富岡東 2014年2月22日 梅、山茶花等 ※刈込まれていないので本来の野生化に近い。刈込は人には利便性があるが、生物多様性を台無しにする。
横浜金沢区の樹木 Vol.1
はじめに
植物は毎年花を付けるとは限らない。環境破壊の影響で花を付ける年はレジリエンスで、数年後に花を咲かせる。注:resilience(レジリエンス)は回復力の意味。例:縄文人は木の実、山菜の採れる場所を数ヶ所知っていた。現代人は根こそぎ何でもかんでも取ってしまう。縄文人はこの様な馬鹿な事はしない。ある程度採集したら、次の場所へ移る。一部採って弱った植物は、レジリエンスで数年後、元に戻る。街歩きの際は、縄文人の知恵を学ぼう。桜は金沢区の桜でまとめたので、桜以外の樹木を記載した。 開発による環境破壊で減る一方になっている。記載は春夏秋冬順です。花期は金沢区近郊で咲く時期です。写真は表題の通り、横浜市金沢区内、及び近郊で撮影したものです。横浜金沢区の樹木をgooブログに掲載したが、字数制限と言う大人の事情でVol.1~Vol.5に分割した。正直見難い。そこで場所にフォーカシングした物も記載した。但し、構成上他の場所で撮影した写真も一部含む。
参考文献
山と渓谷社
山渓カラー名鑑 日本の樹木
シリーズ物
横浜金沢区の樹木
抜粋版:富岡総合公園の樹木、長浜公園の樹木、横浜金沢緑地の樹木Vol.1、Vol.2、海の公園の樹木、富岡東の樹木
横浜金沢区の桜
横浜金沢区の野草
八景島の紫陽花
ボケ Chaenomeles speciosa 木瓜
高さ1~1.5mほどになるバラ科の落葉低木。中国原産で、日本には平安時代に渡来し、広く庭木として植えられているが、九州などには野生化している。。中国名は貼梗木瓜。地下茎はひかない。互生する葉は楕円形または長楕円形で、細かい鋸歯があり、枝には刺がある。雌雄同株。新年早々の1~2月、径2~3cm,深紅色の花が咲き、花数及び蕾が多数付くものもある。花弁は長楕円形から円形、雄蕊は多数、雌蕊の花柱は5本。果実は長さ8~10cmの楕円形で、8~9月に黄緑色から黄色に熟し、芳香があり(木瓜(もつか))の名で消化器系の病気に使われ、また酒石酸やリンゴ酸を含み、香りもよいので砂糖煮や果実酒にも使われる。小木に分不相応な大きな果実が付く(写真4、5枚目)。果実は度々盗まれるので場所は特定しない。但し、果実のできにくいものが多い。多くの園芸品種(金盃等)がある。用途:庭木、盆栽、花材。分布:中国原産。
金沢区 2014年4月2日
金沢区 2022年1月22日
園芸種の東洋錦の雑種か、白花が咲いていた。白に少し淡紅色が混じる物よりも、純白に近い白花が咲く物は優良種とされる。但し、これは人の解釈で、植物に優劣は無い。
金沢区 2021年2月23日
金沢区 2025年3月17日
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金沢区 2022年9月5日
モモ Prunus persica 桃
古く中国から日本に渡来し、観賞用や果樹として広く栽培されている。野生化しているものある。古事記や日本書紀に記載が見られるが、果樹としての栽培は江戸時代からで、当時のモモは小果で硬肉であった。若枝は紫褐色または緑色で無毛。樹皮は暗紫褐色。葉は広倒卵形または楕円状披針形で長さ7~16cm。葉身の基部に腺点がある。花は3月上旬~中旬、前年枝の葉の脇に1~3個咲く。直径3~5cmで、葉より先か同時に咲く。花色は普通淡紅色だが、変化が多い。基本種の花弁は5個で平開する。果実は野生型では直径3cmほどしかないが、栽培品種は、はるかに大型で、多汁となる。大果の品種は1874年にモモとネクタリンが主としてフランスから、75年にモモの上海水蜜と天津水蜜が中国から導入された。それらの品種は各地で試作されたが、日本の風土に最もよく適合した天津水蜜が一般に普及した。その後、岡山・神奈川両県下の栽培者によって上海水蜜など導入品種の偶発実生から新品種が発見されるとともに、東洋系(華南系)のモモを素材に育種も行われた。現在では日本の風土に適応した品種が多数育成、栽培されている。