エナゴの学術メモ

200万人を超える研究者の学術出版をお手伝いしてきた編集部がお役に立てる情報を配信してまいります。

論文投稿ステータスの意味~査読のプロセス~

2022-05-17 09:56:25 | エナゴアカデミー人気記事

こんにちは、エナゴアカデミーです。

論文の投稿先のトラッキングシステムに表示されるステータスがずっと変わらないけど、大丈夫かな…"With Editor"やら"Reviewer Invited"ってどういう意味?と不安に思われる研究者さんが多いようです。

一つ一つのステータスがどういう状況を指すのか、解説してみたいと思います!投稿先によって様々な呼び名がありますが、プロセス自体はどこも同じなので、参考になさってください。


1. Manuscript submitted: 原稿が著者によって正常に投稿され、承認されたことを意味します。この後、ジャーナルの社員によるフォーマットのチェックを経て、編集者に割り当てられます。

2. Editor Invited: このステップは、ジャーナルによってあったりなかったりしますが、原稿が編集者に割り当てられ、編集者の受理を待っている状態を指します。

3. With Editor: 担当編集者が決定したことを指します。編集者が原稿の一次審査を行い、ジャーナルにふさわしいと判断した場合、査読に回されます。原稿がジャーナルに合わない場合や、ジャーナルの基準に満たない場合は、査読されずに返却されます(俗にいう、Editor's kick)。この場合、次のステータスとして「Decision in Process」と表示され、数日後に著者に不採択通知が来ることが多いです。

4. Reviewer Invited: こちらも投稿先によってあったりなかったりのステップです。編集者は、スクリーニングを通過した論文の査読者を探します。Reviewer invited(査読者招請)というステータスが表示されている場合は、査読者に査読依頼が送付され、まだ受理されていないことを意味します。ステータスが「Reviewer Invited」と表示された後、「With Editor」に戻ることがあります。これはおそらく、査読者が依頼を辞退したことを意味し、他の査読者を探す段階だと考えられます。

5. Under Review: 査読中であることを意味するステータスで、最も時間を要するステップです。往々にして多忙な査読者が詳細な精査と評価を担当します。 所用時間はジャーナルや分野によって大きく差があり、1~4ヶ月、それ以上かかることもあります。

6. Required Reviews Complete: すべての査読が完了し、編集部が受理したことを意味します。編集者が追加の査読が必要と判断した場合、「査読中」に戻ることもあります。追加の査読完了後、ステータスは "Required Reviews Complete" に戻ります。

7. Decision in Process: 判断中。編集者が査読者のコメントと自身の意見を合わせ、採択の最終判断をします。このステータスが表示されると、通常、数日後に著者に編集判断が通知されます。このステータスのまま数週間経ち、何の連絡もない場合もあります。これは、編集者が多忙で、通知の順番待ちかもしれません。

8. Revise: 査読者によって著者に大幅または軽微な修正(major revisionまたはminor revision)を依頼し、投稿が著者のもとに返送されことを示すものです。修正に数週間から数ヶ月の期限を与えられることが一般的です。事前に編集者に書面で締め切りの延長を依頼することも可能です。著者は、修正した原稿を、査読者のコメントに対するポイントごとの回答とともに提出します。

9. Revised Manuscript Submitted: 著者が修正済みの文書を提出したことを示します。ジャーナルによるフォーマットチェック待ちです。

10. Author Declines to Revise: これは、著者の側が、修正した論文の投稿を希望しないことを示しています。つまり、著者は提案された修正をせず、論文を取り下げたいという意思表示です。

11. Completed Withdrawal: 著者が論文の取り下げを希望する場合、取り下げの申請をし、編集者がそれに同意すれば、取り下げ手続きは完了となります。他のジャーナルに投稿する場合は、必ず編集者から取り下げの同意メールが来てからにしましょう。

12. Completed Reject: 原稿の最終判断は "accept" か "reject" の2択で返答が来ますが、編集者が修正内容に満足できない場合、論文がリジェクトされます。このステータスは、提出された修正版原稿に基づいて、編集者が論文のリジェクトを最終的に決定したことを示しています。

13. Completed Accept: 著者が行った修正に編集者が満足し、最終的な受理を決定したことを意味します。

 

すべてのジャーナルが同じステータス表示ではないですが、トラッキングシステムのさまざまな疑問に、少しでもお役に立てたら幸いです。

関連記事:

査読コメントへの効果的な返答レター(Response Letter)の書き方 - 学術英語アカデミー (enago.jp)

査読レポート を書いているのは誰だ? - エナゴ学術英語アカデミー (enago.jp)

 


査読が遅い……?投稿したジャーナルへの催促のタイミング

2022-05-17 09:12:44 | エナゴアカデミー人気記事

こんにちは、エナゴアカデミーです。

投稿したジャーナル誌から返事を待つ時間は、みなさん長く感じるようで、「査読 遅い」「査読 催促」などのキーワードでたくさん検索されています。論文の審査に要する時間は、分野によって様々で、1か月待たずに返信が来るジャーナルもあれば、1年以上待たされることも稀にあるようです。

