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たけい小児科・アレルギー科の「食物アレルギー」情報

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卵アレルギー

2019-01-18 11:34:34 | 食物アレルギー
概要
 鶏卵(以下卵)は食物アレルギーの中で最も多い原因アレルゲンで、全年齢においては38%、0歳児の食物アレルギーの5〜8割を占めると言われています。
 一口に卵アレルギーと云っても症状の程度は様々で、ショックを起こす重症例から生卵以外は食べても症状の出ない軽症例まで存在します。即時型アレルギー症状では、皮膚症状(77%)、消化器症状(32%)、呼吸器症状(24%)の順で多く見られ、消化器症状が比較的多い特徴があります。

 治療の基本は症状が出る食品を食べない除去食療法です。医師の指示のもと、重症度に応じて適切な食物除去を行い、除去により不足する栄養を代替食品で補う方法です。
 卵アレルギーは3歳までに50%、6歳までに70%が治ります(※)ので、医師と相談の上、適切な時期に食物除去を解除していきます。ただし重症例は危険を伴いますので、入院の上、食物負荷試験を行います。
※ 3歳までに30.9%、6歳までに73%が耐性獲得(資料㊱)

卵の中のアレルゲンについて
・ 鶏卵のアレルゲンは主に卵白(白身)に存在し、「オボアルブミン」「オボムコイド」「リゾチーム」などのアレルゲン・コンポーネントが主犯格です。卵黄(黄身)がアレルギーを起こす力は実は弱いのです。
・「オボムコイド」は耐熱性アレルゲンと呼ばれ、加熱しても分解しません。残念ながら、オボムコイドの特異的IgE抗体陽性者は卵を加熱調理しても症状の出やすさは変わりません。
・最近、小麦や米といった副材料を混ぜて加熱調理すると、オボムコイドが水溶性へ不溶性変化し、抗原性が低下するという報告もあります(伊藤節子先生)。

卵アレルギーの方が注意すべき医薬品(当院で処方されることはありません);
リゾチームは「塩化リゾチーム」として市販の風邪薬の一部に使用されていますので注意が必要です。
(処方薬の例)レフトーゼ® ノイチーム® アクディーム®・・・いわゆるジェネリックにも多数あり、薬剤名を挙げるとキリがありません・・・しかし、2016年に発売が中止になりました。

卵アレルギーで注意すべきポイント

アレルギー食品表示
 卵は特定原材料として食品衛生法によりスーパーなどで市販される加工食品への表示を義務づけられています。しかし、食堂や食品売り場でつくられた料理・総菜、ファーストフード、レストランには表示義務がないので注意が必要です。アヒル卵、ウズラ卵も表示対象ですが、魚卵や爬虫類の卵は対象外です。
ゆで卵を食べて症状が出る人は、生卵を食べて症状が出る人の半分です。
卵黄:生卵から卵黄だけ取り出すと卵白の混入が避けられないため、卵黄だけを使用した食品や調理も除去の対象とすべきです。
鶏肉と卵白は交差反応しないので別のアレルゲンと考えます。鶏肉を食べて症状が出る人は卵アレルギー児の5%以下です。肉類は加熱による低アレルゲン化が起こりやすく、食肉の多くは加熱調理して摂取されるためアレルギー症状は出にくいとされています。鶏肉アレルギーの患者さんは他の鳥の肉にも反応する可能性が指摘されていますが、やはり加熱調理により低アレルゲン化する傾向があります。
ニワトリ以外の鳥の卵(ウズラ、ダチョウ/ガチョウ、アヒル、カモ、七面鳥・・・)は鶏卵と交差反応を起こします。反応の強さは鶏卵より弱い傾向がありますが、鶏卵と同じレベルの除去が必要です。
魚卵と卵白は交差反応しないため、別のアレルゲンと考えます。魚卵に反応する鶏卵アレルギー児は希です(イクラでは3〜5%)。
・加工食品に添加されている「卵殻カルシウム」には卵の成分が微量混入している可能性がありますが、焼成・未焼成ともにアレルギー反応を起こすことは希で無視できるレベルです。ただし、鶏肉を食べると症状が出る過敏な方はやめておいた方が無難でしょう。
・重症例では卵に触れたり舐めただけでも症状が出ることがあります。

Q. マヨネーズの原料は「卵黄」だから大丈夫?
A. いいえ。
 生の卵黄に脂と酢を加えてできるマヨネーズですが、生の卵黄と卵白を厳密に分けることは不可能なので卵白も混入します。卵黄成分が油で守られたようになって長期保存が可能となりますが、アレルゲン性は強いのです。アイスクリームも同様に、卵黄が主原料ですが卵白も混入しています。
 ただし、マヨネーズは酢(酢酸)と混じり合って変性しているため、生卵よりも食べられる可能性が高い食品ではあります。

