本と音楽とねこと

国境を越えるアジアの家事労働者

上野加代子,2011,国境を越えるアジアの家事労働者──女性たちの生活戦略,世界思想社.(2.3.2021)

 シンガポールで「家事使用人」としてはたらく、フィリピンとインドネシアの女性たちへの、10年近くにおよぶインタビュー調査からとりまとめられた労作。
 貧困からの脱出のための唯一有効な手立てが、富める国、地域への出稼ぎであることはむかしもいまも変わらない。
 シンガポールに出稼ぎする、フィリピンとインドネシアの女性たちは、ときとして雇用者の虐待、暴力にさらされながら、よりよい雇用者にありつくべく、したたかに手管を弄する。上野さんは、アーヴィング・ゴフマン等による概念枠組みを援用しながら、雇用者と家事労働者との相互作用を描き尽くす。
 本書は、ケアと権力が交錯する国際家事労働力移動の実態を、立体的に明らかにすることに成功している。得るところの多い、稀有な書物である。

悩みながらも、したたかに、軽やかに、彼女たちは国境を越え働きに出て行く。国家・エージェシー・雇用者の収奪と抑圧に抗して―シンガポールで働くインドネシア・フィリピン女性を中心に、人生を切り開くために奮闘を続ける家事労働者たちの姿を、10年にわたる調査から鮮やかに描き出す。

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