こっそり読書日記

HQの感想。ネタバレあり。

マープルシリーズ2 シタフォードの謎

2018年06月03日 | アガサ・クリスティ ミス・マープル

「終りなき夜に生れつく」を読んだり見たりした後、やっぱ単純明快な素人探偵ものよねと
マープルシリーズを調べていたら
ドラマ化されたなかで「シタフォードの謎」だけまだ感想もなかったと気づき
さっそくとりかかったものの、未読だった原作はノンシリーズでした・・という落ちがついて
さらにドラマ版は原作からとんでもなく改変されていて、ただでさえ怪しい登場人物多めなのに
犯人や動機、殺害方法まで変えてしまうって、ありなの?って驚きました
それでもこれでドラマ版のマープルシリーズは完全制覇ということで、一息つけました
以下2度と原作は読まないだろうからと、原作との違いも含めてネタバレしてますから
未読やドラマ版を観てない方は進まないでください



原作は The Sittaford Mystery 1931 「シタフォードの秘密」
               (1985 ハヤカワミステリ文庫 田村隆一訳)

登場人物は

ジョセフ・アーサー・トリヴィリアン大佐(60歳という年齢より51,2歳にみえる)
シタフォード荘の持ち主 
10年前海軍を退役した時、資産を投じてシタフォードに居を構えることにして広大な土地を購入
自宅のシタフォード荘以外に小さなコテージ6軒も建てて、そのうちの一軒には親友のバーナビ少佐
他は貸し出してと、拝金主義でなかなかのしまりやってキャラ

ドラマ版では クライブ・トリヴェリアン大佐で、キャラ設定も次期首相候補という現役感満々 
演じる Timothy Dalton ティモシー・ダルトンさんと言えば、「007」や「ジェイン・エア」より
私生活でのヴァネッサ・レッドグレイヴさんとのパートナー関係にビックリした遠い記憶が・・
今回のトレヴェリアン役は、原作の女嫌いというイメージとは程遠かったけど
ダルトンさんならではというか、爺が若い女の子と結婚って設定にはあってたような

ジョン・エドワード・バーナビ少佐    トレヴェリアン大佐の友人
ドラマ版では何故少佐の名前をエンダビーに変えたのか?こんなややこしい改変あり?
大佐の政務官って設定に変えられたジョン・エンダビー役
演じる Mel Smith さんは、観たことのあるお顔だわと思って出演作チェック
「華麗なるペテン師たち」で印象に残っていたのかな
俳優での出演作とコメディアン(?)としてご本人出演が同じくらいで、あちらでは有名な方なのかなと
残念ながら2013年に亡くなられていました

ウィリット夫人と娘のヴァイアリット シタフォード荘の住人
シタフォード荘をトレヴェリアン大佐から借り受けた南アフリカから来た裕福な母娘ってことで
何故雪で閉ざされてしまうような時期にわざわざ法外な家賃を払ってまで滞在しているのかと
不思議がられていたが、コテージの住人を招き入れたり訪問したりと社交的

ドラマ版ではウィリット母娘が滞在するのは、スリー・クラウンホテルで
テーブル・ターニング(交霊術会)を行うのもこのホテル
ちなみに交霊術会でテーブル自体がウィジャボードになってましたが
原作では普通のテーブルで、霊が降りてくるとテーブルの脚をカタカタいわせて知らせるって感じで
コックリさんなら誰かが動かしているんだなと思えるけど、テーブルをカタカタはなかなか難しい気も

ウィリット夫人役は  Patricia Hodge
ポワロシリーズの「ビッグ・フォー」や「華麗なるペテン師たち」
古いところではシャーロック・ホームズリシーズ「第二の血痕」レディ・ヒルダ役とかで印象に残るお顔

娘のヴァイオレット役は Carey Mulligan
出演時21歳くらいだから、童顔のお顔がよけい幼く見えて
下手するとトレヴェリアン大佐ロリコンか?って思えるくらいういういしいキャリーさんでした

エヴァンズ 大佐の下男 エヴァンズの妻 リベッカ

シタフォード荘の隣人(コテージの住人)
ワイアット大佐    病人でほとんどコテージから出ない、インド人の召使アブダル
ライクラフト      鳥類学と犯罪学の研究者、小柄でひからびたような外見
キャロライン・パーシハウス 中年を過ぎた婦人で、ミス・マープル的な観察眼を持つ
カーティス夫妻    老夫妻 時々部屋を貸し出すことも
デューク      一番新しい入居者で、大柄で、控えめな好人物という噂

