーラスや、ゴスペルのハーモニー聴いてても思うんですよ。
そういったコーラスは、僕はそれほど好きじゃないんです
ビーチ・ボーイズや、フライング・マシーンは、一人一人の声がイキイキと自己主張しているのに、全体が完成美を持ってるんですよ
・・・あくまで僕の感覚ですが

さて、ではそのフライング・マシーンとやらはどんなアーティストだったのでしょう?・・・彼らのことなんて、知らない人の方が多いですよね

ちょっとした音楽通の方なら「笑ってローズマリーちゃん」(何というタイトル)の一発屋という印象ぐらいはお持ちかと思いますが、実は彼らの前身、ピンカートンズ・アソーテッド・カラーズ(何という名前)でUKトップ10ヒットの①を放っているので、実は2発屋です(笑)。

“トニー・マコーレイに見出されてラッキー”、と言われがちですが、彼らは元々運がいいです
彼らのマネージャーをしてくれたのはレッグ・カルヴァート(Reg Calvert)といって、フォーチュンズ(The Fotunes)を世に送り出し、人気ラジオ番組を運営するなど、成功を収めていた、新進気鋭のお方

カルヴァートが注目した、工場で働きながら音楽をしていた若者たち
中心人物はトニー・ニューマン(Tony Newman)グループのライター兼ヴォーカル
ガレージな集まりでしたが、非常に時代の空気を読んだ、前衛的な音楽スタイルで、そのキーマンがサム・ケンプ(Samuel Kempe)
何と担当楽器は、注目を浴びていたオートハープスプーンフル(The Lovin' Spoonful))のジョン・セバスチャン(John Sebastian)ね
彼らの変テコなバンド名は、彼が命名したっぽいですね。
ちなみに、この無駄に長いバンド名は、途中でアソーテッドが抜けます

メンバーの大半は、フライング・マシーンへ移行と前後して脱退していくのですが、その一人、ベースのバリー・バーナード(Barry Bernard)は、「Sky High」で有名なジグソー(Jigsaw)の一員に
フライング・マシーンに乗り損ねましたが、空高く舞い上がったバリーさん(笑)。

代わりに、スチュアート・コールマン(Stuart Colman)が加入
実はこのスチュアート、後にイギリス音楽界の重鎮となるお方
音楽プロデューサーとして、スター発掘系番組の主催者として、多彩な活躍をしていきます
ちなみに、フライング・マシーンの詳細がかろうじて分かる理由は、彼が記録を残しておいたから、ということになっているらしいです

さて、彼らは結局、大手レコード会社のデッカから、デビューすることになりました
プロデューサーは、何と後にムーディ・ブルース(The Moody Blues)を手がけるトニー・クラーク(Tony Clarke)だったんだそうな
無事に①の大ヒットと③の小ヒットを稼ぎます

ところが、飛んでも話なんですが、マネージャーのレッグが、ビジネスのもつれで殺されてしまうんです。
ちょうどデッカとの契約も終わり、路頭に迷いかけましたが、縁あってパイ・レコードへ移籍

そこで出会うのがトニー・マコーレイ(Tony Macaulay)当時23歳の彼は、音楽スタッフになったばかり
最初はカヴァー作品のプロデュースでからみ始めます

このタイミングで、加わったのがギターのスティーヴ・ジョーンズ(Steve Jones)なんですが、フライング・マシーンのコーラスの中で、ひと際目立つ、魅力たっぷりのハイトーンのハスキー・ヴォイスは彼ではないかと思います

さて、トニー・マコーレイは自作曲も作り始めるのですが、、、
そう、67年に彼が書いた曲と言えば、「Baby Now That I've Found You」と「Let the Heartaches Begin」
何と立て続けに全英1位を送り出したわけですよ、この若僧

