【現代思想とジャーナリスト精神】

色平哲郎氏の紹介 「言論界から排除のメカニズム、新たな手法—大々的非難の広告を出し排除。」

色平哲郎氏の紹介
「言論界から排除のメカニズム、新たな手法—大々的非難の広告を出し排除。」

                       櫻井 智志




*(この記事はここでも掲載しましたが、最後の部分が印象的なので再掲させていただきます)
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孫崎享のつぶやき 2015-11-27
安倍政権下、言論界から排除のメカニズム、新たな手法—大々的非難の広告を出し排除

今回対象は『NEWS23』でキャスター岸井成格氏。排斥加担に言論界の読売新聞。
A事実関係
1:2015年11月15日 東芝弘明の日々雑感より
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読売新聞に全面広告が掲載された。驚くべきことに「News23」の岸井成格氏を名指しで批判する全面広告だった。「私たちは、違法な報道を見逃しません」というタイトルで書かれた全面広告は、放送法第4条を盾に岸井氏の「メディアとしても(安保法案の)廃棄に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」を「放送法第4条の規定に対する重大な違反行為」だと書いている。
理由は3点(以下抜粋)
1点目「メインキャスター、司会者が一方的な意見を断定的に視聴者に押しつけることは、放送法第4条に規定された番組編集準則に明らかに抵触します」
2点目「『メディアとしても(安保法案の)廃棄に向けて声をずっと上げ続けるべきだ』は、放送事業者全般に対して、放送法への違反行為を積極的に促す発言と受けとめざるを得ない点で悪質です」
3点目「当日の番組では、法案に賛成する第3者の意見が紹介される場面は皆無でした。
それどころか「News23」は法案成立までの一週間、法案反対側の報道のみに終始しています(※1参照〔──記事の左下のグフ〕)。下図を見れば明らかなように、余りにも一方的な時間配分です」
この全面広告の呼びかけ人は、すぎやまこういち/代表(作曲家)、渡部昇一(上智大学名誉教授)、渡辺利夫(拓殖大学総長)、鍵山秀三郎(株式会社イエローハット創業者)、ケント・ギルバート(カリフォルニア州弁護士・タレント)、上念司(経済評論家)、小川榮太郎(文藝評論家)となっており、広告は、寄附によって行ったものだと書いている。
しかし、この全面広告は、「News23」の報道姿勢を全面的に検証したものではなく、岸井氏の9月16日の発言を切り取って、批判したものだ。このような批判の仕方には、ものすごく違和感がある。ときどき「News23」を見ていたものとして、この批判の仕方はいただけないと感じる。番組は、反対運動の高まりの中で、長きにわたって法案の審議の内容を伝えていた。安全保障関連法案に対する批判がどこにあり、政府の説明のどこに問題があるのかという点で、検証しながら番組を編成していたというのが、実際の姿ではないだろうか。
安全保障関連法案は、憲法違反かどうかが鋭く問われ、憲法学者へのアンケートも行われた。圧倒的多数の憲法学者が違憲だという見解を明らかにし、最終的には元最高裁長官や元判事の3人の方が違憲だという見解を示した。「News23」はこういう内容を伝え
ながら、同時にこれに対する政府の説明も行い、その上で岸井氏が見解を述べるということを行っていた。「司会者が一方的な意見を断定的に視聴者に押しつける」というようなものではなかったのではないだろうか。
放送法第4条だけを抜き出して、法律違反だと論じているのにも無理がある。
放送法第1条の目的は、
「第1条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように
規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を
確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達
に資するようにすること。」
と規定している。
この目的は、日本国憲法の精神を具体化するものとして、読むべきものだと思われる。
国民主権が根底にあって、国民への普及があり、表現の自由、国民の知る権利の保障、民主主義の発展に資することが明らかにされているのではないだろうか。
第3条は(放送番組編成の自由)を規定している。
第3条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
これを踏まえて、
放送法第4条(国内放送等の放送番組の編集等)
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送
番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにす
ること。がある。
不偏不党や真実及び自律の保障によって表現の自由を守ること、放送番組編制の自由の上で、放送法第4条があることを考えると、放送法第4条だけを切り離して論じることは、論点をせばめ、意図的な結論を見いだすような感じを受ける。
