寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

成年後見制度の概要⑥(同意権の中の取消権)

2010年06月16日 | 成年後見制度

補佐役の人には、ご本人を護るために何らかの権限が必要です。
それが、代理権と同意権です。

そして、同意権には…
①事前同意権
②取消権
③追認権  の3つの権限が含まれています。

ご本人がご自身で契約を締結する局面で行使されるのが①です。
ご本人がご自身で契約を締結した後の局面で行使されるのが②と③です。

今回は、取消権のご説明です。

補佐役の人の事前同意なく、ご本人自身が締結した契約は、一応は有効なものとして成立しましたね。
一応は有効に成立した契約でも、成立したからには当事者を拘束します。
しかし、ご本人が事理弁識能力を十分に発揮して契約を締結したと考える事には疑問が残ります。
つまり、ご本人が自分で契約締結したけれども、補佐役の人が、それによる拘束からご本人を解放した方が良いと判断することもあろうかと考えられます。

その時に、補佐役の人が取消権を行使します。
コレにより、契約は、ハナッから無かったものとして取り扱われます。

結局、締結した契約の内容の妥当性や本人にとっての必要性の判断を、補佐役の人が事後的に行い取消すか否かを決めるのですから、「取消権行使・不行使の判断=事前同意するか否かの判断」ですよね。

さて。
この取消権。
一応は有効に成立した契約の存在が前提です。

という事は。
契約である以上、相手方がいます。
相手方は、その契約が取消されるのかどうか、気が気ではありません。

なので、法は、そんな相手方のために、3つの規定を創りました。

①民法20条2項。
「…相手方が、…法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しない時も、同項後段と同様とする。」

「前項」とか「同項」とか、これだけ読んだんじゃ良くわかんねー。
なので、超訳すると…。

契約の相手方は、補佐役の人に対し、一か月以上の期間を定めて、契約を追認するのかどうかを催告することができます。そして、その期間内に、どうするのかの確答をしないと、追認したとみなされます
追認したとみなされれば、取消権は消滅します。

②民法125条
「…取消すことができる行為(契約)について次に掲げる事実があった時は、追認をしたものとみなす。…
 一 全部又は一部の履行
 二 履行の請求… 」

法定追認と言われる規定です。
取消せる契約なのに、補佐役の人が、相手方に対して「早く履行をして下さい」と言ったら、コリャ、追認したと考えて良いですよね。
法定追認事項は、あと4つありますが、ちょっとマニアックなので、一般的な事項だけを載せました。

③民法126条
「取消権は、…5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為(契約)の時から20年を経過した時も、同様とする。」

取消権の時効の規定です。
補佐役の人としては、取消権は5年で時効により消滅すると考えて下さい。

…「成年後見制度の概要⑦(日常生活と取消権)」につづく。