また、黄肉の加工用(缶詰用)品種も欧州系品種と東洋系品種との交雑により育成されている。栽培種の果実は球形で大形。7~8月、黄白色~紅色に熟し、食用にする。但し、桃アレルギーの人もいる。表面にビロード状の細毛が密生する。片側に縦の溝がある。核は大形で表面にしわがよる。漢の宮廷を訪れた神女の西王母が漢の武帝に3,000年に1度だけ実を結ぶ桃の実を与えて食べさせる。これを食すると不老不死が得られると云われる。このように桃はとくに西王母との結びつきが強く,西遊記で孫悟空が暴れてめちゃくちゃにする蟠桃会も西王母が主宰するものであった。このような桃の持つ超越的な生命力付与の能力は,それが現実の果樹であることを超え,世界樹としての桃にその原形があると考えられた事によるであろう。用途:庭木、花材、葉は民間薬。分布:中国北部原産。中国の黄河上流、陝西・甘粛の両省にまたがる高原地帯(標高1200~2000m)の原産。中国から各地に伝わって変種を生じた。
富岡東 2018年3月13日
富岡東2020年3月6日
ウメ Prunus mume 梅
庭や畑で栽培されるが、時に暖地で野生化している。梅が伝来したのは650~700年頃である。万葉の時代は梅と言えば全て白い花と相場が決まっていた。紅梅は未だ中国から入っていない。万葉集に梅の歌が122首収められいる。かなりの数だ。それも色々な場面で詠まれている。梅は中国の詩文に古くから掲載されている。従って万葉人にとって、梅の歌は教養のステータスシンボルであった。奈良時代前にはすでに植栽され、紫宸殿の前庭に植えられていたが、947年(天暦1)のころにはサクラと替わった。また万葉集にウメが詠まれた歌が、鎌倉時代の新古今和歌集では、本歌取りでサクラに替えた例があり、ウメからサクラへと日本人の好みの変化が起こったらしい。
菅原道真と梅
平安時代に紅梅がようやく入って来た。
うつくしや 紅の色なる 梅の花 阿呼が顏にも つけたくぞある
この歌(うつくしや)は伝説による。阿呼は菅原道真の幼名で、5歳の時、自分の家の庭に咲いている紅梅を見て、この歌を詠んだ。当に、栴檀は双葉より芳し。849年の事。その後、北野天満宮等に梅が植えられている。
東風吹かば にほひ起こせよ 梅の花 あるじなしとて 春を忘るな 菅原道真 (拾遺集)
東風は春に吹く東の風。左大臣藤原時平の策動で、太宰権帥に左遷され、心なずも大宰府に流され、この地で亡くなる。享年59歳(903年)。その後、時平の家系は断絶し、時平の弟忠平が藤原氏の氏の長者を継承し、藤原道長、藤原定家を輩出した。北野天満宮は元々忠平の別荘であった。菅原道真と懇意であったので、菅原道真を祀る社を提供した。それが今日迄続く北野天満宮である。
源氏物語に梅の枝に止まった鶯の初音の話があるが、これは作り物の鳥。
初音
とし月を待つにひかれてふる人に今日うぐいすの初音聞かせよ 明石上
待つ事に誘い寄せられて、過ごして居る老人(私)に、元日の今日は、鶯の初音ーあなたの初(はつ)の御便り(音)を聞かせて下さい。「まつ(松)にひかれて」の「松」は「小松」で「姫君」に、又「松」に「待つ」を、「ふる」に「経る」と「古」を掛けた。「ひかれ」は小松の縁語。「姫君」は光源氏と明石上の娘。明石姫君は八歳。将来、明石姫君を中宮に推挙する為に養母を紫上とした。仮の形の養女にするのではなく、幼い頃から中宮に必要な教養、知性を教え込んだ。これは光源氏の布石。紫上は藤壺中宮の姪。そう云う事で、明石上は母親でありながら、我が子に滅多に逢えない。俳句では馬鹿の一つ覚えで、初音=鴬とある。源氏物語ではそのような上辺の事では無く、このように奥深い人間関係が隠されている。よって、千年読み語り継がれている。源氏物語の補足:横浜金沢区の植物の万葉集 Vol.13に記載した。紫色は、また、平安時代に〈ゆかりの色〉と呼ばれた。それの由来を《古今和歌集》の〈紫のひともとゆゑにむさし野の草はみながらあはれとぞみる〉に求める説明が普通に行われているが、紫色のもつ位階・身分の尊貴性と、〈ゆかり〉(血縁とか,仏教語の縁とか,なんらかの必然的な繋がりとかの意味で用いられた)の思想性との一致は、《源氏物語》の中にその典型が見い出される。