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『ジェフ・ミルズの使用機材について』

2005-10-23 13:48:52 | ■minimal techno
デトロイトの奇才、ミニマルテクノのパイオニアであるジェフ・ミルズの生み出すサウンドは、シンプルでありながら非常に独特の曲構成・音質を我々に感じさせる。そんな彼が、どのような機材を使用して様々なサウンドを紡ぎだしているのかはファンならずとも興味のあるところだ。

ROLAND TR-909と彼とは切っても切れない関係で、DJライヴの際、常にブースにセッティングされることは周知の事項であるが、他の制作機材はどのようなものを使っているのか。ここで数年前(恐らく1997年)に掲載された雑誌(サウンド&レコーディング誌)のインタビューから、彼が当時、使用していた幾つかの機材を紹介してみよう。



まず音源であるが、
(1) OBERHEIM M-1000
(2) WALDORF Pulse
(3) SPECTRALAUDIO Pro Tone
(4) KORG X3

サンプラーには12ビッドのラフなサウンドがいいらしく(5)AKAI S-612を4台使用。

シーケンサーは(6)YAMAHA QX21、リズムに変化を付けたい時には(7)DOEPFER MAQ-16を使用する。

ミキサーに(8)YAMAHA Pro Mix 01(9)TASCAM M-2600

レコーダーに(10)ALESIS ADAT、そして音に深みを出したい時には、(11)TASCAMのアナログ・レコーダー48を使うらしい。いづれの機材もごくシンプルな操作性のもので、シンプルなセットで選択肢の少ないことは音作りには良い傾向だとしている。



スタジオの作業環境については、敏速に、快適に作業できるセッティングを保ち、なおかつリラックスした雰囲気作りを心がけているそうだ。方法として、全ての機材のスイッチを全部つけっぱなしにしておく。そうすることによって精神的に落ち着いた気持ちになれるらしい。ちょっとしたシーケンスを流しっぱなしにしたりしているうちに、自然と曲作りの方へ流れる事が多いのだという。

具体的な作業方法において、彼はコンピューターを使わないらしい。ADATをメインに数少ないシーケンスで音のヴァリエーションのみで曲を展開させ厚みをつける。この作業方法は彼流のミニマリズムを表現する方法ということだ。意外にもアナログライクな機材や作業方法は、実際には暖かみや深み、厚さを出すといった音に対するこだわりから来ているものなのである。



ここまでが、当時の記事に書かれていた事柄である。そして、つい最近、2005年11月号のサウンド&レコーディングで、彼が現在の使用機材について言及しているが、ほとんど機材が変わっていないことに驚いた。

彼はいまだにコンピューターを使用せずに、YAMAHA QX21というシーケンサーを使って作業している。私もこのシーケンサーを使用したことがあるが、ものすごくシンプルな機材で、現在となっては原始的ともいえるレベルだ。



それから、幾つかの機材を列挙している。

・KORG Wavestation × 2台
・KORG N364
・KORG X3
・WALDORF MicroWave XT
・OBERHEIM
・TASCAM DA-45HR


・ALLEN&HEATH GL2400(ミキシング・コンソール)
・YAMAHA NS-10M(モニタースピーカー)
・MSP10(モニタースピーカー)
・GENELEC(モニタースピーカー)



ここで、確認できるのは、KORG X3は当初からお気に入りで今でも愛用しているということ。ストリングス系の音を絶賛している。ベールラインに多様するというOBERHEIMは、今回機材の型番を明かしていないのだが、恐らく同じ機材であろう。

ある種の限定された条件の中で作業することが好きらしく、その方がよりシンプルに作曲が行えるとのこと。こういった環境の中で作業し続けてきたことによって、よりパーソナリティやキャラクターを出せるということらしい。5分間という限られた世界の中でアイディアやコンセプトを表現するために、音楽をよりミニマルに、よりシンプルにするように心掛けるのが、彼のトラックメイキングへの姿勢である。