今回は、段階別に、編集者の時点で不採択となってしまう”エディターキック”に要する時間、また査読者にまわってからの返答時間について調べてみました。

 

結論から申しますと、分野・ジャーナル誌によってバラバラです。

バイオ系は比較的テンポが速く、Genome Researchは30日前後でエディターから返答をするとページに記載がありました。数学や言語学系は査読に回ってから半年以上待たされることもしばしばのようです。(参考:数学rnoti-p1607.pdf (ams.org))既に投稿済みの論文に関してはオンラインステータスを確認しましょう。

それぞれの表示ステータスの意味と投稿のプロセスについての過去記事はこちら。

投稿を検討しているジャーナルの待ち時間を調べる場合は、「ジャーナル名」×「turnaround time」などと検索すると、何らかの参考になる情報が出て来ると思います!

 

有力な雑誌は、投稿される論文の数が多いため、出版までの期間が長くなる傾向にあります。また、定期出版物(毎年、隔年、四半期ごとなど)は、出版期間や、それに伴う審査期間に影響します。審査に通ったからといって、すぐに出版されるとは限りません。出版待ちのリストがあり、その号のテーマによって選別されることもあります。
ジャーナルを見極めるのに、論文を書くのと同じくらいの労力が必要という説も…(苦笑)。

 

編集者の決定をどの程度待てるかは、専門分野、投稿した雑誌の質、卒業や昇進などの申請を目前に控えた緊急事態など、さまざまな要因によって決まります。

審査にかかる時間の目安は、ジャーナルのウェブサイトに記載されていることもありますが、何の情報も出ていない場合、そのジャーナルで発表された論文をチェックし、どこかにデータがないか調べてみましょう。オンラインで公開された論文はほとんどの場合、投稿日、採択日、公開日を明記しています。投稿日から採択日までが審査にかかった時間ということになります。

 

編集者からの返事は1~2ヶ月待ってみましょう。晴れて査読に回った論文のステータスに変化が見られない場合、4か月は待つことをお勧めします。その後も、何も返事がない場合、ジャーナル編集者に対して丁寧な催促メールを書いても失礼にはあたりません。編集者自身も現役の研究者だったり、過去に研究者だった人で、投稿後に連絡を待つ著者の不安はよく理解しているでしょう。

以下はジャーナル編集者への問い合わせメールの例文です。

Dear [(性別・ポジションなどが分かる場合は敬称も)編集者の氏名],

This is with regard to our submitted manuscript, [問い合わせ番号], titled “論文のタイトル,” submitted on [投稿日] for consideration as a [種類(原著論文/Case Reportなど)].

We have not received any updates regarding the status of our manuscript in the review process. Could you inform me on when we can expect notice of the editorial board's decision?

Thank you for your time and consideration. We look forward to hearing from you.

Sincerely,

[著者名と連絡先]

お役に立てれば幸いです。


めざせ、査読突破!(論文タイトル編)

2022-05-16 15:16:06 | エナゴアカデミー人気記事

いよいよ論文執筆という段階で、いきなり立ちはだかる、タイトル問題。

本文の内容にイメージが直結するような、明快なタイトルをつけること。加えて、より閲覧数を高めるために的確なキーワードを盛り込むことが肝要です。

そこで今回は、効果的なタイトルの付け方をご紹介します!
 
 
エナゴアカデミーのサイトで紹介されている例をご紹介すると、

悪い例 

A Study of the Safety and Efficacy of 10 mg X Drug as a Smoking Cessation Intervention for People who Smoke More than 10 cigarettes per day(仮訳:1日に10本以上のタバコを吸う人が禁煙介入として薬剤X 10mgを摂取する安全性と効果に関する調査研究)

長い!分かりにくい!

このタイトル中のキーワード「Smoking Cessation(禁煙補助薬)」を含む場合、喫煙者が対象の研究ということは自明ですので、People who Smoke~は不要です。

良い例

Safety and Efficacy of 10 mg X Drug as a Treatment to Aid Smoking Cessation(仮訳:禁煙補助薬X 10mgの安全性と効果)

具体的かつ明快なタイトルになりましたね!

 

ポイントとして、

良いタイトルは

  • 具体的
  • 本文への興味をそそられる、
  • 研究の核となる内容を強調している
  • キーワードが含まれる

悪いタイトルは

  • 長すぎる
  • 分かりづらい
  • 略語や専門用語が使われている
  • 同じ語句の繰り返し

ちなみに、上記のタイトルに使われたキーワード「Smoking Cessation」をGoogle Scholarで検索してみると、約116万件もヒットし、関心の高い研究分野だということがわかります。

初見の読み手を意識しつつ、スッキリと的確な表現で、査読者の心を掴みに行きましょう!


