日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

「1Q84 -BOOK3-」

2010-05-01 07:31:18 | 小説
ご存じ、村上春樹さんのベストセラー小説シリーズ第三作です。

どこへ行くのかわからない、浮遊感のある冒険小説。いや、レイモンド・チャンドラーのハードボイルド的要素もありますね。
設定はSF的にはパラレルワールドということになります。

主人公達はみな自立し、孤立しています。
そういえば、彼の小説群に幸せな家族像というのは見あたりません。
この物語の終盤に「青豆」がつぶやく「ねえ、長いあいだ私は一人ぼっちだった。そしていろんなことに深く傷ついていた。」というセリフに集約されるように。
孤独な登場人物は、少ない仲間と手探りでわずかな絆と未来への光を求めて生きていきます(struggle)。

今を遡ること四半世紀前、大学生の私は春樹さんの小説をむさぼり読みました。
「風邪の歌を聴け」
「1973年のピンボール」
「羊をめぐる冒険」
の三部作は繰り返し読んだものです。

その中で「孤独もそう悪いもんじゃない」と勇気づけられました。

彼の小説は全世界で読まれ、支持されています。
皆、自立を促され、孤立し、孤独な人生を送っているのでしょう。

随所に稀代のストーリーテラーである「ハルキ節」が出てきて旧来のファンにはうれしいところ。
でも、一時読まなくなった原因の「展開のまだるっこさ」の健在(苦笑)です。
初期三部作では言いたいことをシンボリックに凝集した文章や会話が魅力的でしたが、「世界の終わり、ハードボイルド・ワンダーランド」あたりから文章が間延びしてきて魅力半減。
今回も、著者の頭の中にあるイメージを言葉で紐解いていく作業をしているような印象さえあります。
もっと、スピーディーにぐいぐい引き込んで欲しいものです。

と、いろいろ注文を出してしまいましたが・・・読んでいる間、楽しい時間を過ごせました。
物語のエンディングは「BOOK4」への予感を残してます。次作も待ってますよ、春樹さん。