ロナルド・ガーフィールド  キャロラインの甥
ペリング夫人  スリー・クラウン館の女主人

ジェニファ・ガードナー 大佐の妹
メリー・ピアソン      〃

ロバート・ガードナー  ジェニファの夫

ジェイムズ シルヴィア ブライアン  メリーの子供

マーチン・ディアリング  シルヴィアの夫

チャールズ・エンダビイ  新聞記者
原作ではエミリーに好意を持って、真相究明を手伝う新聞記者(特ダネを狙う野心もあり)
ドラマ版ではチャールズ・バーナビが新聞記者で、実は 犯人
James Murray
出演作履歴をみてもほとんど観たことないものばかりでしたが、私生活では
「ミストレス」や「大聖堂」、ポワロの「ビッグ・フォー」に出てたサラ・パリッシュさんが奥様なのね

エミリー・トレフューシス(トレフュシス)
原作ではトレヴェリアン大佐の妹メリーの息子であるジェイムズの婚約者で
へぼいけど心優しいジェイムズが殺人など犯すはずがないというゆるぎない信頼の元
犯人探しに奔走する美しい女性
ドラマ版では当のジムがクソやろう過ぎて無実とわかっていても犯人であってくれと願うほど
マープル繋がりにするためか、レイモンドと以前付き合ってたことがあると

ジムとチャールズの間で揺れ動く女心的な設定ですが
原作ではチャールズを利用するしたたかさや、情報を聞き出すためなら女優ばりに嘘も付けるし
涙も流せる、行動的で猪突猛進型の女性(「何故エバンズに~」のフランキーや
「トミーとタペンス」のタペンス的なキャラ

演じる Zoe Telford
ポワロシリーズ「ナイルに死す」の小説家の娘ロザリー役や「シャーロック」、「刑事フォイル」
「刑事ジョー」等にも出てらしたのね

ジェームズ(ジム)・ピアソン 大佐が後見人を努める青年 (大佐の雇い人夫妻の遺児) 
ドラマ版でのジムは「 「高慢と偏見」のミスター ウィッカムキャラのようなクズ設定で 
原作のジェイムズは、間の悪い時に伯父を訪ねたばかりに犯人にされてしまう気の毒な青年
エミリーの会話でしか出てこないから、ドラマ版のような憎たらしいキャラじゃなく
ラストはハッピーエンドでめでたしめでたしってところなのにね
今回のドラマ版は出てくる人物全員が怪しく見えるようにするためか、不快なキャラだったり
何か隠しているっぽいキャラが多かった

演じるLaurence Fox さんは
こちらも俳優一家というか芸能一族と言う感じの、ジェイムズ・フォックスさんの息子さん
「SAS」や「刑事フォイル」にも出てらした
離婚した奥様はビリー・パイパーさんだったのね

ナラコット 警部 原作では有能な警察官ってことでしたが、マープルものには必要なしか

 


ドラマ版オリジナルは

エグザンプトンのスリー・クラウン邸の主人カークウッド (女主人からの変更)
James Wilby
ジェイムズ・ウィルビーさんはなんの映画かドラマでか忘れましたが、あまり良い印象なかったけど
これだけコンスタントに出続けられているのは、良い俳優さんの証なのかなと
私生活でも長年連れ添う奥様ありのようで、私の決めつけ(良い俳優は私生活も充実)にあいます

ウィンストン・チャーチル  Robert Hardy  
ロバートさんはimdbでのプロフィールによると、あちらでは有名な俳優さんのようで
出演履歴もなかなかのもので、知ってるタイトルも多々
1981年にもミニシリーズでウィンストン・チャーチルを演じているようです

大佐の召使 アフメッド・ガリ役は Jeffery Kissoon
原作では、インド人の召使いを置いているのはワイアット大佐

ミス エリザベス・パーシハウス役はRita Tushingham
1965年の「ドクトル・ジバゴ」に出てらしたようで、今回のベテラン枠のお一人か

ドクター・バート役は Paul Kaye

マーティン・ジマーマン役は Michael Brandon

リポーター役は Ian Hallard    

スミス・ジョーンことドナルド・ガーフィールド役は Matthew Kelly
偽名を使ったのは政府に雇われた大佐の身辺調査のためということだけど
原作のロニー・ガーフィールドと名前だけあわせたのかしら?
「ブリーク・ハウス」にでてらしたっけ、俳優よりもご本人出演の番組が多い

シェフのアーチー・ストーン(ハロルド・ジェイムズ) Michael Attwell
原作でもウィレット夫人の行動は刑務所から脱獄した夫を逃すための計画ってことでしたが
それに一枚加わるのがT大佐の妹の息子(ジムの弟ブライアン)で、脱獄した夫は出てこない

今回の脚色は  Stephen Churchett
マープルシリーズの「牧師館の殺人」「パディントン発~」「スリーピング・マーダー」
本作、「復讐の女神」「殺人は容易だ」の6作品書いてらっしゃる他に
俳優としてもマープルシリーズ4作品で検死官役で出てらっしゃるみたいです