論文の査読のあり・なしの見分け方

2022-05-16 14:06:05 | エナゴアカデミー人気記事

こんにちは、エナゴアカデミーです。

今回は、読んでいる論文が「査読」を経ているのか、見分ける方法について解説します!
すぐ判断できる3つの方法をご紹介します。

① 論文の”ココ”を見る

↓↓↓ 以下のような要素が記載されている論文は査読済みだと分かります ↓↓↓


提出日、採択日(Received、Accepted、Publishedの記載)
〇その他、著者のAffiliation(組織や大学の部門名)、Methods(研究方法)、Results(結果)、Bibliography(参考文献)のセクションの有無

 


② ジャーナルのウェブサイトを見る

例えば、The New England Journal of Medicine(NEJM)のウェブサイトには、査読済みの論文を出版していると記載されています。


”About us”のページなどをチェックしてみてください。

※注意※
査読付きジャーナルに掲載された記事すべてが査読を通過しているのではないので、注意しましょう。

(例:Editorial、eLetter、Book Review、Reportなどは査読済論文ではありません)

 

ちなみに、以下の有力ジャーナル誌のAboutページには査読ありの論文を掲載していると記述があります。

The New England Journal of Medicine(NEJM)
The Lancet
Nature
Science
Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)
PLOS One
Annals of International Medicine
Journal of Biological Chemistry(JBC)
The Journal of the American Medical Association(JAMA)

 

 

③ Scopusは査読済み

Scopusは査読済み文献のみのデータベースですので、Scopus経由で見つけた論文は査読ありと判断できます。

 


上記3つの方法で確認しても分からない場合は、査読つきでないことが予想されますが、検索サイトに直接「Peer Reviewed」と論文名でサーチすると、さらに情報が得られますので、確認してみてもいいかもしれません。

 

人命に直接関わるような研究の発見など、発表が急がれる論文は査読なしのオープンアクセスで投稿されることが多く、一概に【査読あり論文=より良い論文】ではありませんが、査読を経た論文が、より信頼性が担保された情報であることは確かです。しかし、一度投稿された論文が撤回された!ということも結構あります。引用する論文はチェックが必須ですね(;´・ω・)

(関連記事:過去最大の 論文撤回 が発生 - エナゴ学術英語アカデミー (enago.jp)

 

 

 


無料ウェビナー視聴感想:英語での論文執筆をマスターする

2022-05-10 13:14:26 | エナゴアカデミー人気記事

先日エナゴアカデミーで無料視聴できるウェビナー、「英語での論文執筆をマスターする」で講師の田口善弘教授がおっしゃった言葉が印象的でした。

「出版されない研究は存在しないのと同じ」

非英語圏の研究者にとって、いくら不公平であっても、主要なジャーナル誌は全て英語で書かれ、そもそもの引用データベースも英語で書かれた論文しか記録されないという事実。残された道は、英語で論文執筆することの一択です。どうせマスターしなきゃいけないなら、効率よく学びたいものです。

41:00 以降の文法解説も、後日改めて詳細をご紹介したいと思いますが、今日は、田口教授が話された部分から「なるほど!」というポイントをピックアップしてお伝えします。

 

アブストはミニ本文

アブストラクト(要旨)は本文のミニ版を書くイメージで。略語、専門用語を避けて。他の物を見ながら読まなくてはいけないようだと、考えが停まってしまう。

 

イントロダクションは欠けを書け

イントロダクションは先行研究の現状を書き、その現状に○○が欠けているので、本研究で明らかにする、とう流れで書くとスッキリ書ける。

 

ディスカッションで何を述べるのか

ディスカッションに何を書けばいいか、またリザルト(結果)との違いは?結果を見てどういうことが言えるか、また、予想外の結果については、論理的な解釈を述べる部分がディスカッションです。

 

単数・複数の落とし穴

例)A can of beans sits on the shelf. 

A canの後ろのbeansに引っ張られて動詞をsitと間違いがちですが、主語と動詞の間の語句(beans)は、主語の数を変更しません。要注意。

例2)A pencil and an eraser make writing easy.

上記の場合はpencilとeraserセットで複数と考えるのでmakeはsがつきません。

 

接続語のバリエーションを持つべし

コントラストを強調する語…In contrast, Yet, Nevertheless, Although, However, On the contrary, While, Despiteなど

原因を示す語…For, Because, Since, Asなど

似たデータを比較する語…Similarly, Likewise, Both A and Bなど

結果を示す語…As a result, As a consequenceなど

 

その他にも役立つTipsが満載でした!

↓↓↓ウェビナー視聴はこちらから↓↓↓

英語での論文執筆をマスターする 講師:田口善弘教授

 

 

~上記ウェビナー講師のご紹介~

田口善弘 教授(中央大学理工学部物理学科)

1961年東京生まれ。1988年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。理学博士。2006年より現職。専門はバイオインフォマティクスおよび非線形物理学。30年以上の研究を通じて100を超える論文を発表。また過去5年間だけでも『BMC Medical Genomics』『Medicine (Lippincott Williams & Wilkins journal)』『PLoS ONE』『IPSJ Transactions on Bioinformatics』など50以上の国際ジャーナルにおいて査読を担当。バイオインフォマティクスの国際学会「InCob」では、2014年と2017年に最優秀論文賞、 2018年には最優秀口頭発表賞を受賞するなど数多くの受賞歴を持つ。著作も多数あり、『砂時計の七不思議』では第12回講談社出版文化賞科学出版賞を受賞。