まずは日経記事。続いてコメント。
一見すると不可解なんですけど、訳があります。
(ちょっと分かり難い内容です。すいません。)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
■三越、前2月期経常益199億円に上方修正
三越は23日、2006年2月期の連結経常利益が前の期比18%増の199億円に
なったようだと発表した。従来予想より43億円上回る。
ただ、最終損益は90億円の黒字(前の期は40億円の赤字)と、従来予想の
142億円の黒字を下回った。
公認会計士協会の方針変更に伴い、繰延税金資産のうち処分予定のつかない
土地の評価損分を取り崩し、法人税等調整額に計上したため。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(コメント)
①連結経常利益は従来予想よりも43億円上回ったのに、
何故、最終損益は従来予想より52億円も下回ったのか。
その理由は、記事にありますように、多額の「法人税等調整額」が発生したため。
「法人税等調整額」ってのは、税効果会計に特有の勘定科目でして、
簿記の仕訳上、相手方勘定に、「繰延税金資産」や「繰延税金負債」が使われます。
今回の会計処理は仕訳にするとこんな形になります。、
(借方) (貸方)
法人税等調整額 xxx億円 (再評価に係る)繰延税金資産xxx億円
<会計上の税金の増加> <資産の減少>
この意味するところは、
xxx億円分、将来の税金が節約できると思っていたんだけど、
そういかなくなったので、修正しました。
ということなのでしょう。
②では、何故、「そういかなくなった」のか?
日本公認会計士協会が2/22に発表したリサーチ・センター審理情報〔№23〕
「投資事業組合への出資及び土地再評価差額金に係る繰延税金に関する
監査上の留意事項について」 にその答えがあります。
http://www.jicpa.or.jp/technical_topics_reports/200/200-20060222-01-01.pdf
土地再評価法3条によりますと、土地を再評価した場合の評価差額金
(=土地の時価-土地の簿価)×(1-実効税率40%))は、
個々の土地ごとに計算することになっておりますが、
特に含み損のある土地の場合は、こんな会計処理をしたことになります。
<ある土地の時価50、簿価100、税率40%の場合>
(借方) (貸方)
再評価差額金 30 土地 50 (←資産の減少)
再評価に係る繰延税金資産 20
ここで「再評価に係る繰延税金資産」っていうのは、次のような意味です。
評価損が▲50出たけれど、将来、本業で十分な利益が出せれば、この損失は
吸収できて将来20(=50×40%)だけ税金を節約することができる。
だから20は回収可能性があるから資産として計上する。
こんな理屈でしょう。
ところが、今回の通達では、
会計士協会の別の規定(監査委員会報告66号)に則って、
将来売却するなどして、この繰延税金資産を回収(=税金を節約)できるっていう
見通しが立たないのなら、事実上、取り崩しなさい。
というもの。
③ですが、三越のケースに当てはめてみようと、貸借対照表を見ましたが・・・・。
土地再評価法に基づく再評価はやっていない。
しかし、この会社、平成15年9月、株式会社三越(旧)と株式会社名古屋三越、
株式会社千葉三越、株式会社鹿児島三越、株式会社福岡三越が「新設合併」して
おりまして、その際、保有土地を一部再評価していたんですね。
で、含み損部分の繰延税金資産は注記を見ますとH17/2期有報で
「合併受入資産評価損 22,701百万円」
今回は、これを理由とする繰延税金資産の計上ができなくなったので、
全部または一部を取り崩した、ということなのでしょう。
しかし、今回の当社プレスリリースからはさっぱり分かりません。
情報開示の質は、お粗末な部類に入ると思います。
④今回の会計士協会の指導強化によって、「再評価に係る繰延税金資産」の
取り崩しにより、経常利益までは増益だけど、最終損益は減益っているケースが
今後も結構数多くでてくると思います。
三越は2月決算でしたので早めにアナウンスがありましたが、
今後3月決算会社で数多く出てくると思いますので留意下さい。
