
繰り返すが,春である。サクラだけではなく,スミレやレンギョウ,ハナズオウ[(c)大島弓子],さらには,EやらFやらGやらも[種名は覚束ないので伏せます],とにもかくにもいろんな花が次から次へと咲きはじめる春なのである。地道に暮らしておればやがてこのような春がまた廻ってくるというアリガタサを,とりあえず誰に感謝しようか。しかも本日はすこぶるお天気がいい日曜日であったりするわけだから,これはもう外に出掛けるっきゃない。けれども昨日の土曜に自転車で70kmほどの遠出をして(中山峠~寄~尺里峠~怒田~狩川~小田原~二宮),体内疲労も少し残っているので,今日はごく近所でのんびり済ませることにした。とは申しても,山の方角に向かえば高低差200mくらいはすぐに稼いでしまうのが昨今の悲しい性分であるが。
とりあえずはサクラに義理立てして,最初に白泉寺(秦野市横野:標高298m)の枝垂れ桜を見に行くことにした。本日はヘビーなMTBではなく軽い気持ちでクロスバイクに乗って家を出た。緩やかな登り坂の山里ワインディングロードをクロスバイクでスィーッと滑るように走るのは大変心地よい。道中,あちこちに満開のサクラが咲いている。樹齢を重ねた古木が多く,大きく広げた枝いっぱいに薄淡いサクラの花をまとっている。それが風に吹かれてハラハラと少しづつ散ってゆく,そんな中をゆっくりと走りすぎる。実に自転車日和ではありませんか! 惜しむらくは,ゴルフ場の周辺やその内部に立派なサクラの木が多いのが少々シャクだけれども。
白泉寺の枝垂れ桜は,近年では当地の人気名所スポットのひとつになっているようで,山里のだいぶ奥まった所にあるというのに,私が着いた時の寺院境内は,そうさな,150~200人ほどの大勢の花見客で賑わっていた。ほとんどの皆さんは自動車でお気楽に来ているのでしょう。最近できた広い駐車場が満杯で,そこに入れないクルマが坂道に列をなしていた。来訪者の年齢層は老人70%,子ども連れの家族15%,中年10%,その他5%といったところで,概ね想定範囲内の年齢構成である。なかで,20代前半とおぼしき若いオニイサンたちが乗った袖ヶ浦ナンバーの大型バイク3台がちょっと異質であったが,恐らくは山岳ツーリングの途中で道に迷ったあげく,偶然見つけたサクラの寺にちょっと立ち寄って一休みでもしていたのだろう。
今年はサクラの開花が例年よりも少し早く,既に盛りは過ぎているようだった。今から10数年前,当地に転居した春に初めて白泉寺を訪れたときは,この立派な枝垂れ桜の美しさに家族全員が圧倒されたものだった(もっとも息子は当時まだ2才児であったが)。それ以来ほぼ毎年,春になるとこのサクラを見に来ているが,ここ数年は花見客の隆盛ぶりに反比例してサクラの木がなんだか元気がなくなってきているような気がする。これは例えば地球温暖化のエイキョウなどでは決してなく,あるいは当の桜木の寿命というわけでもなく,恐らくは花見客がチョット多すぎるせいではなかろうかと邪推するのだが,いかがなものでしょうか。はい,余計なお世話ですか。
白泉寺の境内でしばしサクラを愛でたのち,お次は四十八瀬川を越えて柳川(生きものの里),八沢あたりに行こうかとも思ったが,そっちの方面は昨日行ったことでもあるしと方針変更,横野地区の東にあたる菩提マス釣り場方面に行くことにした。そのマス釣り場のある新田集落一帯は以前より私のお気に入りの場所のひとつで,一昨年の秋頃だったかクマが出没したことで一寸騒がれた地区でもある。金目川水系葛葉川の二次支川である新田川は,その付近では河床勾配がやや急になり河道には階段状の堰堤がいくつも作られている。そして流れの両岸には大きなサクラの古木が何本か水面を覆うように並んでいる。標高は約270~300m。こちらはちょうど満開の時期だった。その満開のサクラの下では老夫婦が1組,それとは別のサクラの下に母親と娘2人の家族が1組,いずれもシートを敷いて静かに穏やかにオベントなど食べていた。白泉寺の過剰なまでの賑わい振りに比べると,こちらはいたってノドカなものである。私も少し離れた場所で自転車を降りて一息いれ,暖かい陽差しのなかで咲きほこるサクラを眺めながら持参したひとくち羊羹をたべ,ボトルの水道水を飲んだりしておりました。
