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「湘南ソング」を聴きながら

2008年04月04日 | 歌っているのは?
 つい最近の話である。東京方面に用事で出掛けたおり,一寸休憩するためにとある街角の喫茶店に入った。いわゆる今風のスタバとかドトールとかではない。昔ながらの落ち着いた外観の,少々草臥れた感じのする小さな喫茶店である。正直あまり居心地がよいとはいえないフワフワシートに座り,やや暗めの照明のなかでコーヒーを飲みながら,しばしのあいだ疲れを癒していた。最近はどうも長い距離を歩くと首筋と足首に疲労がきて,ND(ネック・ダメージ)状態になってしまう。もともと昔から姿勢が悪く,立ち振る舞いに問題を有する私なのではあるが,昨今では他人から見ればアウストラロピテックスのような歩行をしているのかも知れない。いわゆる先祖帰りというやつだろうか。それでも一応は街中でショー・ウィンドーの傍らを通り過ぎるときなど,横目でチラッとチェックをして出来るだけ己が姿勢を矯正するよう努めてはいるのだけれども。。。

 その店内のBGMに,サザンオールスターズのバラードが流れていた。それは私の知らない歌で,呟くようなボヤくようなスロー・バラードが桑田佳祐の例のクセのあるハスキーなゴニョゴニョ声で,ちょっぴり切なげに寂しげに,けれど心地よいリズムでスゥインギーに唄われていた。


   泣いたりしないで オトナになれない
   ヒマワリが揺れる 夏なのに...


 サビの部分にそんな文句があった。ヒマワリの咲く夏の日の揺れる恋心がとてもよい雰囲気で歌い語られる印象的なバラードであった。何となく以前どこかで聞いたことがある歌のような気がするのだが,いかんせん当方,SASについてはそれほど詳しいわけではないので,どうも思い出せない。これでも世間並みに,かなり昔には『バラッド』,『バラッド2』といういずれも2枚組のCDを所有していたこともあったのである(今ではもう手元にないけれども)。んなことはドーデモイイが,それらのCDにはその歌は入っていなかった。でもとにかく,なかなかいい歌だ。いわゆる「湘南ソング」という範疇に含められるのだろうか。淡い潮風の香りが頬をかすめてゆくようだ。実のところ,神奈川県中央部を南北に貫流する相模川以東の茅ヶ崎から藤沢,鎌倉,逗子,葉山の海岸沿いに広がる湘南地区は,もともと私にとってはやや疎遠なエリアである。別に敷居が高い地域というわけではなく,恐らくは拠って立つ土着文化の異質性の問題だと思う。しょせん私のこれまでの人格形成に与ってきたのは関東ローム層に覆われた新生代第四紀洪積台地および第三紀丘陵なのである。その意味で,相模川以西の西湘地区は昨今ではかなり身近な地域となっており,大磯丘陵が我が自転車ライディングのメインテーマのひとつであることは以前にも述べたところである。

 そんな御託はさておき,そのサザンオールスターズのスロー・バラードが,少し時間をおいたあとで再び店内に流れたのであります。その間15分くらいだったろうか。二度目に流れてきたときはちょっと不意を突かれた感じがした。あれま。マスターの趣味だろうか。あるいは馴染み客の誰かがアンコールでもしたのだろうか(ワタシがアンコールしたいくらいだったのだが)。 改めてじっくり聴かせていただいたが,うん,なかなかいい歌だ。


   たがいに大事な人だと決めてた
   君だけがツライわけじゃない...


 家に戻ってからも,どうも気になるので,インターネットでその歌のことを調べてみた。最近では便利なもので,歌詞の断片からだけでも,ウロ覚えの歌をネット検索して見つけ出すことが概ね可能である。ときどき息子から「○○の歌詞が知りたいんだけど,調べてくれない?」などと頼まれることがあって,ホイホイと探しだしたりしている従順な父なのである。

 SASのその歌はすぐに判明した。それは《さよならベイビー》という1989年の楽曲で,何と,オリコンシングルチャートの1位になったという。さらに,原田知世主演の映画『彼女が水着に着替えたら』のテーマ曲にもなったということだ(ちっとも知りませんでしたぜ,そげんこと)。 要するにワタクシ,ジャパニーズ・ポップス・シーンにおいては世間一般より20年近く遅れていたというわけか。いずれにせよ,とりあえずは一件落着してスッキリした。さてと,そのうちTSUTAYAでこの曲が入ったCDをレンタルすることにしようか。

 ヒマワリついでにもうひとつ,私にとって大変印象深いヒマワリの歌をここに記しておきたい。サクラの季節にヒマワリを持ち出すのも無粋な話であるが御容赦下さい。それは,この盆地の町が生んだ著名な歌人・前田夕暮にちなんで当地で毎年開かれている『夕暮記念こども短歌大会』という催しにおいて,今から7~8年前だったかに入選した次のような歌である。


   向日葵の道をたどって行ったなら めぐりあえるね 君の笑顔に


 とても美しいイメージの歌だ。作者は女子中学生である。ヘソマガリの評者からは紋切り型あるいは作為的と指摘されるかも知れないけれど,私などからみれば実に初々しく,流れるようなウタゴコロがこちらに響いてくる。「純真」という言葉が思い浮かぶ。「純情可憐」などという言葉も浮かんでくる。実はこの歌を詠んだ子はウチの息子の中学校の先輩にあたるようだ。現在は恐らく女子大生くらいの年頃だと思う。かつての「ヒマワリの恋」は成就したのだろうか。そして今でもまだ折々に歌を詠んでいるのだろうか。などと,要らぬ心配をしてしまうワタシなのである。あるいは,今日びの若者の例に漏れずサザンとかミスチルとかを聴いちゃったりしているんだろーか? 
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