賀正

あけましておめでとうとうございます🎉
新年一発目の授業お疲れ様でした。
今回も様々な優れた表現が見られたので書きとどめておきたいと思います。
人物はビジュアル表現を深める上で最高のモチーフではないでしょうか?描いているうちに思いもよらない斬新なアイデアが見つかったり、どんな風に描いても面白い表現になったりと、ここまで自由度の高いモチーフはそうありません。
今回みなさんの作品でも思い出すだけでざっと20種類以上の表現(技法やスタイル)がありました。これらをさらにかけ合わせると無限に表現が作り出せるでしょう。
デザインやイラスト、様々なビジュアル表現に十分応用可能な要素ですのでぜひ用語だけでもストックして表現の幅を広げてください!
1モノトーン
2ポーズ
3コンテ パステル
4イラスト風
5装飾模様
6淡彩
7質感描写
8スタイリッシュ(キュビズム)
9ディテール描写
10雰囲気と背景
11構図とトリミング
12漫画風
13線描と質感
14象徴的表現
15日本画的線描 均質な線と堀塗り
16癖のある特徴的なタッチ
17色鉛筆
18身近な画材
19線描の重なり
20様々な肌の色(カラーリング)
1モノトーン
モノ(mono-)は「1つの」という意味で元来はモノクロもモノトーンも単色という意味ですが、一般的に「モノクロームは白黒グレーの無彩色」、「モノトーンは単色のカラー」と認識されています。
モノクロは形象の変化を濃淡で捉えた「ストイックな情動を抑えた表現」になりますが、色が少しでも加わると何らかの「感情」「情動」「心理」的な感覚を抱かせます。
どちらもピカソの有名な作品(上ゲルニカ下泣く女)ですが、モノクロとカラーでは表現がかなり違ってきます。


モノトーン
敢えて1つの色に抑制したモノトーンの表現はスタイリッシュかつ色彩心理に意図的に働きかける効果があります。
ピカソの青の時代の作品とバラ色の時代の作品


日本画家・秋野不矩あきのふくさんの群像画


モノトーンは広告写真でもよく使われる方法です。

2ポーズ
人体のポーズだけでも様々な表現を演出できます。
ロバート=ロンゴという80年代NYに活躍したアーティストは、ソーホーの屋上でモデルに野球ボールを投げつけ、それをよける姿を写真に撮り、その写真をもとに巨大な鉛筆画を描きました。都市NYに生きる人々の苦悶する姿が想起されます。


日本が誇る大天才、葛飾北斎にも様々な人間表現が見られます。


3コンテ、パステル
彩色に水彩絵の具だけでなく手軽に使えるコンテやパステルもおススメです。短時間で描くクロッキーやスケッチにも便利な上、結構幅広い表現ができます。線描から指で擦って色を塗ったりと描き方次第で質感も自在ですよ。
油彩画家・鴨居玲のパステル画


4イラスト風
イラストと言ってもアニメから雑誌の挿絵など媒体によって様々ですが、写実的な絵ではなく、用途によって形をディフオルメ(変形)させたりして1つの完成した表現を持ちます。「言い切る」ことが重要です!
最近大変活躍されているイラストレーター・くぼあやこさん(http://www.kuboayako.com/)





うまそ
5模様
人物表現では衣装の扱い方でも色々と遊べます。
輪郭線の内側の表現を自由にアレンジしてみましょう。
ウイーン分離派の画家グスタフ=クリムトの装飾的な表現



写真への応用

6淡彩
絵具の濃度を的確にコントロールすると淡彩でも十分綺麗な発色が得られます。
マチスの有名な油彩画「金魚」ですが、薄塗りで軽快な色彩の響きと透明感がこの上なく表現されています。

7質感
肌質、髪質、衣服の質感などを描き分けることも表現の幅を広げます。
肌の質感や色は人体表現の醍醐味の1つです。
ヌードを描く時により意識されると思うのでまた後日稿を改めて書きたいと思います。
8スタイリッシュ
モノトーンでも洗練されたスタイリッシュな表現が可能でした。他にもファッション画やモダンな表現としてキュビズム的なスタイルも現代でもまだまだ使われています。
フランスのファッションイラストレーター・ルネ=グリュオー



抽象化によってデザインはもちろん各ジャンルに影響を及ぼしたキュビズムの幾何学的色面表現

進化した現代版キュビズム


9ディテール 描写
質感とも共通することですが、表情を丹念に描くだけでも強い表現が可能です。
共に日本での油彩によるリアリズムのパイオニアです。
岸田劉生の麗子像