その後,新田内の川から離れた上道を通って里に下りていくことにした。道幅はクルマがすれ違えそうにないほど狭いがキレイに舗装されており,南に開けた斜面を横切る大変に眺めのよい道である。盆地中心部の街並みが遠く見下ろせ,さらにその先には渋沢丘陵が緑の帯状に横たわっているのが望見される。
そんな景色を眺めながらゆっくり進んでゆくと,やがて前方から全身フワフワした茶毛に覆われた足の短い犬が,ノコノコと体を揺すりながらこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。おや,なんだかタヌキみたいな犬だなぁ,と思って見ていると,相手の方もふと立ち止まって私の方をじっと見つめた。両者の距離約7~8m。 あれれ,タヌキじゃないか! と気がついて,慌ててカメラを取り出すべく自転車のフロントバッグを探った。
彼のほうも瞬時事態を察したようで,同じように慌てて踵を返し,もと来た道をノコノコと,それでも一応急ぎ足で戻っていった。それがオカシイことに道の脇の叢林や畑の方に入り込むのでなく,そのまま道に沿って下ってゆくのだ。こちらも自転車でその後を追いかけると,やがて道脇の側溝(ドブ)のフタの隙間から中に潜り込んでしまった。遅れて駆けつけた私は,自転車を降りて側溝の隙間から中に向かって,おーい,と呼びかけてみた。
返事があろうはずもない。恐らくドブの隅っこで息をひそめてじっと縮こまっていたのかも知れない。それとも,オカーサンのところに一目散にかけつけて,たったいま出会った自転車に乗った老人のことをドキドキしながら報告でもしていたのかな。いずれにしても,タヌキくんのノンビリ散歩の邪魔をしてしまい,ちょっと気の毒であった。 と,そんな春なのであります。
とりあえずはサクラに義理立てして,最初に白泉寺(秦野市横野:標高298m)の枝垂れ桜を見に行くことにした。本日はヘビーなMTBではなく軽い気持ちでクロスバイクに乗って家を出た。緩やかな登り坂の山里ワインディングロードをクロスバイクでスィーッと滑るように走るのは大変心地よい。道中,あちこちに満開のサクラが咲いている。樹齢を重ねた古木が多く,大きく広げた枝いっぱいに薄淡いサクラの花をまとっている。それが風に吹かれてハラハラと少しづつ散ってゆく,そんな中をゆっくりと走りすぎる。実に自転車日和ではありませんか! 惜しむらくは,ゴルフ場の周辺やその内部に立派なサクラの木が多いのが少々シャクだけれども。
白泉寺の枝垂れ桜は,近年では当地の人気名所スポットのひとつになっているようで,山里のだいぶ奥まった所にあるというのに,私が着いた時の寺院境内は,そうさな,150~200人ほどの大勢の花見客で賑わっていた。ほとんどの皆さんは自動車でお気楽に来ているのでしょう。最近できた広い駐車場が満杯で,そこに入れないクルマが坂道に列をなしていた。来訪者の年齢層は老人70%,子ども連れの家族15%,中年10%,その他5%といったところで,概ね想定範囲内の年齢構成である。なかで,20代前半とおぼしき若いオニイサンたちが乗った袖ヶ浦ナンバーの大型バイク3台がちょっと異質であったが,恐らくは山岳ツーリングの途中で道に迷ったあげく,偶然見つけたサクラの寺にちょっと立ち寄って一休みでもしていたのだろう。
