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敵対的買収に備えた”意外な”企業防衛手段とは?

2005-10-20 | 事業再生・M&A
今、書店に行きますと「新・会社法」に匹敵するくらい
「M&A」関連の本が出ています。
こうした書籍にも、通り一遍の防衛手段が書かれていますが、
実務上適用が難しいものがあったりして、
なかなか表題の問いの「解」が見出せないでいました。

でもあったんですね。

「持株会社」化です。


実務界で物議を醸した実例があります。
記憶に新しい、UFJグループをめぐっての、
三菱東京FG(フィナンシャルグル^プ)と三井住友FGの攻防です。

まず事案を見てみましょう。

昨年8月、三井住友FGはUFJ銀行に対して5000億円の資本支援を
前提に合併を提案。

これに対して、三菱東京FGは、上場持株会社UFJホールディングス社
の資本の希釈化の影響を避けるために、ホールディング社ではなく、
その子会社のUFJ銀行に対し7000億円の資本増強を行い、
UFJ銀行は、三菱東京FGに対して「議決権のない優先株式」を
発行したのです。

この優先株は、下記のトリガー事由が発生すると、議決権株式に転換でき、
結果として、三菱東京FGは他の買収者を排除することができることと
なったのです。

 ①UFJホールディングス株の3分の1を超える他の株主の出現、
 ②三菱東京FG以外の第三者とUFJホールディングスとの
  経営統合が株主総会で承認された場合、
 ③以上の場合には、UFJホールディングスは優先株の30%相当の
  ペナルティを付して原価で買い戻さなければならない。

そして、三菱東京FGはUFJ銀行に対して拒否権を有する
一種の「黄金株」を手にすることになったのです。

(参考:「黄金株」=議決権について種類の異なる株式)

ところが、待ってください。
実は「黄金株」は証券取引所より、適法であっても、
投資家の平等の権利を侵害する可能性があるとして、
「自粛要請」が出されているのです。

何故、発行できたのでしょう?

それは、本件では上場会社のUFJホールディングスではなく
100%子会社で非上場のUFJ銀行が発行したからです。

これは強烈で、他社でも模倣できてしまいます。
買収を恐れる普通の事業会社が、
  上場会社=持株会社、
  傘下の100%子会社=事業会社
となるように自社を持株会社として、
100%の株式を保有するところの事業子会社を設立して、
有事を想定して傘下の完全子会社が拒否権付優先株等を第三者
(事業上のパートナーなど)に発行しておけば、
敵対的買収の手が及ばないようになります。


最近、持株会社化する企業が増えているのは
実はこうしたメリットも追求していたんですね。
おそらく。


但し、この防衛策は、親会社(持株会社)の株主の権利を奪う
という否定的な見解もあり、定説を見ないのが実情です。
今後いろいろ議論を尽くすべき論点だと思います。


<参考文献>
■持株会社化による企業防衛にどちらかというと賛成派

企業防衛の要点

商事法務

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■持株会社化による企業防衛にどちらかというと反対派
  (名古屋大学 中東教授)
M&A攻防の最前線―敵対的買収防衛指針

金融財政事情研究会

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