寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

成年後見制度の概要④(法定後見制度と代理権)

2010年06月14日 | 成年後見制度

前回から、だいぶ時間が空いてしまいました。
なので、少し復習をします。

契約などを結ぶ際に必要になる能力を、事理弁識能力と言いました。
契約の内容、効果または自分にとっての必要性等を判断するための能力です。

一方で、認知症や精神疾患等により、この事理弁識能力をうまく発揮できない人がいます。
その様な方々も、契約等と無関係に生活をすることは出来ません。

そこで、この様な方々の事理弁識能力を補佐する制度が必要になりました。
それが、成年後見制度です。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度がありました。
ここでは、法定後見制度のご説明をします。

補佐役の人の代表的な業務は、ご本人の財産管理と身上監護です。
しかし、この2つの業務を実効あらしめるためには、補佐役の人に、何らかの権限を与えなければなりません。

それが、同意権と代理権です。

という訳で、本題です。
「じゃ、同意権、代理権って何なのよ?」です。

今回は、代理権のご説明をします。

代理権とは、ご本人に代理して、契約の締結や金銭の管理等をできる権利です。

例えば…。
ご本人のために、訪問介護事業所と契約を締結する場合を考えてみます。
この場合、代理人として、補佐役の人は、その契約の内容、効果、費用の額の妥当性やご本人にとっての必要性などを判断します。
契約締結の局面では、代理人として、署名・押印等を行います。
したがって、ご本人の署名・押印等は必要ありません。

また、その契約が適正に履行されているのかのチェックも行います。
仮に、適正に履行されていないのであれば、その是正を請求します。

更に、契約に基づく費用の支払いを行います。
ただし、あくまでご本人の代理人なので、支払い原資はご本人のお財布です。
ご本人に資金的な余力がない場合に、代理人自身のお財布から支払わなければならない義務はありません。

更に更に、訪問介護事業所に、再三にわたる是正要求をしたのに全く改善されない場合には、訪問介護契約を解除することもできます。

更に更に更に、ご本人がとんでもないことをされていた場合には、ご本人に代わって、介護事業所を相手取り、不法行為等に基づく損害賠償請求を行え、裁判もできます。
実際には、ご本人に代わって、弁護士や司法書士(一定範囲に限られます)に依頼することができます。
もちろん、補佐役の人が、ご本人に代わって、自分で裁判手続をとっても構いません。

しかし、代理権(同意権も)は、ご本人の事理弁識能力を補佐するためのものです。
したがって、ご本人の事理弁識能力の程度により、できることが限定される場合があります。
この点について、その大枠は、前回の記述をご参照ください。

…「成年後見制度の概要⑤(法定後見制度と同意権)」につづく。