今年はサクラの開花が例年よりも少し早く,既に盛りは過ぎているようだった。今から10数年前,当地に転居した春に初めて白泉寺を訪れたときは,この立派な枝垂れ桜の美しさに家族全員が圧倒されたものだった(もっとも息子は当時まだ2才児であったが)。それ以来ほぼ毎年,春になるとこのサクラを見に来ているが,ここ数年は花見客の隆盛ぶりに反比例してサクラの木がなんだか元気がなくなってきているような気がする。これは例えば地球温暖化のエイキョウなどでは決してなく,あるいは当の桜木の寿命というわけでもなく,恐らくは花見客がチョット多すぎるせいではなかろうかと邪推するのだが,いかがなものでしょうか。はい,余計なお世話ですか。
白泉寺の境内でしばしサクラを愛でたのち,お次は四十八瀬川を越えて柳川(生きものの里),八沢あたりに行こうかとも思ったが,そっちの方面は昨日行ったことでもあるしと方針変更,横野地区の東にあたる菩提マス釣り場方面に行くことにした。そのマス釣り場のある新田集落一帯は以前より私のお気に入りの場所のひとつで,一昨年の秋頃だったかクマが出没したことで一寸騒がれた地区でもある。金目川水系葛葉川の二次支川である新田川は,その付近では河床勾配がやや急になり河道には階段状の堰堤がいくつも作られている。そして流れの両岸には大きなサクラの古木が何本か水面を覆うように並んでいる。標高は約270~300m。こちらはちょうど満開の時期だった。その満開のサクラの下では老夫婦が1組,それとは別のサクラの下に母親と娘2人の家族が1組,いずれもシートを敷いて静かに穏やかにオベントなど食べていた。白泉寺の過剰なまでの賑わい振りに比べると,こちらはいたってノドカなものである。私も少し離れた場所で自転車を降りて一息いれ,暖かい陽差しのなかで咲きほこるサクラを眺めながら持参したひとくち羊羹をたべ,ボトルの水道水を飲んだりしておりました。
その後,新田内の川から離れた上道を通って里に下りていくことにした。道幅はクルマがすれ違えそうにないほど狭いがキレイに舗装されており,南に開けた斜面を横切る大変に眺めのよい道である。盆地中心部の街並みが遠く見下ろせ,さらにその先には渋沢丘陵が緑の帯状に横たわっているのが望見される。
そんな景色を眺めながらゆっくり進んでゆくと,やがて前方から全身フワフワした茶毛に覆われた足の短い犬が,ノコノコと体を揺すりながらこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。おや,なんだかタヌキみたいな犬だなぁ,と思って見ていると,相手の方もふと立ち止まって私の方をじっと見つめた。両者の距離約7~8m。 あれれ,タヌキじゃないか! と気がついて,慌ててカメラを取り出すべく自転車のフロントバッグを探った。
彼のほうも瞬時事態を察したようで,同じように慌てて踵を返し,もと来た道をノコノコと,それでも一応急ぎ足で戻っていった。それがオカシイことに道の脇の叢林や畑の方に入り込むのでなく,そのまま道に沿って下ってゆくのだ。こちらも自転車でその後を追いかけると,やがて道脇の側溝(ドブ)のフタの隙間から中に潜り込んでしまった。遅れて駆けつけた私は,自転車を降りて側溝の隙間から中に向かって,おーい,と呼びかけてみた。
返事があろうはずもない。恐らくドブの隅っこで息をひそめてじっと縮こまっていたのかも知れない。それとも,オカーサンのところに一目散にかけつけて,たったいま出会った自転車に乗った老人のことをドキドキしながら報告でもしていたのかな。いずれにしても,タヌキくんのノンビリ散歩の邪魔をしてしまい,ちょっと気の毒であった。 と,そんな春なのであります。