へなちょこな詩 その４８ 宮尾昌成

１１年前の春、

僕は「だすけ、せったねかね」っていう歌を作った

CDとカセットテープを制作した

この地域の方言で書いた詞に曲をつけて

僕が歌ったものがお笑いバージョンで

地元の歌うま女子のMさんが歌姫バージョン

もちろん、自費制作で、CD、１００枚　カセット、１００個だけ

だけど、ポスターまで作って

発売日まで決めちゃって

地元のレコード店さんや、電気屋さんにも置いてもらった

僕が勝手に決めた４月の発売日当日

地元の新聞社さん３つくらいにファックスした

方言で歌作りましたって

だけど、その後

１週間が経ち、２週間が経ち・・・・・

ぜんぜん、反応が無かった

あれ？ん？僕もだんだん、焦ってきた

だけど、３週間が経とうとしていたある日

立て続けに、取材依頼の連絡が入った

その後、取材を受け、数日後

朝刊に、僕の記事がでっかく載った

記事には家の電話番号が記されてたので

朝から、電話が鳴り続いた

もちろん、CD注文の電話だった

めっちゃ、嬉しかった

新潟県内外から、電話が殺到した

直接、家に買いに来てくれる人もいた

嬉しいのは確かなんだけど

自費制作だから、かなり売れないと

元が取れない

作ったCD１００枚とカセット１００個が完売したところで

まだまだ、ぜんぜん赤字なのだ

そんな時、一本の電話が入った

父が電話に出た

最初、嬉しそうに話していた

ところが、父の口調のトーンが急に下がった

そして父は、じゃあ、切るよ！って

一方的に、電話を切ってしまった

電話の相手は、親戚だった

僕のいとこだった

新聞を見たって電話してくれたんだ

だけど、父は怒っていた

新聞見たんだと！ただ、それだけ！

なんで、CD買うって言わないんだ！？

親戚のくせに！いとこのくせに！

なんだ、あれ！

父は、すごく、怒っていた

いや、怒ってくれていた

僕のために、真剣になって怒ってくれていた

僕の気持ちを思って

父は、マジに怒ってくれていた

僕の気持ちを、こんなに解かってくれてる人が他にいるだろうか

まるで自分のことのように怒ってる父が

すごく、嬉しかった

すごく、ありがたいと思った

この人のために、

僕も頑張らなきゃいけないって思った

明日の父の日、

プレゼントを持って行くよ

特製のまっ赤なTシャツを作ってもらったんだよ

いつも通りのLサイズだよ

「お父さん、ありがとう　２０２０　父の日」

って文字を入れてもらったんだよ

施設にいる父に

僕は明日、プレゼントを持って行く