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「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム」の会計処理案に思う

2006-09-26 | 会計・株式・財務

いつもご覧下さり誠に有難うございます。
たまには会計の話をさせて下さい。

本日付で、財務会計基準機構のHPに国際会計基準審議会IASBが
国際財務報告解釈指針委員会IFRICの草案として、
カスタマー・ロイヤルティ・プログラムに関する指針案が公表されたことが掲載されておりました。 http://www.asb.or.jp/html/iasb/ed/comments20060907.php

カスタマー・ロイヤルティ・プログラムとはご存知の通り、顧客が商品又はサービスを購入した際に、
当該顧客に対して付与されるポイント、マイレージ、その他のポイントサービス
(award credits/credits)です。

で、今回の指針案はこのプログラムを提供する企業の会計処理を取り扱っています。


会計上の論点としては2つあるようです。

1つ目のアプローチは、費用計上
ポイントサービスが付与される当初販売時点で、費用を引当計上するものである。
この場合の金額は、商品又はサービスを無償あるいは値引きして提供することで
生ずると予想される費用に基づく。
このアプローチの論拠は、ポイントサービスは当初の販売を確保するための
付随費用であり、当初販売時に認識されるべきとするものである。

2つ目のアプローチは、売上からの控除
当初販売の受取額を2つの構成要素-当初販売時に引き渡された
商品又はサービスの価値に見合う額と、
ポイントサービスの価値に見合う額とに分けるものである。
前者の構成要素に配分された受取額は、当初販売時点で収益認識される。
一方、ポイントサービスに配分された受取額については、
顧客にポイントと引き換えに、
無償あるいは値引きして商品又はサービスを提供するか、
第三者に同様の義務を負ってもらう契約をする(支払いも行う)か
のいずれかによって、ポイントサービスの債務を履行するまでは、
負債として繰延べる
こととなる。

そしてこの解釈指針案では、なんと、すべての企業に2つ目のアプローチ(実質上の値引きとして売上から控除)を適用することを提案しています。

米国でもわが国でも実務的には1つ目のアプローチ「費用処理」が多いようですので、
この指針案が認められるとなると、ちょっとした混乱が起こるかもしれません。

日本ではこうしたプログラムを提供する上場企業でポイント引当金などの
費用処理すらしていない、っていう企業はさすがに無いでしょうから、
仮にこの基準が日本の会計基準に適用されたとしても
利益自体が大きく減少することは無いとは思います。
(但し、航空業での処理→ポイント販売損益とかは不透明ですけどね)

それでも、売上値引ということになると、売上高をベースとした諸効率、
例えば粗利益率や営業利益率などが変化してしまいますので、
いろいろと面倒なことになるかも知れません。

この論点に関連して、先日、野村総合研究所が「2010年の企業通貨」という書籍を
東洋経済新報社から出版しております。ポイントエコノミー今後がどう変貌を遂げていくのか、有益な示唆を与えていると思います。
こちらの話は、また後日ご紹介しましょう。
(関連HP)
http://www.nri.co.jp/publicity/n_letter/2006/pdf/nl20060902.pdf


以上、ご参考まで。

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p.s. 冒頭(概要文)のクイズの答え。
     一例を挙げてみますと・・・・・・・・ 「半分です」。
     
     「何名働いているのか?」という質問に対して、
     「そこで実質に働いている人の割合」で答えているところに、この面白さがあると思いますが。
     いかがでしたでしょうか?

 

 


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1 コメント

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Unknown (名無しというハンドルネーム)
2006-09-26 19:11:56
 半分も仕事をしているのですか。実際会社に貢献している人は何割?仕事をしたような気になっている人は何割でしょう。答えた人は、自分はどっちだと思っているでしょう?
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