人物ではありませんが高橋由一の豆腐、参考までに。

10雰囲気(ムード)と背景
一歩踏み込んで、人物を取り巻く空間も重要な表現になります。人物の形だけでなく背景や空間も含めて表現することも大切です。
モノトーンの表現においても色相によって表現が異なって見えることが理解できたと思います。青は悲壮感が、ピンクは温かみや幸福感が感じられます。音楽でも長調と短調でそれぞれ明るさと暗さを感じるように、色でも暖色と寒色で明るさと暗さを共感覚的に感じるのです。
複数の色彩を用いた時も、使う色の分量や強さ、響き合いで調和したり支配的なトーンが決まってきたりします。色彩心理の授業で勉強したことも意識して有効活用していきましょう!

(↑原色全てが使われているが色の分量のバランスがとられていて調和して見える。目の中で色が混ざり合い灰色になる感じ。)
11構図とトリミング
人物のトリミングで表現に主張が生まれます。
画面にバランスよく人物を収めるバランス感覚も大切ですが、敢えてトリミングする事で強い主張が可能となります。
デザインでは余計なものを捨て「言いたいこと」をシンプルに表現するセンスが重要です。
⤵︎12古谷実さんのデザイン 顔のトリミングの効果を考えてみて下さい。
12漫画風アニメ風
写真のように描くのも1つの表現ですし、ディフォルメして作品の世界観の中でのリアルを追求することも1つの表現。
マンガ稲中卓球部・古谷実さんのdvdジャケデザイン

13線描と質感
線描の種類でも質や表現が変わります。
繊細な線から荒々しい線まで使い分けることで雰囲気がかなり変わります。また線の種類に即して塗りにもバリエーションが広がります。
ベルナール=ビュッフェの作品は荒い直線が特徴的

現代日本画家・内田あぐりさんの人体ドローイングとデッサン


アウトサイダーアートで注目されているヘンリー=ダーガーの繊細な線


14象徴的な表現
個人を超え人間存在そのものを探求した表現。
顔が似ていることも重要な表現ですが、情報量を敢えて減らすと抽象的な人間存在が浮き上がります。
ジャコメッティの彫刻とデッサン



日本画家・内田あぐりさんは人間の存在を一貫して追求しています。





15日本画的線描
日本画の古典的な描き方では線描と色面で人物が表現されます。
日本画家・上村松園の緊張した均質な線



線を塗り残す技法を「堀塗り」と言います。
俵屋宗達の風神雷神図や養源院の障壁画の象などにも堀塗りが多用されています。


16癖のある特徴的なタッチ
色を塗る際、タッチを強調する表現も可能です。
ゴッホは強烈なタッチで独特な表現をしています。



17色鉛筆
色鉛筆はいつも使っている鉛筆の延長でコンテやパステルよりもさらに使いやすいかもしれません。
こんなスーパーテクニックもあるようです汗


18身近な画材
今回赤鉛筆と青鉛筆に限定して描いてくれた人がいましたが、身近な画材で思いもよらない表現が見つかることもあります!流行りのチョークアートやクレヨンなんかも独特な質感がいい感じです。
吉田夏奈さんのクレヨン画です。



チョークで描いた表現

19線描の重なり
線の美しさ、また重なり合う線も2次元媒体ならではの神秘的な魅力があります。
エゴン=シーレー

以前にも紹介したパウル=ヴンダーリッヒも様々な表現を融合させた官能的な世界観があります。
構成から要素の扱い方までデザインレイアウトのハイセンスなネタの宝庫ですので要検索です。たくさんパクリましょう!




20様々な肌の色
横尾忠則

人体はどんな色で表現できるのか?
現実を超えて絵の世界観に引き込む色彩はバリエーションが無限で、実は形象と同じくらい人体表現の根幹を成すテーマでもあります。
「どんな色を使うか」は人体だけでなく静物や風景、空間に至るビュジュアル表現の世界観を形成する大きな要素です。
横尾忠則
今日紹介した作品の肌の色を振り返って鑑賞してみて下さい☝︎
意識して見ると実に沢山のカラーバリエーションがある事に驚くのではないでしょうか?
◎クラスだけでもこれだけ多くの表現方法が見つかりました。これだけでも十分デザインアイデアのヒントになるでしょう。
ビジュアル表現は幅広く豊かな要素を目的に合わせて自由自在に表現することを探求し続けることができる楽しい「遊び」です。
めい一杯遊んで下さい٩( ᐛ )و
最後にデビッド=ホックニーのポップな人体表現を紹介しておきます〜












