しろとくまの動物病院ブログ

獣医となって四半世紀。
動物診療を通して見えてきた世相を語る。

ステータス

2014-04-23 16:05:08 | 日記
日々の仕事や生活を、テクニックや裏技などによって上手に渡ろうとする風潮が強い気がする。
成功やステータスを手にするための、How to本や、テクニックを教えるセミナー、
ワークショップなどが巷に氾濫しすぎている。
自己実現のために、潜在意識や潜在能力を引き出し、ビジョンを引き寄せるといったものもある。
占いなどで少しでも災いを防ごうだとか、効率的に効果を引き出そうなどといった考え方が当然の
こととなっている。

自分も30代後半から40代前半の7~8年間ほど、潜在能力開発などのセミナーには頻繁に参加した。
その当時はそれらを行うことで、擬似充実感や擬似満足感を得たり、何となく感じていた焦りや不安を
誤摩化しもしていた。しかし、そういったテクニックなどを駆使して災いを回避した様にみえたり、
表面的に旨くいったとしても、それは結果的には人生の目的、目標までの道のりを、ひどく遠回り
していることに他ならない。もちろん、遠回りする経験が必要なこともあるだろうが、遠回りしている
ことに早く気付くことが大事である。

この世に生をうけた目的は、この次元で様々な経験を積み、その経験を通して魂を磨くことである。
つまり良いも悪いも、多くの経験がなくては魂を磨くことは出来ないのだ。
あの世の次元は何の変化もなく、ただひたすら浮遊しているだけの世界だ。
魂の変化も何もない。この世の感覚でいえば、退屈な世界なのかもしれない。
そして魂には段階というか上下というか階級というか、レベルが存在する。
すべての魂はこの世に産まれ出るとき、自分のレベルを高めるため自分の
ステージにあったトレーニングメニューを設定して産まれ出てくる。
自分自身で環境を設定して産まれてくるのだ。それは裕福な家庭であったり、
貧困な家庭であったり、場合によっては家庭ですらなかったり、身体に障がいを
もっていたり、家族に障がい者がいたり、様々なトレーニングメニューがあるのだが、
その中から自分の魂にとって最善の環境を自ら選んでくるのである。

この世に誕生する目的がもうひとつある。それは自分のつくったカルマを清算することだ。
先天的もしくは後天的にその魂がつくってしまったカルマを償うことで、
魂のレベルがアップするのである。

いずれにしても、日々トレーニングを積み重ねる事しか魂を磨く方法はないのであるから、
やるべきトレーニングを回避したとしても、後日またそのトレーニングは必ずや出現するはずだ。
自分自身で設定したのであるから。
その人にとって、同じような問題が繰り返し起こるということは、その問題を
クリアーしていないことに他ならない。
回避しているか、その場を取り繕っているだけなのである。

同じトレーニングを行うにしても、その取り組み方によって魂の磨き具合に
違いが出る。苦しい顔をして取り組むよりも、明るく楽しく取り組むほうが
効率的、効果的だということだ。

成功やステータスを手にしたければ、自分自身のために世のため人のために全身全霊をかけて
尽くすことである。ただ尽くすだけではない。明るく楽しく喜びをもって尽くすのだ。
辛い事や理不尽なことも、魂を磨くためには必要不可欠なことなのであるから、
それらのことも明るく楽しく喜びをもって受けとめればよいのである。
つまり嫌な事があるとそれは魂を磨くチャンスだということだ。
そして魂が磨かれ、レベルが上がれば上がるほど、成功やステータスがそれほど価値のない
ことに気付いてくる。そういった感覚を感じられるようになったとき、それはすなわち成功や
ステータスを獲得していることに他ならない。

成功やステータスなどといったものは、目に見えない感覚である。
目に見える通帳の残高や土地建物や服装や装飾品や名刺の肩書きなどで
表現したり評価したりしているうちは、本当の成功やステータスを手にしたとは
言えないし、自身も獲得したとは感じていないはずだ。

こんな友人がいる。米国人で現在58歳。男性。米国で1番優秀な大学を主席で
卒業している。運動にも優れていて、大学卒業時には有数のプロスポーツチームから
いくつもの誘いがあった。
しかし、その彼が選んだ仕事は、ベビーシッターである。
完全に両親から信頼されたベビーシッターは、幼児期から少年期に至まで子供の面倒をみる。
当然ながら幼児期から少年期までの間を、ほとんど彼と共に生活するのであるから、
彼の影響を多分に受けているはずだ。しかし彼が行った事は、その子供が持っているものを
すべて引き出すということで、彼の価値観や哲学を押し付けることではなかった。
すべて引き出すために最も大事な事は、その子供に向けて持っている最大限の愛情を注ぐことである。
そして、草花や昆虫や動物たちと触れ合い、自然の風やにおいや音や日差しを感じる事だ。

おおよそ30年の間、彼から育てられた子供たちは、現在素晴らしいポジションでリーダーとして活躍している。
おそらく彼には、もともと成功やステータスといった概念はなかったと思われる。
そういったものに価値があるなどと思った事はなかったであろう。
彼はいつも笑顔を絶やさない。大きな声で笑っている。楽しげである。
元気で健康である。病気などした事がない。見た目はとても58歳には見えない。
30代のスポーツ選手のようだ。もちろん子供たちの親のよき相談相手でもある。

彼に肩書きはない。大きな資産もない。地位も権力もそういったものは何一つ身に纏っていない。
だが彼の内面には、確固たるアイデンティティーが微塵も揺れることなく立脚していることであろう。
常に、感謝と幸せで満たされていると言っている。
子供の面倒をみることを通して自らの魂を磨き、行為、行動をもって自身と周囲のひとたちに幸せを与えた。
完璧なまでの成功例である。

成功の法則。引き寄せの法則。財力をあげる法則。人脈をつくる法則。などのような、巷に溢れている
成功本に書かれている成功とは異なる成功だが、どちらの成功をこれからの子供たちに目指してもらいたいか。

未熟な大人を成熟させることと、子供を成熟した大人にすることは、どちらが
現実的であろうか。

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