先月の終わり頃だったか,ある女性週刊誌に載った『電動アシスト自転車に乗る高齢者が増加、自転車事故が急増』というタイトルのショーモナイ三文記事をネタにして,著名な医師である夏井睦先生が,その御自身の人気ブログで一言コメントを記していた。これがまた,元ネタにさらに輪をかけたショーモナイ文であり,自転車乗りの端クレとしては看過できない内容であったので,少々遅きに失した感はあるけれど,当方からも若干のコメント返しをしておきたい(むろん先様には届きやしないだろうけどネ)。とまれ,まずは夏井センセイによるコメント全文を以下に引用する。
車を運転すれば人を轢き殺し,電動自転車に乗れば事故を起こす。なぜこれほどに高齢者が迷惑な存在になったかというと,自動車と電動自転車が高齢者の移動手段になったからです。
徒歩しか移動手段がなかった時代では,高齢者は歩けなくなると外に出られなくなり,他人を傷つけることはまずなかったと思います。しかし,自動車と電動自転車の時代では,それらを使えば高齢者でも外に出られるようになりました。
しかし,高齢になれば運動能力と判断能力が落ちてきます。一方,自動車も電動自転車も「乗る人の運動能力と判断力が正常である」ことを前提に設計されています。
だから,老人は次々に事故を起こします。
まず最初に申し上げたいのは,文中の「電動自転車」とは何ぞや,という問題だ。Wikipediaなどを見ればすぐにわかることだが,わが国においては国産の電動自転車なるものは製造・販売されていない。それは電動自転車というマーケットが商業的に成立しておらず,かつ社会的にも当該車両が認知されていないことを意味する。もし仮に外国製の電動自転車を手間をかけて輸入するような奇特なヒトがおられたとしても,国内でそれに乗車して公道を走るためには各都道府県公安委員会で交付された運転免許証が必要である。すなわち,「電動自転車」なるものは,お笑い芸人・出川哲郎の人気番組《充電させてもらえませんか?》に出てくるエレクトリック・モーターバイクと同様なヴィークルなわけだ。実際,現在の日本国内において電動自転車なるものがどれ程の数走っているのか,その台数はごくごく微々たるものだろう。恐らく夏井先生は,自動車の運転免許をお持ちでないものと推察する。それどころか,昔々の子供だった頃のことはどうだか知らんが,少なくとも現在では普通の自転車にすら乗っていないだろうと思われる。ましてや「電動アシスト自転車」においておや! だから,こんなトンチンカンな茶々を入れてシレッとしている。
私自身は脆弱かつ泡沫的な一介の貧乏老人に過ぎないけれども,その自らの弱い立場を重々承知のうえで,敢えて次のことだけは言わせてもらう。「自動車」と「電動自転車」とは基本的に同じものである(タイヤが4つか2つかの違いだけ)。しかし,それらと「電動アシスト自転車」とは明らかに異なる種類の乗り物なのだ! そもそも「電動アシスト自転車」というのは,子供三輪車やママチャリや通学自転車や荷物運搬自転車や,はたまたクロスバイクやマウンテンバイクやロードバイクなどのオアソビ自転車などと同様に,あくまで基本は人力で漕ぐ乗り物(マンパワーを行使して移動させ・移動する軽車両)なのである。そしてそれに付加された「電動」という機能は,車両推進力をある程度まで「アシスト」するためのものに過ぎない。具体的には,非力な操縦者(コドモを乗せた母親やジジババ老人など)にとって,スタート時の漕ぎ初めや,シンドイ上り坂などでの重いペダリングを若干軽減してくれる,ごく控えめで慎ましい補助的機能なのである。しかしながら同時に,それは弱者にとってはまことに有難い,頼もしい付加機能となっているのだ。
以上の簡略な説明で当方の反証内容は概ね理解されたかと思うが,どうでしょうか先生? 無知から生じる思い違いは誰の身にも起こることゆえ,その点をこれ以上くどくど問い詰めたりはいたしません。が,むしろ私がひそかに危惧しているのは,夏井先生の考えの主眼が以下にあるのではないか,という点だ。いわく。《歩けなくなった高齢者は家に閉じこもり,ゆえに他人を傷つけることはない。しかし,自動車や電動自転車に乗ると外に出ることが可能になり,その結果次々に事故を起こす。》云々。そのような言いようは社会現象の単なる表層的解説に過ぎないものであって,それも昨今のシンブン・テレビ等のバカ・メディアによって多分に拡大・歪曲して日々報じられているショーモナイ報道攻勢情報がデータソースとなっていること明らかだ。そしてその裏には,要するに耄碌したジジババなんぞは,無闇矢鱈と外出などせずに,家の中にじっと留まっておって,あるいはせいぜい外出は介護施設などに出かけるくらいに留めておいて,毎日をノロノロとユルユルと静かに余生を過ごしていればいい(アチラからお迎えが来るまで?)。老人はそれぞれの寿命・天命に従って大人しくフェイド・アウトしてゆくべきだ。電動アシスト自転車に乗るなんぞモッテノホカ! といった上から目線的な冷笑さが見透かせるのだ(これはジジイのヒガミか?) あるいは百歩譲って控えめに申せば,だいたい「電動アシスト自転車」なるものは老人にとっては単にアブナイだけのものじゃん,そんなのに乗って安直に楽してズルイじゃん,とでも言いたげな雰囲気が色濃くうかがえるのです(やっぱりジジイのヒガミか!)
