【現代思想とジャーナリスト精神】

鎌田慧氏と衆院総選挙

鎌田慧氏と衆院総選挙
櫻井智志

 衆院選が近づく中、私は或る新聞記事を読み、以下のようなことを考えた。最初にインターネットには掲載されていないので手写しした記事を紹介してから、私見を述べたい。

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侮辱の中で
【東京新聞2014年11月25日朝刊『本音のコラム』手写し転載】
     鎌田 慧

 何回目かの「さようなら原発」集会で、大江健三郎さんが「侮辱」という言葉で政府を批判した。これは八十六年前、戦前に中野重治が雑誌に発表した短編小説「春さきの風」で、女主人公が「わたしらは侮辱のなかに生きています」と書いた手紙の最後の一行である。

 家族三人、夫の政治活動が理由で彼女は留置場に拘引され、赤ん坊が病気で急死する。そのあと外に出された妻が、拘置所にいる夫に書いた手紙の一節である。

 戦前、戦中の日本は警察国家で、警察の横暴が甚だしかった。いまなお福島の原発が連続爆発し、世論が急速に脱原発に代わっても安倍政権はどこ吹く風。その横暴を大江さんは、戦前の圧政時代の小説をかりて「侮辱」と表現した。

 その言葉がいま、悪政とむき合っている。首相は「アベノミクス解散」などと、やに下がっているが、夜盗の抜け駆けのようでセコイ。目的のためには手段を選ばない。自党の新人議員が落選しても、自分の権力を固めようという酷薄非情には目を瞠(みは)るばかりだ。

 もう新基地建設はやめてくれ、と沖縄がいっても、原発も戦争ももういやだ、いのちを大事にしようで、日本中がいっても聞く耳をもたない。これでも日本は民主主義国家なのか。きっと、「アベノミス解散」になるぞ。  (ルポライター)

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私見
 これだけの眼力と表現する勇気をもつルポライターは、鎌田さんを除くと寺澤有氏やかつての村上義雄さん、本多勝一氏などわずかしか日本にはいない。私は東京都知事選で候補一本化が成立しなかった時に、細川護煕氏を応援して、宇都宮健児候補を応援しなかった鎌田慧氏に対する批判の渦にたじろいだ。しかし私は鎌田氏を擁護する言葉を発することができなかった。そのことを私は自らの「恥」として感ずる。この鎌田氏の文章を読み、私は鎌田氏の今後の言説にはより敬意を払い対応したい。

 宇都宮健児氏は、都知事選後も市民運動を続け「うつけんニュース」を発信し続けている。次に都知事選があり、そこに宇津野美緒氏が出馬しても、私は宇都宮健児さんを応援するだろう。けれど、鎌田慧氏の言葉の重さをしっかりと受け止めたい。もはや鎌田氏が都知事選に出馬する宇都宮さんを批判することはないだろう。

 言説がわかれても、その真実を丁寧に受け止めて、自らが考えて責任をもつ言動をしようと私は考えている。いま総選挙で自民党が小選挙区で圧倒的で、野党が分立してその一本化を求め、全選挙区に立つ日本共産党を批判する動きが見られる。私はこう考える。なぜ不合理な小選挙区がつくられたか、不合理な小選挙区制度を批判にも関わらず、保存しているか。すべて自公与党の政権独占欲に始まる。日本共産党は、比例区で安倍政権に対抗するためにも、小選挙区でも候補を全区で擁立している。しかし、統一戦線が結成されている沖縄県では全区で社民党、生活の党、社会大衆党などと合議の上、候補擁立をやめたり他党を推薦したりしている。

 沖縄選挙区のような状況にない本土で、日本共産党が全区で候補を擁立したのは、本土が沖縄県よりもはるかに後進的な状態にあるからだ。共産党を批判する者は、沖縄で反安倍政権で合意した統一戦線に加わっている政党のみが批判できよう。沖縄でオナガ知事を支持しなかった政党、公明党や民主党、維新の党、次世代の党、元みんなの党などに日本共産党を批判する資格は全くないのだ。

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