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『教理対話』目次10「聖書のみ」の主義では失敗する

2022-11-12 13:59:49 | 日記
目次 10「聖書のみ」の主義では失敗する

神父 
昨日は御ミサにお出でになりましたか?

青年 
ええ、参りました。ですが、神父様、何だか良くわかりませんでした。教会の教えを理解することよりも、聖祭の意味を知ることの方が、ずっとむずかしいですね。

神父 
まあ、余りせかないで下さい。この講義が進んでゆけば、そのうちに御ミサの意味がわかりますよ。

青年 
そうならいいです。

神父 
教会が、信仰または道徳に関する問題を決定する場合、教会の宣言は不謬でなければならない、ということがわかりましたね。不謬でないとすれば、「教会に聴け」というキリストの御言葉に従う無数の人は、誤りに導き入れられるかもしれません。この不謬性が必要であるということは、十分お判りですね。

青年 
ええ、神父さん、もし教会の言葉が最終的且つ不謬のものでないとしますと、多くの人を同じ信仰に一致させるということは、とてもできません。国には最高の法廷があり、国民はこれに論争の問題を持ち出して最終の決定を仰ぎ、訴訟の関係者はその判決に従わなければなりません。教会においては、こういう法廷は尚更に必要だと思います。論争になる問題が多いのですから。

神父 
その通りです。意味のぼんやりした憲法の条文の正しい意味を最高裁判所が決めてくれなければ、どうなりますか? 政府が憲法の写を各家庭に配り、人々がこれを読んでその解釈するままにこれを適用して構わないということにしたら、どうなりますか。その或る条項に幾百という違った意見が存在し、国家がすべての法律家やその他の人々に、そういう意見を支持させ、また行動させるとしたら、どうでしょう。全くいけないことになります。もはや国家はなくなって、国内に大混乱が起ります。

青年 
ほかの教会はそういう宗教上の原則(権威ある解釈)を守っていますか?

神父 
大概守っています。正教会(ギリシヤ)と高教会 [1](アングリカン)は、その信仰箇条の大部分──これはカトリックと一致しています──を、初代の六回の一般公議会の決定に従って守っています。ですが、この会議は教皇やその代理者が主宰していたものです。ルーテル派の人々は「聖書のみ」の主義を信奉していますが、その大部分の人は自分達の信仰を、教区附属学校が明確に教えている一つの説に引き下げてしまいました。その他の人は聖書を家庭におくということを信仰して、すべての人にこれを自分勝手に解釈させています。この不合理な主義は、キリスト教を数限りない分派に引き裂いてしまったのですが、今も相変らす主張されています。この主義に基いて行動していると、牧師でさえ自分の正しいことがはっきりわからなくなります。つい先ほど、私は或る牧師の協会の会合に出席しまして、聖書に対するカトリック教会の態度を説明しました。そして、その人達に二三の問題を尋ねてみました。聖書を手に取り上げて、皆さんはこれは神の御言葉であるということを信じますか、と尋ねました。九つの異った教派を代表する牧師さん達は、「そう、私達は信じます」といいました。それで私は「私もこの書は始めから終りまで神の御言葉であることを信じますが、どうしてあなた方にもこの本全体が信じられるのですか、教えて下さい」と答えましたところ、「どうしてですか」とその人達は尋ねました。私はこれに、「そうですね、あなた方は、どの書物の内容が神感によるものであるということを、カトリック教会の権威によらないで、ほかの方法で証明して下さいませんか? ところで、カトリック教会がこの書物が神感によると主張する場合、カトリック教会は不謬であるかないかのどちらかです。もし不謬でないとしますと間違いをしているかも知れません。教会が不謬でないとすれば、あなた方には、この書物が神の御言葉であるかないかということがわからないはずです」と申しました。

青年 
そのお話にその人達はどういいましたか?

神父 
その中の一人は、「なあに、神感を受けているということは、その文章の特徴を見れば、はっきりしている」と云いました。私はこれに答える代りにその本を開いて、旧約聖書の中から、外観上、悪魔が作ったのではないかと思われるところを読みました。そして、マホメット教徒が神感によってできたと思っているコーランの中にも、非常に教訓になる文がある、ということを話しました。モルモン教信者が尊んでいる「スミスのお告」も同じようなものなのです。そういう書物が「神の御言葉」であるとは、その牧師達は決して認めはしないでしょうが。

青年 
それで、牧師達はどう云いましたか。

神父 
黙っていました。ですが、その中の一人が、話題を転じようとして、多分、私をやりこめようとしたのでしょうが、カトリックの正典に「偽経」は入ってないか、と尋ねました。

青年 
神父さんは前にも、聖書のそのことをお話しになりましたが、「正典」(カノン)とか「偽経」(アポクリファ)とかいうのは何ですか。

神父 
プロテスタントは、旧約聖書中の或る部分は神感によるということが疑わしいとし、その部分を「偽経」だと考えています。それから、「正典」というのは、教会が聖書の内に入ると公認した書き物の、目録乃至はその集成のことです。

青年 
それで、神父さんはどうお答えになられたのですか?