ジョン・マクレオド(John MacLeod)とのコンビも始まり絶好調
ペーパー・ドールズらも立ち上げ始めます

多忙なマコーレイに翻弄されることもありますが、これを機にピンカートンズは次の道を模索しだし、フライング・マシーンへと移るわけです

ピンカートンズ時代の楽曲は決して悪くなく、中々なポップ・バンドです
彼ら名義の全12曲は、写真の企画盤(2枚組)で聴くことができますので、是非



1965
① Mirror Mirror (T.Newman) UK #9
時代の空気をしっかり読んだ、サイケ感ただよう好曲
マコーレイと出会う前から、ストリングスのアレンジには凝っていた彼ら
コーラスも厚く、トニー・ニューマンの狙っていた方向性と、フライング・マシーンとは、大して差がなかったのかもしれませんね

この1曲の存在のおかげで、お仕着せな企画バンドと思われる度合いは低いと思いますね

② She Don't Care (T.Newman)
デッカ時代の3曲はどれも実に素晴らしいのですが、どれもB面が平凡すぎる(笑)。
愛着はありますけどね

1966
③ Don't Stop Loving Me Baby (T.Newman) UK #50
ナイス・ポップス
ストリングスとアップテンポなリズム隊が生み出す高揚感は、まさにソフトロック
そう、「You gotta stop」のくだりに、ストリングス入れたは本当に正解

マコーレイとは、出会うべくして出会ったんですね、彼ら

④ Will Ya? R.Calvert
おぉ、レッグ・カルヴァート作品

⑤ Magic Rocking Horse (T.Newman)
間違いなく、この頃の最高傑作
サビのコーラスは、西海岸のソフトロックっぽさが強く、サイケな魅力が満点
この3曲を聴く限り、トニー・ニューマンはそれなりに才能あふれた人だったんですね

前作に続いて、高揚感たっぷりのアップテンポ
ドラムの使い方次第では、もっとバブルガムに仕上がっていたかもしれません
マイナー調で駆け上がっていくサビが大変に魅力的ですが、ヒットするにはちょっと先進的だったか

⑥ It Ain't Right (T.Newman)
なんか彼の書くメロディって、明るいのか暗いのか分かりづらい(笑)。

1967
⑦ Mum and Dad (P.Callender - Murray)
これが記念すべき、トニー・マコーレイ初のプロデュース作品
ピーター・カレンダー(Peter Callender)のカヴァー。

でもまぁ、、、原曲を聴いたことがないこともありますが、特筆するべきこともないような曲かと

⑧ On a Street Car (Henry)
良い前奏です
この曲のサビで登場する、耳にまとわりつくようなハイトーン・ハスキーが、なんでか好きなんですよね、僕

平凡な曲ですが、この“皆で歌っている”感が漂ってて、魅力的
基本マイナー調ですね、彼ら。

1968
⑨ There's Nobody I'd Sooner Love (T.Macaulay - J.MacLeod)
なぜかほぼ同時に、ペーパー・ドールズのフリップ・サイド(B面)でシングル・カットされている、マコーレイ特有のややこしさがある曲

スペクター・サウンドを意識したと思われるベース・ラインが特徴的なバラード
この頃からトニー・マコーレイは前奏でつかむ天才ですね

⑩ Duke's Jetty (S.Colman - D.Holland - S.Jones - S.Kempe - T.Newman)
でも、実はB面のこっちの方が楽しかったりします

作者は全員、当時のメンバー
デイヴ・ホランド(Dave Holland)は後に脱退するドラマーで、後釜はポール・ウィルキンソン(Paul Wilkinson)

自他共に認める珍妙な曲
こんな曲を持ってくる辺り、やっぱ彼らのセンスってすごいと思う
「Dududududu...」って箇所は見事ドラミングも決まってる特に2回目

スティーヴの(とおぼしき)ハスキーなリードもポイント高い

⑪ Kentucky Woman (N.Diamond)
⑫ Behind the Mirror (Wayne)
このシングル、A面は有名なニール・ダイヤモンド作品

マコーレイは複数アーティストを手掛け始めたばかりですが、それなりにピンカートンズだけの色彩づくりも考えてみたようで、この⑪のような、パーティで盛り上がりながら歌っているような(・・・どこかで聴いたことあるシチュエーションだ)、そんな空気を持たせたかったらしいですね

