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本と音楽とねこと

「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本

吉里恒昭,2024,「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本,日本実業出版社.(7.10.24)

メンタルヘルスの専門家がイチから解説!心と体の結びつきから考える注目理論の“役立つ”入門書。

 「ポリヴェーガル」とは「多重迷走神経」のことで、交感神経、腹側迷走神経複合体、背側迷走神経複合体、以上三つの自律神経系によって成り立つ。
 本書では、交感神経が赤、腹側迷走神経複合体が緑、背側迷走神経複合体が青、以上の三色で表記されている。

 交感神経は、「動く、活動する」ときに働く神経で、アクセルを踏む役割を担う。
 腹側迷走神経複合体は、「安全(感)、安心」につながる神経で、穏やかにブレーキを踏む働きをする。
 背側迷走神経複合体は、「止まる、休む」ときに働く神経で、ブレーキを踏む役割を担う。

 わたしたちは、自己を観察するメタ自己の観点をもたなければ、生活、人生上の問題や苦悩にうまく対処できずに、出口なしの状態に陥る、言ってみれば、ドツボにハマることがある。

 それは、交感神経が活性化し、過活動状態に陥って、焦りや怒りが高まった状態、もしくは、背側迷走神経複合体が活性化し、抑うつ、自責感情が高まった状態である。

 ポリヴェーガル理論では、赤か青かの状態に陥ったからだを、緑──腹側迷走神経複合体を活性化し、穏やか、静謐な状態にもっていくことを目的とする。

 穏やかに活動する(赤緑)、穏やかに休む(青緑)が理想とされる。

(p.207)

 思春期になり、成人期に入る頃になっても一緒です。それまでは、主に家族が協働調整をしてくれる対象であったのですが、次第に学校の先生、仲良しの友だち、先輩や後輩、習い事の先生やコーチなど、さまざまな人たちの安心や安全の空間に自分がいることで、緑の神経が育っていくでしょう。
 それぞれの人たちが緑の神経でいる場面に「一緒にいる」「一緒にする」ことで、緑の反応が移り協働調整されていくことでしょう。その人たちが、なんとなくいつもそばにいる、後ろで見守ってくれている、相談したら「こう励ましてくれるだろう」「こう応援してくれるだろう」――そのような感覚になっているかもしれません。
(pp.210-211)

 ポリヴェーガル理論は、これまで「こころの問題」とされてきたことを、自律神経──からだの問題として捉えなおした点に価値がある。
 実体のないこころを制御するのは難しいが、からだであれば制御できる可能性は大きく高まる。

 また、こころの問題がからだの問題に転換されることで、問題や苦悩が「こころの外部」に投げ出され、問題や苦悩をこじらせ、怒りや抑うつかの両極に陥り苦しむのを回避できる可能性の芽も出てくる。
 北海道、浦河の、精神障がい者の生活共同体、「べてるの家」において、統合失調症の当事者が、妄想、幻覚、幻聴を他者に語ることで、それらの問題を自らの外部で出し、例えば、「幻聴さんとうまく付き合う」技法を生み出したことを想起する。

 同じ文言をコピペして使い回しする安易さが気になったが、本書もしくはポリヴェーガル理論により、根深い苦悩が緩和され楽ちんに生きていける人が増えれば、それは大いに歓迎すべきことである。

 ポリヴェーガル理論は使える「生の技法」だ。

目次
序章 悩みをこじらす人の共通点
第1章 「ポリヴェーガル理論」とはどういう理論?
第2章 3色についての理解を深めよう
第3章 ポリ語で生活してみよう
第4章 緑を増やす方法
第5章 悩み方や体験を変えよう
第6章 体にもっと関心を


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