桐壺帝(光源氏の父君)、桐壺更衣(光源氏の母君)、藤壺女御後中宮(源氏が生涯にわたり思慕しつづけた桐壺帝の后)、紫上(源氏の最愛の妻、但し本妻ではない。本妻は葵上と女三の宮)は、全て紫色に関わりがあり、かつ血縁的にも容貌的にも深い関わりをもっている。源氏物語の最重要人物は、全て光源氏の母親である桐壺更衣の親族である、藤壺中宮、紫上、浮舟になる。当時の天皇を頂点とした身分制社会では、血統が全てであり、当然の事である。源氏物語は日本文学ではあるが、皇族、貴族の○○の但し書きが付く。当時、学校等は無いから、庶民は読み書きができないし、当然源氏物語の存在すら知るすべもない。〈紫のゆかり〉あるいは〈ゆかりの色の紫〉という思想は,やはり平安摂関宮廷知識人が抱懐した世界観や価値意識の反映と見るのが最も適切と思われる。最重要人物の二人、藤壺中宮と紫上はルイスキャロルの小説である鏡の国のアリスのキラルに相当する。アリスが猫に向かって鏡の中のミルクを飲めないかもと云う。これを源氏物語に当てはめると、光源氏が藤壺中宮をどんなに恋焦がれていても手にする事はできない。一方、紫上は鏡に入っていない。ルイスキャロル(Lewis Carroll)1832-1898はペンネームで本名はドジソン CharlesLutwidge Dodgsonでオックスフォード大学(Univercity of Oxford)の論理数学者。本職の論理数学を駆使して、本名からルイスキャロルを編み出した。
梅に鶯は花札の世界だけ。梅の木に来るのは、メジロ、ジョウビタキ等。メジロは花の蜜を吸いにくる。同時に嘴周辺が花粉まみれになり、花粉の送粉者で、木と鳥の共生関係。若枝は緑色で無毛。葉は互生し、長さ4~9cmの倒卵形~楕円形で、先端は尖る。縁に細かい重鋸歯があり、両面と葉柄に微毛がある。花は2~3月、葉に先立って開き、通常白色だが、紅色、淡紅色のものもある。香りがある。花弁と萼片は5個。雄蕊は多数で、花弁より短い。雌蕊は1個で、子房に蜜毛がある。果実は直径2~3cmのほぼ球形で、表面に蜜毛が生え、片側に浅い溝がある。6月頃、黄色に熟す。果肉は酸味が強い。核はやや扁平な楕円形で、核面には穴が多い。果実を梅干しや梅酒にする他、仁を薬用に使う。中国において、ウメが早春の花として観賞され,詩歌の題材とされるようになったのは後世のことで、古くはその果実に関心があり、スモモ、アンズ、モモなどとともに野生の実が採取され、また詩経(国風)の僅有梅の詩に歌われたように,春の歌垣に際し、男女がウメの実を投げて配偶者を求め、また愛情のあかしとして贈答する風習があった。果実は保存食となり、またその酸味が調味料として用いられたので塩梅(あんばい)の語もある。熟れかけの実を籠に盛り、煙突の煙でいぶして薫製にしたものを烏梅として薬用にする。青梅は塩漬にした後に日に乾かしたものを白梅または梅脯(ばいほ)という。ウメは中国語のメイから転訛したとか、鳥梅から転訛だとか、朝鮮語のマイに由来するとかの俗説がある。中国では人の名前に梅が付くと女を表す。京劇の女形の名優:梅蘭芳。用途:庭木、公園樹、盆栽、花材、器具・彫刻材。分布:中国中部(四川省から湖北省)原産。
円海山 2014年3月18日
並木 2021年2月3日
並木 2021年2月3日
Coffee Break
開発で野鳥は加速減少している。息抜きに所々に野鳥の写真を掲載した。鳥の写真は5m以内で撮影したい。そうすれば目の辺りと羽根の一本一本が鮮鋭に写る。それ以外は鳥が写っている程度の写真になる。鳥を追い駆けてはいけない。鳥の方から近づいて来るまで待つ境地になる。中国古典に泥棒が弓の達人宅へ押し入ったが、鋭い殺気に驚いて転げ落ちた話がある、不射の射と云う。日本でも弓の名人は的を狙わないと云う。名前は伏せており、難易度は少しずつ上がる。答えは巻末に掲載しました。孔子曰く、鳥は止まる木を選べるが、木は鳥を選べない。
Q1a ヒント:初音、鳴き声は耳にするが、姿見せず
Q1b ヒント:花札ではウメに○○
アセビ Pieris Jponca馬酔木
