本書では、ブレイディさんお得意の軽妙洒脱なエッセイではなく、けっこう骨太な論考が展開されている。
エンパシー、とくにコグニティブ・エンパシーとは、特定の強者に隷従し自己を喪失することなしに、「他者の靴を履く」想像力をもつ能力のことだ。
「ブルシット・ジョブ」で知られるデヴィッド・グレーバーの著作や講演からの引用が多いが、次の一節はとても重要だ。
人間は互いをケアすることで生き延びてきた。それがわたしたちの本性だとすれば、他者をケアすることは人間に帰ることだ。ブルシット(まやかし)からエンパシー(ケア)へ。それは人間を人間化することであり、経済も社会もその周辺に構築されなくてはならないとグレーバーは主張した。
(p.224)
本書は、自らの尊厳のためにも自由を喪失しないこと、かつ、そのためにも他者への想像力をもち続けること、このことの大切さを教えてくれる。
“負債道徳”、ジェンダーロール、自助の精神…エンパシー(意見の異なる相手を理解する知的能力)×アナキズムが融合した新しい思想的地平がここに。
目次
第1章 外して、広げる
第2章 溶かして、変える
第3章 経済にエンパシーを
第4章 彼女にはエンパシーがなかった
第5章 囚われず、手離さない
第6章 それは深いのか、浅いのか
第7章 煩わせ、繋がる
第8章 速いシンパシー、遅いエンパシー
第9章 人間を人間化せよ
第10章 エンパシーを「闇落ち」させないために
第11章 足元に緑色のブランケットを敷く
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