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本と音楽とねこと

「子供を殺してください」という親たち

押川剛,2015,『「子供を殺してください」という親たち』新潮社('16.11.8)

 病識のない精神疾患およびパーソナリティ障がいをもつ子が、自室に引きこもり、親に対して壮絶な暴力を振るい続ける事例の数々に戦慄する。
 ケア付きグループホームなど退院後の受け皿も整備されないまま、精神保健福祉法が改正され、自傷他害の怖れがある者の精神科病院での長期入院が困難となった。サイコパスは、退院するとさらに壮絶な暴力を振るい続ける。
 病院は、処遇困難な重症の患者ほど、早期に退院させようとする。その手続きに精神保健福祉士が積極的に関与しているとは、なんと嘆かわしいことだろう。
 不治の病というものがある。それには、こころの病気も含まれる。いかに親の子への養育態度に問題があったとしても、一生子に暴力を振るわれ続け、殺されないとも限らない、そのような責を親に課してはならない。
 自傷他害の怖れがある者は、その怖れがなくなるまで、根気強く、病院内で「治療」し続けるしかない。それか、屈強な複数の「世話人」がいざとなれば力で制圧できる態勢を組み、グループホームで処遇するしかないことを再認識すべきである。本書を読んで、サイコパスを安易にノーマライゼーションの対象としてはならないことを痛感した。

目次
第1章 ドキュメント
第2章 「子供を殺してください」という親たち
第3章 最悪なケースほどシャットアウト
第4章 精神保健福祉法が改正されて
第5章 日本の精神保健分野のこれから
第6章 家族にできること、すべきこと

自らは病気の自覚のない、精神を病んだ人を説得して医療につなげてきた著者の許には、万策尽きて疲れ果てた親がやってくる。過度の教育圧力に潰れたエリートの息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いし、ゴミに埋もれて生活する娘…。究極の育児・教育の失敗ともいえる事例から見えてくることを分析し、その対策を検討する。現代人必読、衝撃のノンフィクション。

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