やや乾燥した山地に生え、高さは1~3mの低木。葉は互生し、長さ3~8cmの倒披針形で厚い革質。縁には鈍い鋸歯があり、両面とも無毛。3~5月、枝先に円錐花序を出し、最初は、淡紅色で徐々に白くなる(写真2~3枚目)。白い花が多数垂れ下がって咲く。花冠は6~8mmの小さい壺形で、先は浅く5裂する。雄蕊は10個で、花糸には短毛があり、約には刺状の突起が2個ある。雌蕊は1個。蒴果は直径5~6mmの偏球形で上向きに付き、9~10月に熟す。葉にアセポトキシンと呼ばれる毒素が含まれ、馬が食べて呼吸中枢麻痺を引き起こした事から、馬酔木と書く。煎汁は殺虫剤、皮膚病薬として用いられる。学名にJaponicaとあり、日本固有種で、万葉集に記載されている。用途:庭木、床柱、薪炭。分布:本州(山形県以西)、四国、九州。
富岡総合公園 2019年3月14日
富岡東 2023年3月5日
モクレン Magnolia liliflora 木蓮
別名シモクレン紫木蓮。よく分枝して高さ高さ3~5mの低木。葉は互生し、長さ8~18cmの広倒卵形で、先端は短く突出する。3月、葉の出る前に枝先に暗紫紅色の花を上向きに半開する。花弁は6個で長さ約10cm。雄蕊と雌蕊は多数。集合果は長楕円形で、種子は赤色。用途:庭木、花材、薬用。分布:中国原産(場所は不詳)。
並木 2021年3月11日
並木 2021年3月11日
ハクモクレン Magnolia denudata 白木蓮
大きいものは高さ15mになる。葉は長さ10~15cmの倒卵形で、先端は短く突出する。3月、芳香のある白い花が咲く。花弁は6個。萼片は3個。花弁と萼片は区別しにくく、どちらも長さ7~8cm。中国ではシモクレン、ハクモクレン共高貴な花木として宮城や寺院に栽植され,日本には古くに入ってきた。欧米には18世紀後半に導入され,現在では世界で最もポピュラーな花木の一つで,アメリカ合衆国のルイジアナ,ミシシッピ両州の州花となっている。特に欧米では盛んに品種改良や交配が行われ,シモクレンは70以上,ハクモクレンは40以上の園芸品種が育成されている。用途:庭木、街路樹、花材。分布:中国原産(場所は不詳)。
円海山 2018年3月26日
長浜公園 2021年3月11日
Coffee Break
Q2 ヒント:なし
アンズ Prunus armeniaca 杏
中国から古代に渡来し、果樹として広く栽培されている。葉は長さ7~13cmの卵円形または広楕円形で、縁に小さい円形の鋸歯がある。3月に直径約3cmの淡紅色の花が咲く。花弁は5個で、時に八重咲のものがある。果実は直径約3cmで表面に細かい絨毛がある。6月頃、黄色に熟し、食べられる。果肉と核が離れ易い。果実は生食のほか、乾果、シロップ漬、ジャム、果実酒の原料などに利用される。種子は杏仁(きようにん)といい、咳止めや喘息の漢方薬とされるが、青酸配糖体(アミグダリン amygdalin)を含むので専門家の指導によって服用する。杏仁からとった杏仁油は軟膏や毛髪油などに用いられる。 用途:庭木、公園樹、盆栽、花材、器具・彫刻材。分布:中国北部原産。
富岡総合公園 2019年3月19日
富岡総合公園 2019年3月19日
シダレヤナギ Salix babylonica 枝垂柳
奈良時代に朝鮮経由で渡来したと言われ、日本全土に植えられている。川辺等湿った場所を好む。高さ10~25mになり、細い枝が枝垂れるのが特徴。樹皮は暗灰色で縦に裂ける。葉は互生し托葉があり、葉は長さ8~12cmの披針形~線状披針形で先は次第に細くなって尖る。縁には細かい鋸歯があり、裏面は粉白色。3~5月、葉より早くまたは同時に基部に3~5個の小さな葉を付けた尾状花序を出す(写真2枚目)。雄花序は長さ2~4cmで雌花序より大きい。雄花の雄蕊は2個で葯は黄色。雌花の子房は狭卵形で花柱は極短い。雄花も雌花も苞は淡黄緑色で卵状長楕円形。雌株は少ない。柳は生命力に満ち,春一番に芽ぶくため,正月には蛭花をつけたり,これで柳神(やなぎばし)、削掛け、粟穂剰穂(あわぼひえぼ)等を作って、豊作や健康を祈る風がある。柳に風:枝垂柳の枝は柔らかくてよくしなり、風が吹くままに逆らう事なく揺れる事から、相手の罵詈雑言を柔らかに受け止めて巧みにかわす例え。用途:公園・街路樹、材は軟らかく建築用には適さないが,生長が早いので家具,器具,マッチ棒、花材、細工物。分布:北海道、本州、四国、九州、中国原産。