Q. 鶏卵アレルギーと魚卵アレルギーは関係ありますか?
A. 関係ありません。
 前述のように抗原性については科学的なデータから関連性は否定されています。
 ただ、乳幼児では鶏卵アレルギーが多く、鶏卵アレルギーがないのに他の食物アレルギーがあることはほとんど無いという事実があります。そのため、イクラアレルギーはほぼ100%が鶏卵アレルギーの子どもに発症するのも事実です。

Q. 卵アレルギーの子どもが注意すべき予防接種は何がありますか?
A. 麻疹ワクチンとインフルエンザワクチンです(理論上は安全ですが)。
 麻疹ワクチンに関しては、1990年代にアレルギー性副反応が多発して問題になりましたが、その原因は卵成分ではなく添加物のゼラチンであることが判明しました。重症の卵アレルギー児の中にはゼラチンにも反応する患者がいたということですね。現在製造されているワクチンからは除去されていますので問題ありません。
 ワクチンに含まれるオボアルブミン(卵白アレルゲン)でアナフィラキシーを引き起こす濃度は600ng/回(ワクチン濃度としては1200ng/ml)以上と云われています。一方、麻疹ワクチンに含まれるオボアルブミンの濃度は1ng/ml以下、最近(2010年時点)の国産のインフルエンザワクチンに含まれるオボアルブミン濃度は10ng/ml以下です。つまり、理論上副反応は起こらないことになり、安全と考えられます。
 少なくとも鶏卵でアナフィラキシーなど重篤な症状を起こさない児では、普通に接種して差し支えありません。微量でもアナフィラキシーを起こすような重症者では、接種に際して事前に皮膚テスト、プリックテスト、分割接種なども考慮します。どれも完全なものではないので、有事の際に対応可能な体制で行うことが必要です。

※ 予防接種総論「卵アレルギー児への予防接種」もご参照ください。

卵アレルギーの除去食品と代替食品
 卵入り食品をアレルゲン性の強弱順に並べ、その代わりになる食品を例示した表です。いろいろな書籍で作られていて比較すると微妙に異なるのですが、この表が一番整理されていると思われます。
 この表は、制限食を解除する際にも利用します。医師の管理の下、一番下の欄の食品少量から開始し、症状が誘発されたら中止してまた数ヶ月後にトライし・・・これを繰り返しているといずれ症状が出ないときが訪れます。その後は量と回数を増やし、その食品がクリアできたら同じレベルの種類を増やし、その欄を制覇したら次の強度の食品を試す・・・この粘り強い繰り返しで解除を進めることになります。


(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年発行より)

こんなものにも注意!
・外食用サラダ・・・ 乾燥防止の予防スプレー
・表面の光沢・・・ 味付け海苔、一部の和菓子、菓子パン
・卵白で濁りを取る・・・ こんにゃく、メープルシロップ、はちみつ、コンソメスープ、果実酢、みりん
・製造ラインで混入・・・パン、菓子パン、ベビーフードなど
・その他の卵・・・しらす干し(お腹がオレンジのもの)

アレルゲンを含む発酵食品は安全?

2019-01-18 10:58:56 | 食物アレルギー
 食物アレルギーで除去する場合、加工品をどこまで制限するか、迷います。結論から云うと、ケース・バイ・ケースになりますので、主治医と相談して勧めてください。

 さて、その中でも悩ましいのがアレルゲンを含む発酵食品です。
 その種類により一律には捉えることができませんので、ご注意ください。
 簡単に云うと、

・ヨーグルト/チーズなどの乳製品は牛乳と同じレベルで危険
・みそ/しょうゆ、だし(かつおぶし、煮干し)は比較的安全

 となります。
 基本的なとらえ方を資料から抜き出してまとめましたので参考にしてください。

乳酸発酵(乳製品)
 牛乳は乳酸菌などによりヨーグルトやチーズなどの発酵食品に加工されます。乳酸発酵によるアレルゲン性の低下は、発酵に用いられる乳酸菌や酵母類のたんぱく分解酵素活性の強さにより異なりますが、一般的には麹菌を用いるみそやしょうゆの発酵(醸造)のようにアミノ酸レベルまで分解されることはなく、牛乳と同等のアレルゲン活性を残していると考えられます。
 したがって、牛乳アレルゲンの摂取量を考えるときには、食品中に含まれる牛乳蛋白の量を基準とすることが可能です。例えば、脱脂粉乳やチーズは牛乳蛋白が7倍に濃縮されている一方で、バターは主に脂質であり蛋白含有量は1/8と低い傾向があります。