このような意見広告を出して、放送のあり方に問題があるようにいい、政府の見解に批判的な報道や番組はあたかも片寄っているかのようにいうのは、恐ろしい。日本国憲法は、現代憲法なので権力の監視と権力の手を縛るものになっており、その一方で国民の権利を保障している。憲法を無視して安全保障法案を数の力で押し通そうそしていたときに、権力の暴走を批判し、国民主権の側に立って事実を伝えようとしたテレビ番組は、日本国憲法と放送法の精神に基づいて番組を編成していたのではないか。偏向どころか、放送の王道を貫いていたのではないだろうか。
2:『NEWS23』でキャスター岸井成格の降板が決定の情報!「安保法制批判は放送法違反」の意見広告にTBSが屈服?(25日LITERA)
愕然とするようなニュースが飛び込んできた。TBSの看板ニュース番組『NEWS23』で、アンカーの岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)を降板させることが決まったというのだ。
「TBS はすでに後任の人選に入っていて、内々に打診もしているようです。後任として名前が上がっているのは、朝日新聞特別編集委員の星浩氏。星氏は朝日では保守派寄りの政治部記者ですが、今年、朝日を定年になるので、退職後の就任をオファーしているようです。岸井さんが契約切れになる3月をめどに、交代させる方向で進めていると聞いていましたが、場合によってはもっと早まるかもしれません」(TBS関係者)
 この突然の人事の背景には、もちろん例の右派勢力による『NEWS23』と岸井攻撃がある。
〈私達は、違法な報道を見逃しません〉──。今月14日の産経新聞、翌15日の読売新聞に、こんな異様なタイトルの全面の意見広告が掲載されたことをご存知の読者も多いだろう。
 この広告の出稿主は「放送法遵守を求める視聴者の会」なる聞いたこともない団体だが、呼びかけ人には、作曲家のすぎやまこういち氏や評論家の渡部昇一氏、SEALDsメンバーへの個人攻撃を行っていた経済評論家の上念司氏、ケント・ギルバート氏、事務局長には、安倍首相の復活のきっかけをつくった安倍ヨイショ本『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)の著者・小川榮太郎氏など、安倍政権応援団の極右人脈が名前を連ねている。
 そして、この広告が〈違法な報道〉と名指ししたのが、岸井氏と『NEWS23』だった。
9月16日の同番組で岸井氏が「メディアとしても(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」という発言を取り上げ、「放送法」第4条をもち出して〈岸井氏の発言は、この放送法第四条の規定に対する重大な違法行為〉としたのである。
しかも、『放送法遵守を求める視聴者の会』は意見広告だけでなく、TBSと岸井氏、さらには総務省にまで公開質問状を送りつけたという。
「これに、TBS幹部が真っ青になったようなんです。もともと、局内に岸井氏を交代させるという計画はあったようなんですが、この抗議を受けて、計画が一気に早まったようなんです」(前出・TBS関係者)
 しかし、この意見広告はそんな過剰に反応しなければならないものなのか。たしかに放送法第4条では放送事業者に対して《政治的に公平であること》を求めてはいるが、それは政権批判や特定の法律批判を禁ずるものではまったくない。
 また、岸井氏の「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」という発言にしても、安保法制に単純に反対ということではなく、国民に対して説明不足のまま強行採決したことへの批判の延長線上に出てきたものだ。もしこれが政治的に不公平な発言というなら、たとえば、安倍政権の外交成果を評価するようなNHKやフジテレビ、日本テレビの報道もすべて放送法違反になってしまうだろう。
 しかも、これは別稿で検証するつもりだが、この意見広告を出した「放送法遵守を求める視聴者の会」自体が実体のよくわからない、きわめて政治的な意図をもった集団なのだ。
 どうしてこの程度のものに、TBSは神経質になっているのか。その背景には、官邸と自民党が『NEWS23』を標的にしているという問題がある。
 昨年末、安倍首相が『NEWS23』に生出演した際、街頭インタビューのVTRに「厳しい意見を意図的に選んでいる」と難癖をつけ、その後、自民党が在京テレビキー局に「報道圧力」文書を送りつけるという問題が起きたが、その後も自民党や官邸はさまざまな形で、同番組に圧力をかけ続けていた。
 安保法制審議中は例の文化芸術懇話会の弾圧発言が問題になったこともあって、一時、おさまっていたが、同法が成立した直後から、自民党「放送法の改正に関する小委員会」の佐藤勉委員長が、テレビの安保法制報道は問題だとして、「公平・公正・中立は壊れた。放送法も改正したほうがいい」と露骨な恫喝発言をするなど、再びTBS やテレビ朝日への圧力を強め始めた。