長浜公園 2021年3月15日
長浜公園 2021年3月18日 ※柳に風の如く、風揺れでマクロ撮影に苦労した。
コブシ 辛夷
山野に生え、高さ8~18mになる。葉は長さ6~13cmの広倒卵形で洋紙質。裏面は淡緑色。3月、枝先に直径6~10cmの芳香のある白い花が咲く。花の下に葉が1個付くのが特徴。花弁は6個で基部は紅色を帯びる。萼片は3個で小さい。集合果はこぶが多く、長さ5~10cm。9~10月に熟すと袋果が裂け、赤色の種子を白い糸で吊り下げる。コブシの花が咲くのを目安に農作業を始める地方が多く,田打ち桜と呼ばれたりする。雪国では、山を見ては、コブシが咲いた。いや、あれは雪だと言いながら春を待つ。しかし、それはタムシバ(モクレン属、コブシと異なって花の下に葉はない)であることの方が多い。用途:庭木、接ぎ木の台木、建築・家具・器具・楽器材。分布:北海道、本州、四国、九州、朝鮮(済州島)。
富岡総合公園 2018年3月23日
金沢緑地 2021年3月11日
金沢緑地 2021年3月11日
Coffee Break
Q3a ヒント:飛び込むのが本職
Q3b ヒント:光沢のある青羽根、鳴きながら飛ぶ。
ヤマブキ Kerria japonica 山吹
山地の谷川沿いなど、湿った所に普通に生える他、庭等に広く植えられる。鮮やかな黄色の花を咲かせ、黄金色を山吹色とういほど親しまれている。古い時代劇で、悪奉行と悪徳商人が小判を山吹色と見立てた会話をしている場面がよく出てくる。地下茎を伸ばして増え、高さは1~2mになる。茎は細く、根元から群がって生え、枝は横に張り出す。茎や枝は初め緑色だが、やがて褐色の木質となり、3~4年で枯れる。茎の髄は太く、白色で軟らかく、顕微鏡用の切片を切り取る時のピスとして使われる。葉は互生し、長さ4~8cmの倒卵形で先は鋭く尖り、縁には重鋸歯がある。質は薄く、鮮緑色で、裏面の脈上に伏毛がある。葉柄は8~10mmで、基部に薄くて落ち易い長さ2~10mmの線形の托葉がある。3月下旬~4月、前年枝から伸びた短い枝の先に直径3~58cmの鮮黄色の花を1個開く。花弁は5個で平開し、倒卵形で先は丸くてわずかにへこみ、基部は急に細くなる。雄蕊は多数。花柱は長さ約7mmで、5~8個が束生する。萼筒は短い。萼片は5個あり、長さ約4mmの楕円形で果期にも残る。花柄は8~15mm。果実はそう果で長さ4mmの広楕円形。1~4個が熟して暗褐色になる。学名にJaponicaが付いており、日本固有種である。和名の山吹は、古くは山振の字が宛てられ、しなやかな枝が風に揺れる様子から名付けられたという。用途:庭木、公園樹、花材。分布:北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国。
金沢区 2023年4月13日
金沢区 2023年4月13日
ヤエヤマブキ Kerria japonica cv. Plena 八重山吹
ヤマブキの八重咲の園芸種。古くから庭などに植えられている。高さは1.5~2mで株立ちとなり、周囲に多くの地下茎を出す。花は 3月下旬~4月、ヤマブキよりやや遅れて咲き始める。雄蕊は弁化し、雌蕊も退化しているので実は付かない。室町時代に江戸城を築いた太田道灌が鷹狩りに出て雨に遭い、蓑を借りようと農家を訪れた。その家の娘が山吹を差し出して、
七重八重花は咲けども山吹のみの一つだになきぞ悲しき
と謳った。太田道灌はその場では何の事か理解できなかった。帰城にて家来に「山吹のみの」の語句に山吹に実は付かない、蓑が無いの掛詞があると教えられた。この逸話は太田道灌が生きた時代から三百数十年後に出来た作り話だ。当時農家の娘は和歌を知らないし、読み書きができない。用途:庭木、花材。
富岡総合公園 2021年4月1日
ヤドリギ Viscum album var.coloratum 宿り木