みそ、しょうゆ(小麦・大豆製品)
 麹菌による1年近い発酵(醸造)過程で小麦蛋白がアミノ酸まで分解されています。完成したしょうゆには小麦蛋白質は残っていません
 小麦/大豆アレルギー患者でもごく一部の重症例を除いて摂取可能です。

だし(かつお節、煮干し)
 かつお節や煮干しのだしは、発酵により蛋白が分解した後にアミノ酸として抽出されます。そのため、これらのアレルゲン性は低く、魚アレルギーの方でも魚のだしは摂取できる可能性が高いとされています。

・・・以上は「食物アレルギーの栄養指導」医歯薬出版社(2012年発行)より

乳アレルギー

2019-01-18 07:37:25 | 食物アレルギー
※ 以前は「牛乳アレルギー」と呼ばれていましたが、近年「乳アレルギー」という呼称に変更されました。なお、育児用ミルクの原料は牛乳です。

概要
 牛乳は生後最初に気づくことの多い食物アレルギーであり、鶏卵に次いで2番目に多い原因アレルゲンです。食物によるアナフィラキシーの原因としては最多です。
 一口に乳アレルギーと言っても症状の程度は様々で、ショックを起こす重症例から生の牛乳以外は飲み食べしても症状が出ない軽症例まで存在します。即時型アレルギー症状では呼吸器症状が比較的多いことが特徴です。また、重症例では牛乳に触れたり、牛乳成分入りの入浴剤でも症状が出たり、牛乳を沸かした湯気を吸い込んで喘息発作が出ることもあります。この際は、集団保育や学校現場などでも対応が必要となります。
 治療の基本は症状が出る食品を食べない除去食療法です。医師の指示のもと、重症度に応じて適切な食物除去を行い、除去により不足する栄養を代替食品で補う方法です。
 乳アレルギーは3歳までに50%、6歳までに90%が耐性獲得(食べても無症状、つまり「治る」こと)ので、一生制限が必要となることはまれです。適切な時期に食物除去を解除していきます。
 ただし、乳アレルギーは卵アレルギーと比較すると耐性獲得(治ること)が遅い傾向があり、特異的IgE抗体価が低くてもショックを起こす例があることに注意が必要です。最近では、小学校入学時期になっても遷延する重症の乳アレルギー児が増加傾向にあります。

乳アレルゲンについて

牛乳中のアレルゲン成分(コンポーネント)について
 牛乳を放置しておくと、沈殿物と上澄み(乳清)に分かれます。主なアレルゲンとして、沈殿物には「カゼイン」(牛乳蛋白の80%を占める)、乳清には「βラクトグロブリン」が存在します。カゼインは加熱してもアレルゲン性は低下しません(耐熱性)が、β-ラクトグロブリンは加熱によりアレルゲン性が低下します。カゼインは加水分解されやすい性質があり、これを利用したのがカゼイン加水分解乳(ニューMA1®、ペプディエット®)です。乳清由来の蛋白質を利用したミルク(MA-mi®、ミルフィーHP®)もあります。
 ひと口に牛乳アレルギーと云っても、乳清に反応する人と、カゼインに反応する人がいます。チーズはほとんどカゼインの成分でできていて乳清は入っていません。従って、「牛乳を飲むとダメだけどチーズは大丈夫」という人がいるわけです。

乳アレルギーの方が注意すべき医薬品(当院で処方されることはありません);
・下痢止め、整腸剤の一部はカゼインを原料としているので注意が必要です。歯科で使用されるフッ素製剤の一部にもカゼインが含まれるため、必ず歯科医師に確認しましょう。
(例)タンナルビン® ラックビー® ビオスリー® エンテロノン-R®
・重症牛乳アレルギー患者では乳糖による副反応も問題になります。乳糖はタンパク質ではないので本来はアレルゲンになり得ないのですが、乳糖は牛乳から精製されて作られるため、極微量ですがの乳たんぱくが含まれます。内服薬(漢方エキス剤に付加されていることが多い)のほか、吸入剤には要注意
(例:吸入性剤)イナビル®/リレンザ® (アナフィラキシーの報告があります) アドエアディスカス フルタイドディスカス アズマネックスツイストへラー シムビコートタービュヘラー セレベントロタディスク セレベントディスカス レルベアエリプタ メプチンスイングへラー メプチンクリックへラーなど
(例:注射製剤)ソル・メドロール静注用40mg(125mg/500mg/1000mg製剤には含まれない)

乳アレルギーで注意すべきポイント

アレルギー食品表示
 牛乳は特定原材料として法律により市販加工食品への表示を義務づけられています(ただし「牛乳」ではなく「乳」とのみ表示)。しかし、食堂や食品売り場でつくられた料理・総菜、ファーストフード、レストランには表示義務がないので注意が必要です。