ところで,老人にとっての「電動アシスト自転車」をことさら否定する夏井睦医師は,リハビリ医療分野におけるいわゆる自立支援機器,車椅子やら歩行補助器やら松葉杖やら義足やらなどをも否定しておられるのだろうか。近年におけるそれら各種介護機器の進歩改良は著しく,形態・機能面のみならず,様々なエレクトロニック・テクノロジーの付加適用が及んでいるようにも見受けられる。そりゃ,なかには子どもの夏休み工作みたいな稚拙な技術供与も見られましょうが,それでも間違いなく時代の確実なトレンドになっているものと思われる。そのことは人類進化史のなかでは後戻りできない傾向だ。電動アシスト自転車を否定するのは,本質的な意味においてそのような新しい自立支援機器を否定することと然したる違いはないのではないかと思う。さらにその考えを敷衍すれば,よりダイレクトな医療用電動機器,例えば人体に装着する心臓埋め込み式ペースメーカー(心肺機能アシスト機器)とかも,恐らくは本来不要なモノとして否定されることになるのでしょう。要は,老兵は消え去りゆくのみ。日本古来の「姥捨て山思想」ってヤツですな。そしてそれから先は哲学宗教の問題になるのでしょうな。
いささか余計を申した。話を戻すと,電動アシスト自転車を高齢者が利用する際の運転技術の訓練周知,運転ルールの順守など,実用・運用面でのさまざまな改善事項については,当然ながら別問題として改めて検討される必要があるだろう。また,車両自体の設計見直し等の改良改善も,特に老人を対象とした場合は,もっと人間工学的な面などから考えられてよいと思う。取りあえず現状においては,老人などに相応しいのは小径で後輪が2輪となった車両,「電動アシスト三輪車」だろう。具体的な車種名を挙げて示せば,パナソニックのビビライフ(車重:33.8kg,希望小売価格:195,000円),ヤマハのPASワゴン(車重:29.3kg,希望小売価格:210,600円),ブリジストンのフロンティアワゴン(車重:28.3kg,希望小売価格:195,800円),などが適当でしょう。どれも大体20万円もあれば立派な介護補助機器,もとい新品自転車が入手できる。さらに,クルマ(二輪・四輪)と違って税金は全くかからないし,維持費だって微々たるものだし,また保険についても,自転車保険(傷害保険)は自動車保険に比べれば全然安い。まるで良い事づくめではないか。
最後にもうひとつ。夏井センセイが日頃ネタ拾い用のサイトとして閲覧しておられるらしい《ギガジンGigazine》というインターネット・サイトにおいて,約1年ほど前に,電動アシスト自転車の効用に関するスイスのバーゼル大学での研究結果が紹介されていた。見逃されたかも知れないのでその概略を示しておくと,次のとおりである。電動アシスト自転車によるトレーニングは,従来の普通自転車による同様のトレーニングに比べて,心肺能力がより改善し,高いトレーニング効果が認められた。のみならず,血圧・脂肪代謝・精神的な健康など,さまざまな面で恩恵が得られたという。こちらも,まるで良い事づくめではないか。
そんなわけで,さぁ,全国の老人諸氏よ。今がその時だ! クルマを捨てよ! そして,電動アシスト自転車に乗り換え,家から飛び出して街に出るんだ! (ただし道路交通ルールはキチント守りましょうネ)
車を運転すれば人を轢き殺し,電動自転車に乗れば事故を起こす。なぜこれほどに高齢者が迷惑な存在になったかというと,自動車と電動自転車が高齢者の移動手段になったからです。
徒歩しか移動手段がなかった時代では,高齢者は歩けなくなると外に出られなくなり,他人を傷つけることはまずなかったと思います。しかし,自動車と電動自転車の時代では,それらを使えば高齢者でも外に出られるようになりました。
しかし,高齢になれば運動能力と判断能力が落ちてきます。一方,自動車も電動自転車も「乗る人の運動能力と判断力が正常である」ことを前提に設計されています。
だから,老人は次々に事故を起こします。
