「家族」に向けられた「自由への問い」への回答は、被抑圧者としての女性の、とくに家父長制的家族制度からの解放、血縁・婚姻関係にもとづかない生活共同体の可能性の模索、以上の二点におおむね集約されると考えるが、本書の論点もほぼその枠内で展開されている。
どうでも良い内容の論考もあるが、それはこの手の企画本の場合、しようがないのだろう。
目次
対論 新しい「親密圏」を求めて
1 考察「公/私」の問い直しから
消極的・積極的自由論の手前で
新しい家族が求める「自由」―家族法の視点から
2 問題状況 女性にとって「親密圏」とは
「権利」意識と親密圏の自由
記憶と自由の予期―アメリカ史における黒人女性の語り
ドメスティック・バイオレンスが法に問いかけるもの―家族における個人の尊厳・自由の要請とその基盤
3 構想 新しい自由の胎動
自己尊重とはどのように形成される感情か―親密圏のなかでつむぐ記憶がもたらすもの
ジェンダー家族と生・性・生殖の自由)
家族は、近代社会システムにおいて、公私二元論を前提に養育とケアの場として愛のイデオロギーの下に語られ、そこではとりわけ女性への抑圧と不自由が温存されてきた。しかし同時に、多様なかたちと実践をとおして、家族的なるもの、あるいは「親密圏」は、自由が育まれる豊かな可能性の場ともなってきたのではないか。そうした両義性と矛盾を見つめながら「家族」を論じることで、本書が構想するのは、従来の「自由」概念それ自体の不自由さを克服する自由論である。複数領域の研究者だけでなく、法律等の実務家もまじえ、多様な視座からアプローチする。
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