その他のまぎらわしい添加物:乳酸カルシウム、乳化剤、乳糖
 牛乳とは関係がなく、食べても問題ありません。
「乳糖」は本来糖質なのでアレルゲンとはならないはずですが、原料が牛乳であり乳成分が微量(0.3%)残るため、重症の乳アレルギー児(ラスト値5〜6では要注意)では症状が出ることがあります。

牛乳アレルギー用ミルク
 治療として牛乳を除去することはカルシウムの摂取不足につながるため、アレルギー用ミルクによる代替が必要となります。アレルギー用ミルクはアレルゲンである乳蛋白質を分解してできる低分子ペプチドあるいはアミノ酸乳のため、独特のニオイと苦みがあります。乳児期に開始しますと飲めるようですが、離乳食が進んで美味しい味に慣れてしまうとどうしても飲むことができない場合があります。その時には離乳食の中に混ぜて使いましょう。独特のニオイや苦みを目立たなくさせるには、牛ミンチ肉に混ぜたり、みそに混ぜたりするなどの方法があります。
 種類としては、MA-mi®、ニューMA-1®、ミルフィーHP®など。大豆乳(ボンラクト®、ソーヤミール®)も使用可能ですが、長期間使用した場合大豆アレルギーを引き起こす危険性がありお勧めできません。
 牛乳アレルギー用ミルクにはビオチンがほとんど含まれていないため、適切な時期に離乳食を開始しないと欠乏症を発症する可能性があります。

まぎらわしいペプチドミルク
 ペプチドミルク(ペプチドミルクE赤ちゃん®、アイクレオHI®)はアレルゲン性が残っており治療用ミルクとしては使用できませんが、除去食解除の際には利用可能です。


乳アレルギー用ミルク一覧



 乳アレルギー用ミルクはアレルギー反応を起こしにくい状態まで低分子化されているため、風味が独特で赤ちゃんにとって飲みづらい傾向にあります。
・MA-1 ・・・味がやや悪く飲みにくいけど下痢を起こすことは少ない傾向
・ミルフィーHP ・・・味はいいけど下痢を起こすこともあります

乳製品・ヨーグルト
 乳酸菌飲料やヨーグルトは乳酸菌の力である程度牛乳たんぱくを分解していますが、アレルギーを抑制するだけの効果はなく、牛乳アレルギーでは利用できません。チーズは乳たんぱくが濃縮される(牛乳の約7倍)ので強い反応が出る可能性が大です。一方、バターは主として乳脂肪分で、たんぱく質含有量は牛乳の約1/5と少なくなります。
 「粉乳」には牛乳の約10倍の乳たんぱくが含まれる可能性があり、注意が必要です。

マーガリンは乳製品?
 ・・・植物油に水素を添加し、脱脂粉乳を少量(ふつう0.3%)添加してある食品ですので、乳アレルギーの方は症状が出てしまうことがあります。

他の動物の乳、牛肉は?
・乳アレルギー児の90%はヤギ乳に反応して症状が出ます。
・牛肉の主なアレルゲンは血清アルブミンで牛乳のアレルゲンと異なります。牛肉中に牛乳のアレルゲン(カゼイン、β-ラクトグロブリン)はほとんど入っていません。牛肉を食べて症状の出る人は牛乳アレルギーの約10%で、残りの90%は無症状です。血清アルブミンは加熱により反応性が低下するので、十分加熱した牛肉ではアレルギー反応は起こしません(レアステーキには注意)。

「乳アレルギーと牛肉」「卵アレルギーと鶏肉」の関係
 卵は鶏が産む、牛乳は牛の乳であるから、親子関係で抗原性も同じと誤解されがちですが、そのようなことはありません。なぜなら、アレルゲンとなるのは蛋白質でありDNA(遺伝子)ではないからです。

乳アレルギーの除去食品と代替食品
 牛乳入り食品をアレルゲン性の強弱順に並べ、その代わりになる食品を例示した表です。いろいろな書籍で作られていて比較すると微妙に異なるのですが、この表が一番整理されていると思われます。
 この表は、制限食を解除する際にも利用します。
 医師の管理の下、一番下の欄の食品少量から開始し、症状が誘発されたら中止してまた数ヶ月後にトライし・・・これを繰り返しているといずれ症状が出ないときが訪れます。その後は量と回数を増やし、その食品がクリアできたら同じレベルの種類を増やし、その欄を制覇したら次の強度の食品を試す・・・この粘り強い繰り返しで解除を進めることになります。


(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年発行より)