 実際、こうした動きに、TBSの武田信二社長が9月の定例会見で、安全保障関連法案をめぐる同局の一連の報道について、「弊社の報道が『一方に偏っていた』というご指摘があることも存じ上げているが、われわれは公平・公正に報道していると思っている」と弁明する事態になっている。
「とくに、官邸と自民党が問題にしていたのが、岸井さんの発言だった。岸井さんはもともと政治部記者で、小泉政権時代は小泉改革を支持するなど、いわゆる毎日新聞でも保守色の強い記者だった。それが安保法制に厳しい姿勢を貫いたことで官邸や自民党は『裏切りだ』と怒り倍増だったようです。政治部を通じて『岸井をなんとかしろ』という声がTBS幹部に再三届けられたと聞いています。そんなところに、今回の岸井さんをバッシングする意見広告が出たことにより、TBSも動かざるを得なくなった。総務省にまで抗議、質問状を送りつけられたことで、TBS は非常にナーバスになっている。総務大臣はあの高市早苗さんですからね。これを口実にどんな圧力をかけられるかわからない。大事になる前に岸井さんを切ろうということでしょう」(全国紙政治部記者)
 いや、岸井氏だけでなく、これを機にメインキャスターの膳場貴子氏も降板させ、『NEWS23』を解体させる計画もあるといわれている。
「膳場さんは今週から産休に入りましたが、そのまま復帰させずフェードアウトさせるという計画もあるようです。しかも、岸井さんの降板、星さんの起用とあわせて、放送時間を現在の1時間から短縮させ、番組自体もストレートニュースに変更するプランも
もち上がっています」(前出・TBS関係者)
 放送法を歪曲した今回の“報道圧力”である意見広告に、本来、TBSは強く抗議すべきである。それが何をか言わんや、相手の攻撃に屈し、ジャーナリズムとして当然の発言をしただけの岸井氏を降板させるとは──。以前、オウム真理教に絡んだビデオ事件
の際に、筑紫哲也氏は『NEWS23』の番組内で「TBSはきょう、死んだに等しいと思います」と発言した。しかし、今度こそほんとうにTBSは「死のう」としているのではないか。圧力に萎縮し、服従すること。それは報道の自殺行為にほかならない。
B:評価
・安倍政権下、原発再稼働、TPP参加、集団的自衛権の容認、消費税アップ等、日本国民に明らかに害になる政策の推進の過程で、安倍政権下、言論人が大手マスコミに出られないようにする動きが加速している。
・新たな動きがある。手口が多様化し、さまざまな手段を使っている。
 かつては、異なる見解を述べる人物を破廉恥罪的なものに追い込み、あるいはそれを取り上げることによって、言論界から放逐した。
 今回は新聞広告を利用し、全面的に非難を行い、そして放逐するというパターンをとった。この手法を取れば、最早全ての人がいつでも対象になりうる。
・対象者は、どちらかと言うと、過去政権擁護派に属するとみられた人にも及ぶようになってきた。岸井氏は、どちらかと言えば、長く、政権擁護側にいた人物とみられていた。
・ただし、岸井氏は安保法制関連で極めて重大な発言をしている。
安保法推進派の本音「自衛隊が血を流さないと・・・」 岸井氏インタビュー(上)ニ
ュースソクラ
-pol
「敢えて名前を挙げちゃえば、アーミテージですね。国防総省、日米安保のドンとか、ハンドラーってね、異名を持っているのだけども。
 彼が最初に言ったのが「Show the flag」。とにかく、日本旗「日の丸」だけでも立ててくれよと。紛争地、アメリカが戦っているところで。それで次がイラク戦争。「Boots on the ground」って。それでこないだ「News23」で彼とインタビューやりました
けど。何と言ったかというと、「長年憲法9条がバリケードのように立ちはだかって、日米軍事の協力ができなかった」と。「今度、それがなくなるのだ」と。
 バリケードが取り払われると。それで、敢えて言うと、「Show the flag」、「Boots on the ground」次は、「Sheds the blood」、「血を流せ」って日本も少しは。ついに、ここへ来たってところですよね。でもね、「Sheds the blood」って大変なことなのですよ。」





・日本国民は、個々の人物が攻撃され、言論界から排斥されるのをあまりに安易にみすぎたのではないか。
今こそ、マルティン・ニーメラーの言葉(原型は1946年の演説)を顧みる必要がある。
「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。
 私は共産主義者でなかったから。 
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった
私は社会民主主義ではなかったから
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は労働組合員ではなかったから
彼らがユダヤ人たちを連れて行ったとき、私は声をあげなかった
私はユダヤ人などではなかったから
そして、彼らが私を攻撃したとき
私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった

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