エノキ、ケヤキ、ブナ、ミズナラ、クリ、サクラなど、落葉樹の大木に寄生し、宿主の幹に食い込んだ寄生根から養分や水分を吸い取る。また自身も光合成を行っている。高さは40~50cmで、こんもりと丸くなり、常緑なので、冬になって宿主の葉が落ちるとよく目立つ。枝は先が2~3個に分枝し、緑色で毛はなく、やわらかいくて折れ易い。葉は対生し、長さ3~6cmの倒披針形で厚い革質。先は丸く、基部は楔形。葉柄はない。2~3月、枝先の葉の間に黄色の小さな花が咲く。雌雄異株。花には柄がなく、基部に杯状の小苞がある。萼は質が厚く、4裂する。雄蕊には花糸がなく、葯は萼片に付き、黄色の花粉を出す。果実は直径6mmほどの球形で、11~12月に淡黄色に熟す。果肉は粘る。種子は1個あり、扁平で深緑色。緋連雀などの野鳥が果実を食べて、種子を排出する(写真2枚目)。これが他の木に宿り、どんどんヤドリギが増える。母種のオウシュウヤドリギは果実は白く熟し、ヨーロッパからアジア西北部に分布している。ヤドリギはヨーロッパにキリスト教が入る前から、特にケルト人の宗教的行事に使用された。すなわちケルトの聖職者は,オークの木に寄生しているヤドリギを夏至や冬至の夜などに黄金の鎌で切りとり、村へもち帰って祭壇に安置したという。この習慣は,ヨーロッパにキリスト教が入ってきてからも形を変えて生き延び、現在でもイギリスやフランス等では、クリスマスには市場でヤドリギの枝を買って帰り、室内の飾りとする習慣が残っている。ヤドリギが古くから神聖視されたのは、冬になって宿主である落葉樹のオークが葉を落としているのに反し、宿生しているヤドリギだけは青々とした葉をもち続けており、その結果、いったん葉を落としたオークの木が再生したかのように見えたからである。果実が橙黄色に熟すヤドリギの品種をアカミヤドリギ f.rubro-aurantiacum という。ヤドリギは古くから縁起木とされ、枝や葉は漢方で婦人病薬にする。茎葉は血圧降下、利尿作用を有することが知られ、漢方では桑寄生(そうきせい)の名で、強健、腰痛、安産などのために用いられる。また茎葉にはデンプンを含有し、食料欠乏のときに食用にしたり、家畜の飼料に利用される。分布:北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国。
富岡総合公園 2019年4月1日
Coffee Break
Q4 ヒント:ヤドリギの実を食べる
ボタン Paeonia suffruticosa 牡丹
ボタン科はボタン属1属で、ユーラシア大陸と北米に分布している。ボタンは中国北西部の原産と考えられ、古くより中国で栽培され、前漢時代すでに根皮を薬材にしていた。初めは薬用として栽培されていたが、観賞用としては南北朝時代に始まるとされるが、唐代になって大流行し、おびただしい品種群が作出された。宋代の洛陽では花といえば牡丹をさした。日本への渡来は天平時代(729~749年)である。江戸時代には既に160種以上の品種が知られていた。現在栽培されているのは30~40種。ボタンの園芸種:カオウ(花王)花は赤色で千重咲きの大輪。他、色の異なる園芸種が多数有り。台湾の国花。高さ1~1.5mになる。葉は2回3羽状複葉で互生する。小葉は長さ4~10cmの卵形~卵状披針形で、普通先端が2~3裂し、裂片の先は尖る。裏面は白っぽい。4月頃、今年伸びた枝の先に直径15~20cmの大きな美しい花が1個咲く。花の色は白、紫、紅色、淡紅色、黄色など色々ある。咲く時期が各々ずれているので、同時には咲かない。花弁は8個~多数あり、倒卵形で先は不規則に切れ込む。萼片は5個で先端に小突起がある。雄蕊は多数あり、葯は黄色で線形。雌蕊は2~5個で、基部を袋状になった花盤が取り囲む。果実は袋果で熟すと縦に裂ける。種子は黒色で多数。根皮は牡丹皮と呼ばれ、鎮痛、解熱、消炎,血行障害のなどに用いられる。用途:庭木、鉢植え、花材。分布:中国北西部原産。
慶珊寺 2019年4月11日
慶珊寺 2018年4月16日
慶珊寺 2017年4月17日
富岡総合公園 2013年4月24日
レンゲツツジ Rhododendron japonicum 蓮華躑躅
