特選 ベストセレクション
ワールド ミステリアス クラブ
オーゼル マーフイ の世界
●マッキントッシュと呼ばれた男
MI6はその黒幕と組織の全貌を
突き止めんと、躍起になって居た
四面楚歌のイスラエルは、国の存亡を掛けて、
孤独な戦いを強いられている
マッキンは独特の直感でマリアの心の動揺を知った
山岳民族の衣装を着たウエトレスがチエンマイの
ワインを持って来た。
マッキンは静かにワインをすすって話し始めた。
「マリア、わたしは長い間プロとして今の仕事をし、
その事に大変名誉と誇りを持っている。
そして非常に強い直感力を養って来た。」
「マリアにこの業界で長生き出来た、
取って置きの秘話を話しておきたい」
と言ってこんな事をぼそぼそと話していた。
「世界中を旅しているといろんな事があるが、
孤独で寂しい気持ちが出たときが一番危険な時だった。
特に女性の誘惑が一番怖かった。
自分の欲望に負けた時が、命の落とす時だと言う戒めは
絶えず持っていた。
人間でありながら人間の情念を超えて、自制する心の癖を
持つための努力こそ、最大のプロとしての自分に対する
使命感だったのだよ。」
「自分との戦いをやりながら、それが仕事の総てだった。
プロヘッショナルとはそう言うものだよ。
人間としての魅力を持ちながら、ある部分で人間を超えた
存在になる事は、とても悲しい話なのだよ」
「六年前ロンドン ピカデェリーの地下鉄爆破で、
妻と子供三人を一気に失ったとき、
アイルランド解放戦線のテロリストに対する憎悪は、
我を失う程の強さだったよ」
「上司のクレーマーはその時こう言ったよ。
マック声を出して泣くんだ。
思い切り泣くんだよ。
それ以外救われる道はない。
と言って彼はわたしを抱いて、
本当に心の底から大声で泣いてくれたよ。
そのクレーマーの人柄と心に、わたしは立ち直る事が
出来たんだ。」
「君のおとうさんとの付き合いは古い。
きっかけはポーランドのナチのゲットーで、
SIS養成トレーニングセンターキャリラム講習の時、
収容所跡のガス室の前の壁を叩いて号泣していた
青年トーマスマンと会った時の事なんだ。
わたしは何となく彼の肩を抱いて本当に
引き込まれるようにして泣いていたんだよ」。
マリアの頬に涙のしずくが流れ、
大きく頷きながらしゃくる姿は尊いものであった
次回
翌朝ホテルで頼んだレンタカーでマッキンとマリアは
タイの北西部に位置するメーホンソンに向かった
そのほとんどが山に囲まれた辺境の街で
霧が多く発生することでも有名で、山間部に
ひっそりとたたずむ静寂な街並みは
タイの秘境と呼ぶのに相応しい所であった
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プログ マッキントッシュ
オーゼル マーフイ 著
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