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本と音楽とねこと

社会学の力

友枝敏雄・浜日出夫・山田真茂留編著,2017,『社会学の力──最重要概念・命題集』('17.7.1)

 大学院進学を目指す学生の受験勉強用テキストとして最良かと思う。項目にもよるが、初学者の自習書としてはやや難易度が高い。
 気になったのが、本書が、社会学業界外で広く読まれるかどうかだ。専門分化が進み、論点が散逸したことにより、社会学はその全体像を把握するのがさらに困難になった。業界内では重宝されても、業界外への訴求力に欠けるのは、本書の欠点というより、社会学研究の現状からくるものだろう。
 エスニック・リバイバル、宗教原理主義および新々宗教の台頭、ニューリベラリズムの席巻とコミュニタリアニズム等による対抗トレンド等、本書では解読できない社会事象にこそ、一般読者の関心が集中しているように思うのだが、どうだろうか。

目次
第1部 社会学の方法
「社会」の発見と社会学の誕生
社会的事実/存在と当為
方法論的個人主義と方法論的集合主義
統計帰納法,数理演繹法,意味解釈法
概念構成と命題構成
理論研究と実証研究
内在的批判と外在的批判
第2部 概念構成─概念によって社会をとらえなおす
【ミクロ社会学】自我と自己/行為類型/地位と役割/パターン変数図式/社会化/日常生活世界/自己呈示と相互行為儀礼/エスノメソドロジー/エイジェンシーと構造/言語行為と言説
【メゾ社会学】基礎集団と機能集団/支配と権力/官僚制と近代組織/フォーマル・グループとインフォーマル・グループ/アノミーと同調・逸脱/信頼/社会関係資本/近代家族とジェンダー/感情労働と疎外/社会的承認
【マクロ社会学】規範と制度/構造と機能/階級・階層と社会移動/大衆社会/伝統指向・内部指向・他者指向/消費社会/公共性と市民社会/社会運動/受益圏と受苦圏/正義/リベラリズムとコミュニタリアニズム/エスニシティとナショナリズム/家父長制とフェミニズム/資本主義と世界システム
第3部 命題構成─社会のメカニズムとトレンド
【メカニズム】社会統合と自殺/集団の拡大と個性の発達/合理化のパラドクス/相対的剥奪と準拠集団/予言の自己成就/顕在機能と潜在機能/認知的不協和/ラベリング/秩序問題/社会変動の機能主義的説明/合理的選択と社会的ディレンマ/複雑性の縮減/社会の機能分化/地位の一貫性・非一貫性と政治的態度/ハビトゥスと文化的再生産
【トレンド】機械的連帯から有機的連帯へ/近代化/世俗化/啓蒙の弁証法/生活世界の植民地化/想像の共同体と伝統の創造/文明化/情報化/個人化/リスク社会/再帰的近代化/液状化/ハイブリッド・モダンとグローバル化

これが、社会学です。理論を学ぶうえで最も重要な概念と命題をセレクト。社会学者の英知を結集した、新しいスタンダード。

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