あけましておめでとうとうございます🎉
新年一発目の授業お疲れ様でした。
今回も様々な優れた表現が見られたので書きとどめておきたいと思います。
人物はビジュアル表現を深める上で最高のモチーフではないでしょうか?描いているうちに思いもよらない斬新なアイデアが見つかったり、どんな風に描いても面白い表現になったりと、ここまで自由度の高いモチーフはそうありません。
今回みなさんの作品でも思い出すだけでざっと20種類以上の表現(技法やスタイル)がありました。これらをさらにかけ合わせると無限に表現が作り出せるでしょう。
デザインやイラスト、様々なビジュアル表現に十分応用可能な要素ですのでぜひ用語だけでもストックして表現の幅を広げてください!
1モノトーン
2ポーズ
3コンテ パステル
4イラスト風
5装飾模様
6淡彩
7質感描写
8スタイリッシュ(キュビズム)
9ディテール描写
10雰囲気と背景
11構図とトリミング
12漫画風
13線描と質感
14象徴的表現
15日本画的線描 均質な線と堀塗り
16癖のある特徴的なタッチ
17色鉛筆
18身近な画材
19線描の重なり
20様々な肌の色(カラーリング)
1モノトーン
モノ(mono-)は「1つの」という意味で元来はモノクロもモノトーンも単色という意味ですが、一般的に「モノクロームは白黒グレーの無彩色」、「モノトーンは単色のカラー」と認識されています。
モノクロは形象の変化を濃淡で捉えた「ストイックな情動を抑えた表現」になりますが、色が少しでも加わると何らかの「感情」「情動」「心理」的な感覚を抱かせます。
どちらもピカソの有名な作品(上ゲルニカ下泣く女)ですが、モノクロとカラーでは表現がかなり違ってきます。


モノトーン
敢えて1つの色に抑制したモノトーンの表現はスタイリッシュかつ色彩心理に意図的に働きかける効果があります。
ピカソの青の時代の作品とバラ色の時代の作品


日本画家・秋野不矩あきのふくさんの群像画


モノトーンは広告写真でもよく使われる方法です。

2ポーズ
人体のポーズだけでも様々な表現を演出できます。
ロバート=ロンゴという80年代NYに活躍したアーティストは、ソーホーの屋上でモデルに野球ボールを投げつけ、それをよける姿を写真に撮り、その写真をもとに巨大な鉛筆画を描きました。都市NYに生きる人々の苦悶する姿が想起されます。


日本が誇る大天才、葛飾北斎にも様々な人間表現が見られます。


3コンテ、パステル
彩色に水彩絵の具だけでなく手軽に使えるコンテやパステルもおススメです。短時間で描くクロッキーやスケッチにも便利な上、結構幅広い表現ができます。線描から指で擦って色を塗ったりと描き方次第で質感も自在ですよ。
油彩画家・鴨居玲のパステル画


4イラスト風
イラストと言ってもアニメから雑誌の挿絵など媒体によって様々ですが、写実的な絵ではなく、用途によって形をディフオルメ(変形)させたりして1つの完成した表現を持ちます。「言い切る」ことが重要です!
最近大変活躍されているイラストレーター・くぼあやこさん(http://www.kuboayako.com/)





うまそ
5模様
人物表現では衣装の扱い方でも色々と遊べます。
輪郭線の内側の表現を自由にアレンジしてみましょう。
ウイーン分離派の画家グスタフ=クリムトの装飾的な表現



写真への応用

6淡彩
絵具の濃度を的確にコントロールすると淡彩でも十分綺麗な発色が得られます。
マチスの有名な油彩画「金魚」ですが、薄塗りで軽快な色彩の響きと透明感がこの上なく表現されています。

7質感
肌質、髪質、衣服の質感などを描き分けることも表現の幅を広げます。
肌の質感や色は人体表現の醍醐味の1つです。
ヌードを描く時により意識されると思うのでまた後日稿を改めて書きたいと思います。
8スタイリッシュ
モノトーンでも洗練されたスタイリッシュな表現が可能でした。他にもファッション画やモダンな表現としてキュビズム的なスタイルも現代でもまだまだ使われています。
フランスのファッションイラストレーター・ルネ=グリュオー



抽象化によってデザインはもちろん各ジャンルに影響を及ぼしたキュビズムの幾何学的色面表現

進化した現代版キュビズム


9ディテール 描写
質感とも共通することですが、表情を丹念に描くだけでも強い表現が可能です。
共に日本での油彩によるリアリズムのパイオニアです。
岸田劉生の麗子像