高原に多く、群生地での景観は見事。高さ1~2mになる。葉は互生し、長さ5~12cmの倒披針形で先はあまり尖らない。縁には細毛がある。4~5月、前年の枝先の短い総状花序に朱橙色の花が2~8個さく。但し、花の色は変化が多い。花冠は直径5~6cmの漏斗形で5中裂する。雄蕊は5個で、花糸の基部に白い毛がある。雌蕊は1個で、花柱は無毛。花柄には腺毛がある。蒴果は長さ2~3cmの長楕円形または狭長楕円形で、白い毛があり、時に褐色の長い毛がある。山躑躅、霧島、皐月等の園芸種が多数ある。用途:庭木、公園樹、盆栽、花材。分布:本州、四国、九州。
2023年4月11日 能見台
2023年4月11日 能見台
ツバキ Camellia japonica 椿
学名にjaponicaが入っているように日本固有種である。木に春と書いて椿と云う。この椿は漢字ではなく、国字であり、日本で作られた文字である。別名:ヤブツバキ・ヤマツバキ。沿岸地に多いが、山地にも生え、大きいものは高さ10~15mになる。樹皮は灰色で灰白色の不規則な模様があり、滑らか。枝は無毛。葉は互生し、長さ5~12cmの長卵形で厚くてかたい。表面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡緑色。縁には細かい鋸歯がある。主脈は表面でへこみ、側脈はあまり目立たない。4月、枝先に赤色の花が1個ずつ咲く。花弁は長さ3~5cmで5個あり、平開しない。雄蕊は多数あり、花糸の下半部は合着して筒状になり、基部は花弁と合着する。花糸は白色で、葯は黄色。子房は無毛で、花柱は3裂する。萼片は5個。蒴果は直径4~5cmの球形で果皮が厚く、熟すと3裂して暗褐色の種子を2~3個だす。材は年輪がつまり,堅くて強く,磨けば光沢がでることから建築や器具に用いられる。種子から椿油を取る。頭髪用,灯用,食用となり,機械油としても第一級のものである。花が終わる場合は、椿落つ(人では死)と云う。一方桜の場合は桜散る(人では入試不合格等)と云う。このように日本語では花の終わる現象を人の行いに例えている。用途:庭木、公園樹、盆栽、器具・彫刻材。分布:本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国。
巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を 坂門人足 (万葉集 巻1-54)
巨勢山のつらつら椿を、つくづくと眺めながら巨勢の春野を思い出していよう。「つらつら椿」は椿の並木とも、花または葉の連なった椿とも云う。「ゆらつらに」は熟視するさま、つくづく。「偲はな」はここはある物を媒介にして眼前にないものを思い浮かべる事。椿の花のない晩秋であるが、花咲く椿のさまを偲ぼう。これは、持統上皇の大宝元年(701年)9月、紀伊の行幸に付き従った人足の歌である。巨勢山は奈良県御所市付近。つらつら椿は花が連なり咲いている椿の花の様子、あるいは並べ植えられた椿とも考えられる。しかし、いずれにしても椿の紅の花の美しさを称えた物である。
ヨーロッパのツバキ事情:日本原産のツバキは1700年頃、ポルトガル人によりヨーロッパに渡り、19世紀にツバキブームを起こした。ヤブツバキの学名はCamellia japonica。ユキツバキの学名はCamellia japonica var. decumbens。何れも日本固有種であり、ツバキは万葉集にも記載されている。1843年から1860年にかけて出版された「ツバキ図譜」(13巻)には623種が収められている。何時もツバキの花を付けた病める娼婦マルグリットと、純情な青年アルマンの悲しい愛を描いた「椿姫」が小説として出版されたのが1848年である。フランス語でLa dame aux camelias。フランスの劇作家デュマ(子)Alexandre Dumasの代表作。翌年5幕の戯曲に改作、52年パリのボードビル座で初演。1845年ころパリの社交界に浮名を流した高級娼婦マリー・デュプレシをモデルに、その情人の一人であった作者自身の体験に基づいて構想。マルグリット・ゴーティエという名でその恋人の原型を理想化して作り上げた一種の恋愛風俗小説。プロバンス出の青年アルマンの、ひたむきで純粋な愛情に出会って、初めて真実の愛に目覚めたパリの高級娼婦マルグリットが、愛と犠牲の狭間に悩みながら波乱の生涯を終える物語。薄幸な一人の娼婦を通して一種の社会批判をも盛り込んでおり、当時名優とうたわれたサラ・ベルナールらによる上演は観客を魅了した。
