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本と音楽とねこと

日本が壊れる前に

中村淳彦・藤井達夫,2020,日本が壊れる前に──「貧困」の現場から見えるネオリベの構造,亜紀書房.(9.5.2021)

 コロナ禍で加速した生活困窮者の増加。それが、「ネオリベラリズム」の席巻による雇用の劣悪化によるものでもあることを語りつくす。
 中村淳彦さんは、性風俗と介護現場の幾多のルポルタージュで知られているが、「店舗型風俗」が市街地から一掃され、「派遣型風俗」や「パパ活(売買春)」に置き換わったことが、さらなる女性の貧困化や性暴力被害リスクの上昇につながったことが正しく指摘されている。
 法定労働時間分働けばじゅうぶん暮らしていける賃金の保障と、稼働できない場合の最低生活保障が実現されなかったことが、現在の惨状につながったことがよく理解できる内容だ。

学費のため風俗に走る女子大生、貧困地域で蔓延する主婦の売春、低賃金で部品のように働かされる介護現場。「貧困」は社会のいちばん弱い部分を直撃する。バブル崩壊から日本社会は転げ落ちはじめた。終身雇用、労働組合のあり方、すべてが時代遅れとされ、ネオリベ(新自由主義)と自己責任論が社会を席巻した。そこで犠牲になったのは、主に女性たちと若者。そして、いま中年男性が狙われている。国が決めたマクロな政策はときに末端の人々を壮絶な現実に陥れる。あらゆる場所の民営化、効率化、非正規雇用化は、必然なのか?社会も個人もネオリベ化は避けられないのだろうか?衰退途上国・日本の現状を徹底討論したノンフィクションライターと政治学者による平成30年史。そして未来は?

目次
プロローグ 新自由主義とは
1 コロナ禍が浮き彫りにした見たくなかった現実(閑散とした歌舞伎町;コロナ禍で見えてきたもの ほか)
2 コロナがなければ、中年男性が死ぬはずだった(負担を押し付けられた平成の女性たち;政治がつくりだす貧困 ほか)
3 どうして団塊の世代だけが恵まれるのか(AV業界もネオリベの嵐;団塊の世代モデルの福祉政策 ほか)
4 分断をこえて、ポストコロナを生きる(平成に流れた壮絶な血;ヤクザと風俗を抹殺したいのか? ほか)

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