一見すると不可解なんですけど、訳があります。
(ちょっと分かり難い内容です。すいません。)
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■三越、前2月期経常益199億円に上方修正
三越は23日、2006年2月期の連結経常利益が前の期比18%増の199億円に
なったようだと発表した。従来予想より43億円上回る。
ただ、最終損益は90億円の黒字(前の期は40億円の赤字)と、従来予想の
142億円の黒字を下回った。
公認会計士協会の方針変更に伴い、繰延税金資産のうち処分予定のつかない
土地の評価損分を取り崩し、法人税等調整額に計上したため。
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(コメント)
①連結経常利益は従来予想よりも43億円上回ったのに、
何故、最終損益は従来予想より52億円も下回ったのか。
その理由は、記事にありますように、多額の「法人税等調整額」が発生したため。
「法人税等調整額」ってのは、税効果会計に特有の勘定科目でして、
簿記の仕訳上、相手方勘定に、「繰延税金資産」や「繰延税金負債」が使われます。
今回の会計処理は仕訳にするとこんな形になります。、
(借方) (貸方)
法人税等調整額 xxx億円 (再評価に係る)繰延税金資産xxx億円
<会計上の税金の増加> <資産の減少>
この意味するところは、
xxx億円分、将来の税金が節約できると思っていたんだけど、
そういかなくなったので、修正しました。
ということなのでしょう。
②では、何故、「そういかなくなった」のか?
日本公認会計士協会が2/22に発表したリサーチ・センター審理情報〔№23〕
「投資事業組合への出資及び土地再評価差額金に係る繰延税金に関する
監査上の留意事項について」 にその答えがあります。
http://www.jicpa.or.jp/technical_topics_reports/200/200-20060222-01-01.pdf
土地再評価法3条によりますと、土地を再評価した場合の評価差額金
(=土地の時価-土地の簿価)×(1-実効税率40%))は、
個々の土地ごとに計算することになっておりますが、
特に含み損のある土地の場合は、こんな会計処理をしたことになります。
<ある土地の時価50、簿価100、税率40%の場合>
(借方) (貸方)
再評価差額金 30 土地 50 (←資産の減少)
再評価に係る繰延税金資産 20
ここで「再評価に係る繰延税金資産」っていうのは、次のような意味です。
評価損が▲50出たけれど、将来、本業で十分な利益が出せれば、この損失は
吸収できて将来20(=50×40%)だけ税金を節約することができる。
だから20は回収可能性があるから資産として計上する。
こんな理屈でしょう。
ところが、今回の通達では、
会計士協会の別の規定(監査委員会報告66号)に則って、
将来売却するなどして、この繰延税金資産を回収(=税金を節約)できるっていう
見通しが立たないのなら、事実上、取り崩しなさい。
というもの。
③ですが、三越のケースに当てはめてみようと、貸借対照表を見ましたが・・・・。
土地再評価法に基づく再評価はやっていない。
しかし、この会社、平成15年9月、株式会社三越(旧)と株式会社名古屋三越、
株式会社千葉三越、株式会社鹿児島三越、株式会社福岡三越が「新設合併」して
おりまして、その際、保有土地を一部再評価していたんですね。
で、含み損部分の繰延税金資産は注記を見ますとH17/2期有報で
「合併受入資産評価損 22,701百万円」
今回は、これを理由とする繰延税金資産の計上ができなくなったので、
全部または一部を取り崩した、ということなのでしょう。
しかし、今回の当社プレスリリースからはさっぱり分かりません。
情報開示の質は、お粗末な部類に入ると思います。
④今回の会計士協会の指導強化によって、「再評価に係る繰延税金資産」の
取り崩しにより、経常利益までは増益だけど、最終損益は減益っているケースが
今後も結構数多くでてくると思います。
三越は2月決算でしたので早めにアナウンスがありましたが、
今後3月決算会社で数多く出てくると思いますので留意下さい。
これ・・・どう思います?