アニー・エルノー(堀茂樹訳),2024,若い男/もうひとりの娘,早川書房.(7.13.24)
「若い男」―30歳近く年下の男との恋愛にのめり込む「私」。彼の若さがもたらす快楽を味わい、その激しい嫉妬を悦ぶ。二人の欲望は高まり、やがて…。「もうひとりの娘」―親の愛を独占できる一人っ子だと思い込んでいた幼い頃の「私」。だが、自分が生まれる前に亡くなった姉がいたことを盗み聞きしてしまう。姉の影は「私」の人生につきまとい…。個人的な記憶を掘り起こしながら、社会的な抑圧と不平等を明らかにし、2022年にノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノー。その半世紀にわたる作家活動の精華を示す作品集。
「若い男」では、親子ほどに年齢が離れた恋人とその心象風景を描いた佳作。
エルノーの鋭い観察眼がひかる。
「もうひとりの娘」では、エルノーが生まれる前に死んだ姉をめぐる省察が延々と続く。
生まれながらに与えられた「存在のキズ」に向かい合う真摯な思索が印象的だ。