人物ではありませんが高橋由一の豆腐、参考までに。

10雰囲気(ムード)と背景
一歩踏み込んで、人物を取り巻く空間も重要な表現になります。人物の形だけでなく背景や空間も含めて表現することも大切です。
モノトーンの表現においても色相によって表現が異なって見えることが理解できたと思います。青は悲壮感が、ピンクは温かみや幸福感が感じられます。音楽でも長調と短調でそれぞれ明るさと暗さを感じるように、色でも暖色と寒色で明るさと暗さを共感覚的に感じるのです。
複数の色彩を用いた時も、使う色の分量や強さ、響き合いで調和したり支配的なトーンが決まってきたりします。色彩心理の授業で勉強したことも意識して有効活用していきましょう!

(↑原色全てが使われているが色の分量のバランスがとられていて調和して見える。目の中で色が混ざり合い灰色になる感じ。)
11構図とトリミング
人物のトリミングで表現に主張が生まれます。
画面にバランスよく人物を収めるバランス感覚も大切ですが、敢えてトリミングする事で強い主張が可能となります。
デザインでは余計なものを捨て「言いたいこと」をシンプルに表現するセンスが重要です。
⤵︎12古谷実さんのデザイン 顔のトリミングの効果を考えてみて下さい。
12漫画風アニメ風
写真のように描くのも1つの表現ですし、ディフォルメして作品の世界観の中でのリアルを追求することも1つの表現。
マンガ稲中卓球部・古谷実さんのdvdジャケデザイン

13線描と質感
線描の種類でも質や表現が変わります。
繊細な線から荒々しい線まで使い分けることで雰囲気がかなり変わります。また線の種類に即して塗りにもバリエーションが広がります。
ベルナール=ビュッフェの作品は荒い直線が特徴的

現代日本画家・内田あぐりさんの人体ドローイングとデッサン


アウトサイダーアートで注目されているヘンリー=ダーガーの繊細な線


14象徴的な表現
個人を超え人間存在そのものを探求した表現。
顔が似ていることも重要な表現ですが、情報量を敢えて減らすと抽象的な人間存在が浮き上がります。
ジャコメッティの彫刻とデッサン



日本画家・内田あぐりさんは人間の存在を一貫して追求しています。





15日本画的線描
日本画の古典的な描き方では線描と色面で人物が表現されます。
日本画家・上村松園の緊張した均質な線



線を塗り残す技法を「堀塗り」と言います。
俵屋宗達の風神雷神図や養源院の障壁画の象などにも堀塗りが多用されています。


16癖のある特徴的なタッチ
色を塗る際、タッチを強調する表現も可能です。
ゴッホは強烈なタッチで独特な表現をしています。



17色鉛筆
色鉛筆はいつも使っている鉛筆の延長でコンテやパステルよりもさらに使いやすいかもしれません。
こんなスーパーテクニックもあるようです汗


18身近な画材
今回赤鉛筆と青鉛筆に限定して描いてくれた人がいましたが、身近な画材で思いもよらない表現が見つかることもあります!流行りのチョークアートやクレヨンなんかも独特な質感がいい感じです。
吉田夏奈さんのクレヨン画です。



チョークで描いた表現

19線描の重なり
線の美しさ、また重なり合う線も2次元媒体ならではの神秘的な魅力があります。
エゴン=シーレー

以前にも紹介したパウル=ヴンダーリッヒも様々な表現を融合させた官能的な世界観があります。
構成から要素の扱い方までデザインレイアウトのハイセンスなネタの宝庫ですので要検索です。たくさんパクリましょう!




20様々な肌の色
横尾忠則

人体はどんな色で表現できるのか?
現実を超えて絵の世界観に引き込む色彩はバリエーションが無限で、実は形象と同じくらい人体表現の根幹を成すテーマでもあります。
「どんな色を使うか」は人体だけでなく静物や風景、空間に至るビュジュアル表現の世界観を形成する大きな要素です。

今日紹介した作品の肌の色を振り返って鑑賞してみて下さい☝︎
意識して見ると実に沢山のカラーバリエーションがある事に驚くのではないでしょうか?
◎クラスだけでもこれだけ多くの表現方法が見つかりました。これだけでも十分デザインアイデアのヒントになるでしょう。
ビジュアル表現は幅広く豊かな要素を目的に合わせて自由自在に表現することを探求し続けることができる楽しい「遊び」です。
めい一杯遊んで下さい٩( ᐛ )و
最後にデビッド=ホックニーのポップな人体表現を紹介しておきます〜