 

と、長々クドクドとなりましたが、ただでさえ原作の登場人物が多くてページを戻ることも度々
エミリー目線で進むなか、みんながみんな怪しく思わせてくるので
ラストの犯人の動機には肩すかしをくらった気分で(そんなことで殺人を犯すのねと)
アリバイのトリックとウィレット母娘の行動の理由、交霊術会、犯行の手がかり(濡れた長靴)以外は
すべて変えてしまったのねってくらいの作品の仕上がりで、今後再読することはないだろうと
このようになってしまいました

 

 

原作での犯人は
親友を長年妬んできたバーナビ少佐で、T大佐が少佐名義で応募した懸賞金欲しさって・・ね
そこでドラマ版ではバーナビの名前を新聞記者エンダビーと交換したのか?
(犯人は替えてません!ってか?)
したがって動機も違ってくるからあのような改変になってしまったのか?
何が残念かって、原作では同情すべきキャラのジムや
一途な(とは言え男連中相手に結構ぎりぎり女を出してる)エミリーのキャラや
はたまたウィレット母娘にも同情の余地はあったのに(脱獄計画はすごいけど)
とにかくドラマ版は登場人物がすべて不快なキャラばかりっぽい印象で
(皮肉なことにエンダビー少佐だけが良い人キャラ)
なんだろ「シャーロック・ホームズ」シリーズで楽しませてくれたグラナダTVとは思えない改変
まあマープルさんを登場させるためにと言えば仕方ないのかな
でも極力長編ものは原作に忠実であって欲しいと願うばかり

今回のロケーション(シタフォード荘のお館の内装だけってことかな)は
2008年版「分別と多感」、「クランフォード」(こんなお屋敷でてきたっけ?と記憶が・・)や
ケイト・ベッキンセール版「エマ」、1998年版「テス」(これまだ観てなかったわ)
ポワロシリーズ「杉の柩」「バーナビー警部」や「警部モース」等々他にもたくさん利用されてるようで
ただ本作のシタフォードの外観はCGにみえて仕方なかった

ところでダートムーア プリンスタウンの刑務所と言えば
そうです、ホームズシリーズ「バスカヴィル家の犬」と同じ(最近「シャーロック」の再放送を観て
そこで本家のホームズを見直してみたら
ワトソン相手にホームズがボードを観ながら会話するシーンで確かに出てきました
そして脱獄した囚人をかくまうとかも同じだわと思い出しました(責めてるわけではありません)

 甥のレイモンドを訪ねてきたマープルさんが、レイモンドがまだフランスから戻らないため
トレヴェリアン大佐のお宅にって設定でしたが、おいおいレイモンドどんだけ家を持ってるの?

ミス・マープルが読んでいた本は The Smilling Corpse 「笑う死体」1935年

原作でたわいないことで引っかかったのは、ラストの方で
バーナビ少佐が「庭で邪魔になるほど生い茂る雑草をいかめしく眺めていた」ってくだり
雪で閉ざされるほどの季節なのに雑草って生えてるの?
とかその他の登場人物の怪しげな行動が放置されてたような(勘違いならすみません)
一度はドラマ版を観たことがあっての原作読み→ドラマ再観でしたので
もうごちゃごちゃ状態でエネルギー使い果たしました

マープルシリーズがもう作られてないなんて寂しすぎる
演じたベテラン俳優さんが亡くなるのはしょうがないとして、ヒクソン版とまでは行かなくても
もうちょっと原作に忠実な(ノンシリーズを無理やり持ってこなくてもね)お話が見たい
短編なら多少の改変も大目に見るわと、私は何さま?

そして次期マープル候補は誰が?と検索などしてみれば、マクイーワンさんが降板する時に
4,5人候補にあがっていた中の一人アイリーン・アトキンスさんがピッタリだと思ったけど
残念ながらもう80を超えてらっしゃったので
一番ヒクソンさんにタイプが似ていると思えたけど、なしかなぁ
雰囲気的にはいいかもと思えるのがヘレン・ミレンさんですが、なにせ大御所だし
結構おっ〇い出してるイメージあるから(あくまで出演作のイメージ)ちょっとひっかかる
なにより一番肝心なのは脚色ですわ、今のご時世に合わせなくてもって思う
BBCに期待したいけど、最近のおかしな方向性のNHKと同じで英国公共放送局も変わってるから
もう新作が見られないなら、NHKさんがヒクソン版マープルをやってくれるのを願うばかり
(遠い昔民放の深夜枠で観た記憶が・・)

なんだか感想になってませんが、一言で表すならドラマ版はいまいち
原作は、晩年のクリスティ作品の方が好みかもというところでしょうか

 

 

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