パリで舞台上演に接してこの作品に共感を抱いたイタリアの作曲家ベルディは、ピアーベFrancesco Mario Piave(1810‐76)の台本により《ラ・トラビアータ La traviata(道を踏みはずした女)》の題名で3幕4場のオペラを作曲、53年3月6日ベネチアのラ・フェニーチェ歌劇場で初演。イタリア語で、La traviata。内容のロマンティシズムとそれを助長する感傷的な旋律の美しさから、悲恋物語として愛好され、ベルディの中期の傑作の一つとなっている。《前奏曲》をはじめ、《乾杯の歌》、女主人公ビオレッタのアリア《ああ、そはかの人か》、恋人アルフレードの父親ジェルモンの《プロバンスの海と陸》など珠玉の名曲に溢れている。日本初演は1919年(大正8年)ロシア歌劇団による。
フランスでは当時、紅白のツバキのコサージュや花束が、夜会のアクセサリーとしてもてはやされ、パリジェンヌたちの胸をときめかした。ツバキの花言葉は、このような熱狂的な背景もあって、紅ツバキには〈気どらない優美〉、白ツバキには〈完全な愛らしさ〉という最上級の賛辞が与えられたのである。
円海山 2014年4月14日
円海山 2014年4月14日
金沢区 2025年3月9日 ※白椿
金沢区 2025年4月8日 ※紅白椿
ミツマタ Edgeworthia chrysantha三椏
樹皮の繊維を製紙の原料にする為、栽培されている。高さ1~2mになる。樹皮は黄褐色で、枝は三叉に分かれて出る。葉は互生し、長さ8~15cmの広披針形で薄く、裏面は粉白色。3~4月、葉に先立って球形の頭状花序を付ける、花序は頭状で30~50個の花からなる。萼は筒形で先は四裂し、内側は黄色。外側には白い毛が密生する。果実はそう果で萼筒に包まれる。アカバナミツマタcv.Sanguineaは花が赤い園芸種。日本に渡来したのは室町時代と云われ、樹皮の卑皮繊維が丈夫なので和紙の原料とされた。野生品に頼るガンピと異なり栽培が容易で,天明(1781‐89)の頃に静岡県東部でミツマタ和紙の量的な製造が始まった。さらに1882年ころから紙幣用紙に供せられるようになって急速に栽培面積が増え、宮城以南の各県で見られた。しかし近年は大幅に面積が減っている。赤木(あかぎ)、青木(あおぎ)の二つの主要品種がある。播種(はしゆ)又は挿木で増やし、やや湿った土地に密植する。秋に幹,枝を刈り取り、多くの手間をかけて皮を取り、和紙をつくる。卑皮繊維は繊細で耐伸・耐折強度、弾力性および光沢に富み、1.2~5.1mm(平均3.6mm)と長さも適当で機械抄紙ができる。用途:和紙、証券紙、紙幣等の高級紙料。分布:本州、ミャンマー、ヒマラヤ、中国中・南部原産。
金沢区2025年3月21日
金沢区2025年3月21日
ヤマフジ Wisteria brachybotrys 山藤
山野に生える。つるは左巻き。葉は奇数羽複葉。小葉は4~6対あり、長さ4~6cmの卵形または卵状長楕円形でやや厚く、両面に毛がある。4月頃、長さ10~20cmの総状花序を垂らし、紫色で長さ2~3cmの蝶形花をほぼ一斉に開く。豆果は長さ15~21cmで果皮は硬い。藤を持って錦につぐ:良い物に粗悪品を付け添える事の例え。用途:庭木、花材。分布:本州(中部地方以西)、四国、九州。
称名寺 2019年4月29日
称名寺 2022年4月23日
Coffee Break
Q5 ヒント:神の御告げだが、鳴かずば○○も射られず
以下Vol.2へ続く
おまけ
樹木の撮影に出会う台湾リス。
円海山 2013年7月10日
Coffee Break
鳥の名前クイズの答え
Q1:ウグイス、Q2:フクロウ、Q3:カワセミ、Q4:ヒレンジャク、Q5:キジ
続編:横浜金沢区の樹木 Vol.2