まず最初に申し上げたいのは,文中の「電動自転車」とは何ぞや,という問題だ。Wikipediaなどを見ればすぐにわかることだが,わが国においては国産の電動自転車なるものは製造・販売されていない。それは電動自転車というマーケットが商業的に成立しておらず,かつ社会的にも当該車両が認知されていないことを意味する。もし仮に外国製の電動自転車を手間をかけて輸入するような奇特なヒトがおられたとしても,国内でそれに乗車して公道を走るためには各都道府県公安委員会で交付された運転免許証が必要である。すなわち,「電動自転車」なるものは,お笑い芸人・出川哲郎の人気番組《充電させてもらえませんか?》に出てくるエレクトリック・モーターバイクと同様なヴィークルなわけだ。実際,現在の日本国内において電動自転車なるものがどれ程の数走っているのか,その台数はごくごく微々たるものだろう。恐らく夏井先生は,自動車の運転免許をお持ちでないものと推察する。それどころか,昔々の子供だった頃のことはどうだか知らんが,少なくとも現在では普通の自転車にすら乗っていないだろうと思われる。ましてや「電動アシスト自転車」においておや! だから,こんなトンチンカンな茶々を入れてシレッとしている。
私自身は脆弱かつ泡沫的な一介の貧乏老人に過ぎないけれども,その自らの弱い立場を重々承知のうえで,敢えて次のことだけは言わせてもらう。「自動車」と「電動自転車」とは基本的に同じものである(タイヤが4つか2つかの違いだけ)。しかし,それらと「電動アシスト自転車」とは明らかに異なる種類の乗り物なのだ! そもそも「電動アシスト自転車」というのは,子供三輪車やママチャリや通学自転車や荷物運搬自転車や,はたまたクロスバイクやマウンテンバイクやロードバイクなどのオアソビ自転車などと同様に,あくまで基本は人力で漕ぐ乗り物(マンパワーを行使して移動させ・移動する軽車両)なのである。そしてそれに付加された「電動」という機能は,車両推進力をある程度まで「アシスト」するためのものに過ぎない。具体的には,非力な操縦者(コドモを乗せた母親やジジババ老人など)にとって,スタート時の漕ぎ初めや,シンドイ上り坂などでの重いペダリングを若干軽減してくれる,ごく控えめで慎ましい補助的機能なのである。しかしながら同時に,それは弱者にとってはまことに有難い,頼もしい付加機能となっているのだ。
以上の簡略な説明で当方の反証内容は概ね理解されたかと思うが,どうでしょうか先生? 無知から生じる思い違いは誰の身にも起こることゆえ,その点をこれ以上くどくど問い詰めたりはいたしません。が,むしろ私がひそかに危惧しているのは,夏井先生の考えの主眼が以下にあるのではないか,という点だ。いわく。《歩けなくなった高齢者は家に閉じこもり,ゆえに他人を傷つけることはない。しかし,自動車や電動自転車に乗ると外に出ることが可能になり,その結果次々に事故を起こす。》云々。そのような言いようは社会現象の単なる表層的解説に過ぎないものであって,それも昨今のシンブン・テレビ等のバカ・メディアによって多分に拡大・歪曲して日々報じられているショーモナイ報道攻勢情報がデータソースとなっていること明らかだ。そしてその裏には,要するに耄碌したジジババなんぞは,無闇矢鱈と外出などせずに,家の中にじっと留まっておって,あるいはせいぜい外出は介護施設などに出かけるくらいに留めておいて,毎日をノロノロとユルユルと静かに余生を過ごしていればいい(アチラからお迎えが来るまで?)。老人はそれぞれの寿命・天命に従って大人しくフェイド・アウトしてゆくべきだ。電動アシスト自転車に乗るなんぞモッテノホカ! といった上から目線的な冷笑さが見透かせるのだ(これはジジイのヒガミか?) あるいは百歩譲って控えめに申せば,だいたい「電動アシスト自転車」なるものは老人にとっては単にアブナイだけのものじゃん,そんなのに乗って安直に楽してズルイじゃん,とでも言いたげな雰囲気が色濃くうかがえるのです(やっぱりジジイのヒガミか!)
