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「ウォータード・ストック」の恐怖、再び

2017-01-11 | 会計・株式・財務
BSフジで現在再放送している「冬のソナタ」に13年ぶりにハマっている今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
交通事故と記憶喪失。この「鉄板」組み合わせが紡ぎ出す、ひねりにひねったストーリー。ほどよく記憶が薄れていることもあって、改めて見てみると実に新鮮なんですよね。
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一時期ほどのブームではないですが、韓流ドラマは今なお、多くのファンを魅了しているようでして、最近では中高年向けにこんなガイドブックも出ております。確かに、韓国のドラマや映画は脚本が実によく練られており、この点は日本のエンタメ界は見習って欲しいものです。
(但し、「こじらせるストーリーが得意」なお国柄だとしても、慰安婦問題はこれ以上こじらせて欲しくない)

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さて本題。
13年ぶりの冬ソナで思い出したのですが、本日提供するネタも実に10年ぶり。

月刊 企業会計1月号に東大名誉教授の斎藤静樹氏による論考「のれんの償却と減損 -企業結合会計基準の迷走-」が掲載されております。

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詳細は原文をお読み頂きたいのですが、斉藤先生は「のれん非償却会計」について否定的な立場。
「歴史の教訓:結びに代えて」で次のように記載しております。

1920~30年代に確立したといわれる米国の近代的な会計制度は、不十分なのれんの償却の後始末という一面をもつものであった。
19世紀末葉から20世紀初頭の合併ブームが生み出した企業には、多額ののれんを抱えたまま十分に償却しないものも多く、その「水増し資本」が招いた市場の保守的なリスク評価と資本コストの上昇によって、結局はのれんの切下げに追い込まれる。
しかし積み上がった残高はもはや利益で償却できるレベルではなく、代わりに資産の簿価を切り上げて創出した剰余金にチャージする実務が横行する。それが再び市場の不信を招いたのである。
(中略)全般に多額ののれんが積み上がっていると指摘される昨今の実情には、歴史を振り返って「いつか来た道」という懸念を禁じ得ない。


この論考を読んで私は、ちょうど10年前に書いたネタ 2007年1月25日付「ウォータード・ストックの恐怖」を思い出しました。
当時、斉藤先生は全く同じ内容で警鐘を鳴らされていたのです。


「それで? 別にいいんじゃない?」
そう思われる方は多いかと思われますが、ちょっと待って下さい。


当時、その後に何が起きたのか?


そうです。1年半後に、あのリーマンショック。
のれんの巨額減損などもあり、恐れていたことが一部実現してしまったのです。


ということは、今回もリーマンショック級の大調整が来るかもしれませんよね。
折しも、NYダウは歴史的高値。S&Pなど主要な指数を構成する会社の多くが純資産の100%を超えるのれん又は無形資産を計上し、一部の会社は時価総額の100%を超えている等の調査結果もあり、機は熟しているのかも。

金融緩和とのれん非償却。この「鉄板」組み合わせが紡ぎ出す、暴走気味なM&Aスト-リー。そろそろいい加減にしろよと言いたいのは斉藤先生と私だけか。

ちなみに、東洋経済オンラインで「のれんが自己資本に対して過大な企業」のランキングを掲載しておりましたのでご参考下さい。



またいきます。




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