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Oil on Canvas

19~20世紀前半の西洋美術、日本近代美術などに興味があります。気になったことを調べつつ、メモしています。

【展覧会】 モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち @ホテルオークラ東京・アスコットホール

2013-08-23 22:24:46 | 展覧会・美術館・博物館

 ホテルオークラに行ってきた。こういう大きなホテルで展覧会があるというのは今回初めて知った。目的は「第19回 秘蔵の名品 アートコレクション展 モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち フランスの美しき街と村のなかで」を見るために。 

  個人的には、普段見られない「印象派」のプライベート・コレクションを楽しみに。

 
 展覧会の内容は、フランスをテーマにした近代絵画展。19世紀後半から20世紀前半にかけて、フランス人・日本人画家の絵画95点。個人や企業に所蔵されているコレクションを見ることができる。

 内容は大きく分けて、印象派とその時代の画家による絵画・リトグラフ等。エコール・ド・パリやその時代の日本人画家たちの風景画と人物画を全5章に分けて展示。



 
  
 第1章   「19世紀パリの画家たち ― 自然と都会の饗宴」 


 ◆ 5 『ヒースの原』 (アルフレッド・シスレー,1880年)

 一瞬、コロー・・・?と思うほど、暗い色調(当時のスタンダードかもしれないが・・・)。残念ながら、書籍やデータがないので、もうデティールを忘れてしまっている。今まで見たことなかった。


 ◆ 6 『菫の花束を持つカミーユ・モネ』 (クロード・モネ,1876-77年頃)

 インパクトのあるとても大きな1枚の絵。モネの最初の妻、カミーユ・モネの肖像画。2007年の『大回顧展モネ』でも出品されていたようだが、実物を見るのはこれが初めて。カタログの解説にも記載があるが、カミーユが正面からしっかり描かれている作品という点で珍しい。

 個人的な印象だと、モネの場合カミーユを何かのテーマを表現するためのツールとして描くことが多い。具体的に、この作品では、ある程度ぼんやりと描かれている背景や服などに比べて、スミレの花束とカミーユの顔はしっかりと丁寧に描かれているところが特徴的。



 第2章   「ランス郊外」 


 ◆ 20 『森の小憩、ジェルブロワ』(アンリ・ル・シダネル,1925年)

 涼しそうな緑の回廊が心地よさそうな1枚。アンリ・ル・シダネルの印象派的にも、新印象派的にも見える1枚。「エミールクラウスとベルギー印象派」展でも『黄昏の古路』という作品を見たが、その時はほとんど印象に残らなかったが、この作品は少し離れて全体を見るととても美しい。
 


 ◆ 15 『道(サン=シメオン農場の前)』 (クロード・モネ,1864年)

 モネ初期の小さな作品。色のトーンは抑え目。同時期に描かれた、国立西洋美術館の『並木道(サン=シメオン農場の道)』と対で見ると面白そうだが、両者のサイズの差が違いすぎて難しそう。。

 ◆ 17 『睡蓮』(クロード・モネ,1897-98年)

 モネの1880年代の睡蓮は、まだ葉の輪郭と花がはっきりと描かれている、一方で、色彩は柔らかく、全体としてこの2つの対比が美しく感じる。これも初めて見る睡蓮。


 ◆ 32 『カーニュ農園』(ピエール=オーギュスト・ルノワール, 1890-93年)

 ルノワールの色彩豊かなカーニュの風景画。これも初めて見る。



 第3章   「パリ ― ユトリロ佐伯」 


 展示ホールの中央に、それぞれの作品が、パリのどこで描かれていたかを地図で示してあるブースがあって、ユニークな見せ方。



 全体的に、フランス人の画家、モーリス・ユトリロと日本人画家、佐伯祐三。2人の見ている視点が対照的なのが印象深かった。ユトリロはパリの街を俯瞰で描いているのに対して、佐伯は街のディティールを描いている。


 外国に行くと、現地の人が素通りしてしまうような、街にあるものすべてが珍しく感じることが多いと思うので、そういう意味では両者とも自然な流れかもしれない。




 第4章   「描かれ、構図となったパリとセーヌ川 ― パリにあこがれた日本人画家たちとともに」 


 ◆ 57 『セーヌ川とパリ』(ジャン・デュフィ, 不詳)