神父
プロテスタントの人達は、もしカトリック教会の不謬性を否定するならば、プロテスタント聖書は全部「偽経」になる。なぜなら、プロテスタントの人達が神感の書であると認めている書を神の御言葉であると断言したと同じ声が、私達のほうの他の七書も同じように神感によるものであると断言しているのですから、と私は申しました。辻つまを合せるためには、彼等は聖書全体を認めなければなりません。

青年 
彼等は納得しましたか?

神父 
それ以上質問しませんでしたから、納得したようです。ですが、私が少し質問をしました。

青年 
何を質問されたのですか?

神父 
先ず第一に、あなたがたは「聖書のみ」が信仰の基準であると、本当に信じているのかと尋ねました。その中の三人が「その通りです」と答えました。それで、私はなぜあなたがたは聖書通りに土曜日を守ろうとせずに日曜日を守っているのか、なぜ救霊のため洗礼が絶対的に必要であることを信じないのか、どうして聖油で病人をきよめないのか、なぜ離婚後の再婚を認めるのか、聖ペトロが聖書の「私的解釈」に反対して宣言したことはどういう意味であるか(ペトロ後一〜二〇)、聖パウロが、我等より受けし伝えを守るべしといったのはどういう意味か(テサロニケ後二ノ一四、三ノ六)、「教会に聴け」(マタイ一八ノー七)とか「汝等を軽んずる人は我を軽んずるなり」(ルカ一〇ノ一六)というキリストの御言葉はどういう意味か、自分の教えに違うとは天よりの使であれ詛われよと言った聖パウロの言葉(ガラチア一ノ八)はどういうことか、謬りより教会を守らんというキリストの明白な御約束に反して、教会が謬りに陥る、ということはどうして云えるか(マタイ一八ノ二〇、マタイ一六ノ一八、ヨハネ一四ノ一六、ヨハネ一六ノ一三、チモテオ前三ノ一五)神の御名において罪を赦す権能をどういう根拠で否定するか(マタイ九ノ六、ヨハネ二〇ノ二三、マタイ一八ノ一八)、なぜ婚姻を秘跡としないのか(エフェゾ五ノ三二)、などと尋ねました。

青年 
あなたは彼等が聖書に従っていない点を指摘なさったのですね。

神父 
それから私はその牧師達に向って「あなた方が九つの相異る教派の牧師さんとして、ここに出席していられることは、とりも直さず、皆さんが聖書を同じように理解していられない、ということを表しています。また、皆さんの議論により、皆さんは、夫々御自分の信仰を正しいと確信してはおいでにならないということがわかります」と申しました。

青年 
それに対してその人達はどう云いましたか。

神父 
ひとりの人は、「それはそうですが、研究の点では、私達は真面目で率直です。私達は意味の明白でない事について、意見を交換するために会合をします」と云いました。私は微笑して、「それではあなた方が意味を確信しないのでしたら、神感の書物があった所で何の役にたちますか。キリストは「真理を知らしむべし」と明白に申され、「求むべし」とは云われませんでしたよ」と答えました。そして、私は、あなた方は呼名はともかく、どうしても教皇のような人が必要であると話しまして、「これ我が体なり」というキリストの短いお言葉の正しい意味を、一人一人に尋ねてみましたところ、九人の間に全く違った四つの意見がでました。私は、この点につき正しい信仰は非常に重要です。キリストのおっしゃった意味は御言葉通りであるとしたらどうですか、と注意しておきました。帰る前に、「皆さん、あなた方の『聖書のみに頼り、私的に解釈する』という主義は、たしかに弱点があります。争いのもとです。あなた方は、『誤りにおちぬよう神が守り給う教会に聴け』という主義を尊重なさったらどうですか、その方がずっと安全ではないですか」と私は言い切っておきました。

管理人注
[1] 聖公会には、カトリック的な要素の強いハイ・チャーチ(高教会)とプロテスタント的な傾向を持つロー・チャーチ(低教会)の二つの流れがあるということです。

(目次11につづく)
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