「何だ、おめぇら、まだそこにいたのか!?」
「早く、帰れよ!」
と言いながらも、身体は上昇し続けていた。
待てよ、これは夢ではないか?と思った。
いや、夢ではない。
現実だ。
(くそ!)
と思いながら、
何とか前と同じ脱出方法を試みた。
しかし、身体が動かない。
さっきより全く動かない。
すでに部屋(六畳間)の中間ぐらいまで上昇していた。
天井にはぽっかりと暗黒のトンネルが出現し、
その中に先ほど同じグレイと呼ばれる宇宙人の顔が3体見えた。
(やばい、やばい、やばい)
と思いながら、隣で寝ている女房に助けを求めようとしたが、
身体は動かず、声も出ない。
女房は人の気も知らず、スヤスヤと寝ているだけだった。
動かない身体を必死に動かそうと、
またまた、
「おんどりゃあああああああ~~~~~」
と叫び声を発しながら身をよじった。
その瞬間、ばたんと布団に落ちた。
(助かったぁ)
と安堵すると同時に寝てしまった。
眼が覚めると、もう朝だった。
女房に、
「オレ、昨夜、何か叫んでいたのを聞いた?」
と尋ねたら、
「別に何も叫んでいなかったと思うけど」
「そう?実はオレ、昨夜宇宙人にさらわれそうになったんだ」
と真剣に話すと、
「ふ~ん」
と鼻で笑われてしまった。
それ以来、私のアブダクションはない。
多分、ない。