 ラウル・デュフィの弟が描いた作品。初めて見たが、僕のような素人から見たら、「ラウル・デュフィさんですよね?」ってほど似てる。色彩も描き方もポップな感じがして、楽しくなる作品。


 ◆ 61 『残れる光』(斎藤豊作, 1912年)

 新印象主義的な風景画。並木道を、ポール・シニャックのような点が太めの点描で、回廊風に描いている彩のある作品。この絵買いたい!(って無理か。きっとものすごい価格なのだろうし)斎藤豊作。初めて知った洋画家、個人的に、これから気になっていくような気がする。



第5章 「エコール・ド・パリと1920-30年代にパリで活躍した画家たち―麗しき人物」 


 ◆ 86 『西洋婦人像』(児島虎次郎, 1911年頃)


 個人的に好きな日本人の印象派画家、児島虎次郎を東京で見れることができて良かった。 


 ◆ 93 『パリ風景』(藤田嗣治, 1956)

 いままでは、女性をただ、淡々と人形のような独特の表情で描いている印象があって、積極的に見たいとは思わなかった。でも、この絵でフジタの印象が少し変わった。

 これまで、何枚か見てきた作品とは異なり、ストーリーがある。貧しい姿の母子がパリのベンチで寝ている姿を描いた絵。反対側の道路には、遠くに整った黒い服を着た女性たちが大勢歩いている。あたりまえだが、華やかなパリにも、こういう現実が存在していて。

 フジタがどう感じ、これを描いたのかはわからないが・・・。個人的には、対比からくる冷たさよりも、母子の寝る姿に、生きている温もりを感じた。そういう感情が”乳白色”で優しくつつみ込んである。素晴らしい1枚。


 この展覧会、藤田嗣治も6展出品されていて、ある程度まとめてみることができる。「モネ、ユトリロ、佐伯、フジタ」としてもよかったように思う。
 

  展覧会の全体の感想 


 
 第1,2章通じて、印象派の主要な画家の作品はピサロ1点、シスレー1点、ルノワール4点、モネ6点。印象派周辺の画家も含めて割合として決して多くはない。しかし1枚1枚はいい絵。特に、ここに挙げた絵など、個人的に珍しいと思う作品なので、見ることができてよかった。

 また、いままで少し敬遠気味だったキスリングやモディリアーニ、フジタといったエコール・ド・パリの画家たちの肖像画も前よりも興味を持ってみることができた。

 あと洋画家、斎藤豊作の作品に出会ったのは収穫。どうも、児島虎次郎と親しかったようだ!しかもジヴェルニーのモネに会いに児島と同行したのは斎藤だった。(「いいな」と思う感覚って、こうやって繋がってくるんだぁと少し感動)。今後注目して見ていきたい。

 これからも「印象派」をメインに見ていくと思うが、この展覧会で、”見る幅”が少し広がった。


 また、半券落としてしまって、すこし時間が経っていたのに、ホテルのスタッフの方が、気づいて持ってきてくださったり。老舗ホテル。受付の方たちの対応がなんとなく、品があったり、普段とは違う感じの雰囲気で見れた展覧会だった。

 この展覧会はホテルオークラがホテルの社会性・公共性を活かした芸術支援活動として、1994年より続けて、今回で19回を数えるチャリティー展。企業・個人コレクターの協力を得て、純益は赤十字に寄付されるようだ。機会があったらまた来てみたい。

 
 [展覧会]   第19回 秘蔵の名品 アートコレクション展
          モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち
          - フランスの美しき街と村のなかで -  
  [場所]     ホテルオークラ東京・アスコットホール
  [期間]     2013年8月7日~9月1日
  [入館料]    1,200円(大人)




― 付記 (2013.12.15) ―

  《【ホテルオークラ東京】チャリティーイベント 『第19回 秘蔵の名品アートコレクション展』 日本赤十字社、NHK厚生文化事業団に純益金を寄付 》[PR TIMES (2013.10.24)]

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