ところが、ウォーカー・ブラザーズ(The Walker Brothers)のジョン(John Walker)が同じカヴァーを同時に考えていたらしく、タイミングを譲り合ってしまい、何とも思いの込めづらいシングルになってしまったんだとか

この失敗から、彼らは転換期に入ります



・・・このペースじゃ、The Flying Machineになるのはだいぶ先でしょうね


6 コメント

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ビートルズより (スワン)
2008-08-28 14:58:35
フライングマシーンの方が好きな人はめったにいないと思います。ベンジャミンさんのこだわりぶりが伺えますよ。(^^)

昔、山下達郎が「グレイトフル・デッドよりラブ・アフェアの方が好き」って言ってたのを思い出しました。

アーティストとしての重要性でなく、気持ちよいポップスかどうかって所で判断したらマッコウレイの馬鹿ポップぶりにはとことんやられますからね。
「ヘイ・ジュード」や「ハロー・グッバイ」よりも「笑ってローズマリーちゃん」や「急いでベイビーちゃん」の方が上かも知れません。
ただ個人的にはマッコウレイの仕事ではピケティウィッチの楽曲が一番好きですけど・・・

紹介のCDはフライングマシーンとの2枚組みのやつですよね。
自分も持ってますが、ピンカートンズの方はあんまり聴いていませんでした。(反省) 1曲目が結構良かったなくらいしか思い出せません。実家に帰ったら復習してみます。
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Unknown (POPOSUKE)
2008-08-28 22:56:30
ベンジャミンさん こんばんは

このグループは未聴です。
フライング・マシーンの前身グループなのですか?
この辺にも目を付けられるのは流石ですね!
私も機会があれば聴いてみたいと思います♪
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>スワン様 (ベンジャミン)
2008-08-29 01:59:53
ハハハ。衝撃告白でした。
スワンさんの文章みて気付きましたけど、自分もハッキリと
「フライング・マシーンが2番目に好き!」
と言い切らないポイントは
“アーティストとしての重要性”を無意識のうちに重視しているんだと思いましたわ。

ピケティウィッチも大好きで、マコーレイ・サウンドの中では、双璧なところがあります。
彼女らはジョン・マクレオドの比率が高いようですが。

ビートルズ好きは、トニー・マコーレイって楽しめると思いますね。
ビートルズ的な良い面を持っていますし。
いろんな影響がうかがえる人ですが、しっかり自分の世界を示してるのがすごいです。

まぁ、今回紹介している楽曲より、フライング・マシーンになってからの方が、よっぽど名曲ぞろいですが、トニー・ニューマンたちの奮闘ぶりも紹介しようかと。

思ってた以上に人脈が面白かったです。
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>POPOSUKE様 (ベンジャミン)
2008-08-29 02:05:51
たぶん、この記事を書きあげた瞬間、ピンカートンズ・アソーテッド・カラーズに一番詳しい日本語サイトになったと思います(笑)。

フライング・マシーン自体、トニー・マコーレイ好きでないと、かすりすらしないアーティストですよね。
「笑ってローズマリーちゃん」もそんなに流れないですしね。
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熱い! (モスコ)
2008-08-30 01:35:39
うわっ!熱いですね~、ベンジャミンさんっ!

私、一応 iTunesに作家別のプレイリストを作っておりまして、一応マコウレイと題したものもあるんです♪
でも手持ちが少なく、このフライングマシーンも持ってない状態なので、聴かなきゃならんです(マコウレイ印のマーマレードもね♪)
すごい参考になりました!写真の2枚組、いつか買います!

私の好きなマコウレイソングはエジソン・ライトハウス”恋のほのお”、”ファウンデーションズの”In The Bad Bad Old Days”、5thディメンションの”(Last Night) I Didin't Get To Sleep At All”辺りです


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>モスコ様 (ベンジャミン)
2008-08-31 02:48:26
僕のまさかの好みに、皆さん一様に驚いていただき、ありがとうございます

まぁ、マコーレイありきで聴き始めた彼らですけど、実は僕にとってのフライング・マシーンのベストは、マコーレイ作品じゃないんです
またご紹介いたします。

ポップス・ファンは、フライング・マシーンは必聴♪絶対に楽しいですよー
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