寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

成年後見制度の概要⑤(法定後見制度と同意権)

2010年06月15日 | 成年後見制度
今回のテーマは、法定後見制度と同意権です。

この「同意権」には、以下の3つの権限が含まれています。

①同意権
②取消権
③追認権 です。

①の同意権とは何か?

ややこしいので、①の同意権を、事前同意権と言います。

で。
これは、ご本人がご自身で契約等を行う場合、補佐役の人の事前の同意がなければ、契約等として完全に有効には成立しない、という事を意味します。

契約の締結には、事理弁識能力が必要です。
「事理弁識能力=契約を締結する上で当事者に必要とされる判断能力」です。

有効に成立した契約は、当事者を拘束します。
その拘束は、当事者が、適正にその判断能力を働かせたことを根拠とします。

つまり、契約の拘束とは、ある意味で自己責任を根拠としていると言えます。

しかし、事理弁識能力をうまく発揮できない人が自分で契約を締結した場合でも、それによる拘束を受けるのは自己責任なんだから当然でしょ、と言うのは、余りに酷です。

そこで、補佐役の人に事前同意権を与えました(判断の外部化)。

そして、補佐役の人の事前同意なく締結された契約は、完全に有効には成立しませんよ、としたのです。

では、「完全に有効には成立しない」とは、どういう意味でしょうか?
それは、②の取消権と関係します。

②の取消権とは何か?

「完全に有効には成立しない」とは、換言すれば、一応は有効に成立することです。

この「一応は」という部分が、補佐役の人の権限の一つである取消権と関係します。

つまり、補佐役の人が契約を取り消すかも知れないという留保付きで有効という事です。
そして、取消権が行使されたら、その契約は、その締結時に遡って無効なものとして扱われます。
要するに、もともとそんな契約は無かった、と扱われます。

これにより、契約による拘束から、ご本人を解放することができます。

では、逆に、その契約が、ご本人にとってメリットになる場合はどうでしょうか?
ここで登場するのが、③の追認権です。

という訳で。

③の追認権とは何か?

取消権が、契約をふっ飛ばすという解決の方法なのに対し、追認権は、契約を確定的に有効にするという解決の方法です。

補佐役の人の事前同意なく締結された契約の効力を、その契約締結時に遡って確定的に有効にする事ができる権限のことです。


以上、これらの同意権の有無又は範囲は、ご本人の類型により異なる点については、代理権と同様です。

次回は、同意権の中の、取消権のご説明をいたします。

…「成年後見制度の概要⑥(同意権の中の取消権)」につづく。