ところで,老人にとっての「電動アシスト自転車」をことさら否定する夏井睦医師は,リハビリ医療分野におけるいわゆる自立支援機器,車椅子やら歩行補助器やら松葉杖やら義足やらなどをも否定しておられるのだろうか。近年におけるそれら各種介護機器の進歩改良は著しく,形態・機能面のみならず,様々なエレクトロニック・テクノロジーの付加適用が及んでいるようにも見受けられる。そりゃ,なかには子どもの夏休み工作みたいな稚拙な技術供与も見られましょうが,それでも間違いなく時代の確実なトレンドになっているものと思われる。そのことは人類進化史のなかでは後戻りできない傾向だ。電動アシスト自転車を否定するのは,本質的な意味においてそのような新しい自立支援機器を否定することと然したる違いはないのではないかと思う。さらにその考えを敷衍すれば,よりダイレクトな医療用電動機器,例えば人体に装着する心臓埋め込み式ペースメーカー(心肺機能アシスト機器)とかも,恐らくは本来不要なモノとして否定されることになるのでしょう。要は,老兵は消え去りゆくのみ。日本古来の「姥捨て山思想」ってヤツですな。そしてそれから先は哲学宗教の問題になるのでしょうな。
いささか余計を申した。話を戻すと,電動アシスト自転車を高齢者が利用する際の運転技術の訓練周知,運転ルールの順守など,実用・運用面でのさまざまな改善事項については,当然ながら別問題として改めて検討される必要があるだろう。また,車両自体の設計見直し等の改良改善も,特に老人を対象とした場合は,もっと人間工学的な面などから考えられてよいと思う。取りあえず現状においては,老人などに相応しいのは小径で後輪が2輪となった車両,「電動アシスト三輪車」だろう。具体的な車種名を挙げて示せば,パナソニックのビビライフ(車重:33.8kg,希望小売価格:195,000円),ヤマハのPASワゴン(車重:29.3kg,希望小売価格:210,600円),ブリジストンのフロンティアワゴン(車重:28.3kg,希望小売価格:195,800円),などが適当でしょう。どれも大体20万円もあれば立派な介護補助機器,もとい新品自転車が入手できる。さらに,クルマ(二輪・四輪)と違って税金は全くかからないし,維持費だって微々たるものだし,また保険についても,自転車保険(傷害保険)は自動車保険に比べれば全然安い。まるで良い事づくめではないか。
最後にもうひとつ。夏井センセイが日頃ネタ拾い用のサイトとして閲覧しておられるらしい《ギガジンGigazine》というインターネット・サイトにおいて,約1年ほど前に,電動アシスト自転車の効用に関するスイスのバーゼル大学での研究結果が紹介されていた。見逃されたかも知れないのでその概略を示しておくと,次のとおりである。電動アシスト自転車によるトレーニングは,従来の普通自転車による同様のトレーニングに比べて,心肺能力がより改善し,高いトレーニング効果が認められた。のみならず,血圧・脂肪代謝・精神的な健康など,さまざまな面で恩恵が得られたという。こちらも,まるで良い事づくめではないか。
そんなわけで,さぁ,全国の老人諸氏よ。今がその時だ! クルマを捨てよ! そして,電動アシスト自転車に乗り換え,家から飛び出して街に出るんだ! (ただし道路交通ルールはキチント守りましょうネ)