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たけい小児科・アレルギー科の「食物アレルギー」情報

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乳アレルギー

2019-01-18 07:37:25 | 食物アレルギー
※ 以前は「牛乳アレルギー」と呼ばれていましたが、近年「乳アレルギー」という呼称に変更されました。なお、育児用ミルクの原料は牛乳です。

概要
 牛乳は生後最初に気づくことの多い食物アレルギーであり、鶏卵に次いで2番目に多い原因アレルゲンです。食物によるアナフィラキシーの原因としては最多です。
 一口に乳アレルギーと言っても症状の程度は様々で、ショックを起こす重症例から生の牛乳以外は飲み食べしても症状が出ない軽症例まで存在します。即時型アレルギー症状では呼吸器症状が比較的多いことが特徴です。また、重症例では牛乳に触れたり、牛乳成分入りの入浴剤でも症状が出たり、牛乳を沸かした湯気を吸い込んで喘息発作が出ることもあります。この際は、集団保育や学校現場などでも対応が必要となります。
 治療の基本は症状が出る食品を食べない除去食療法です。医師の指示のもと、重症度に応じて適切な食物除去を行い、除去により不足する栄養を代替食品で補う方法です。
 乳アレルギーは3歳までに50%、6歳までに90%が耐性獲得(食べても無症状、つまり「治る」こと)ので、一生制限が必要となることはまれです。適切な時期に食物除去を解除していきます。
 ただし、乳アレルギーは卵アレルギーと比較すると耐性獲得(治ること)が遅い傾向があり、特異的IgE抗体価が低くてもショックを起こす例があることに注意が必要です。最近では、小学校入学時期になっても遷延する重症の乳アレルギー児が増加傾向にあります。

乳アレルゲンについて

牛乳中のアレルゲン成分(コンポーネント)について
 牛乳を放置しておくと、沈殿物と上澄み(乳清)に分かれます。主なアレルゲンとして、沈殿物には「カゼイン」(牛乳蛋白の80%を占める)、乳清には「βラクトグロブリン」が存在します。カゼインは加熱してもアレルゲン性は低下しません(耐熱性)が、β-ラクトグロブリンは加熱によりアレルゲン性が低下します。カゼインは加水分解されやすい性質があり、これを利用したのがカゼイン加水分解乳(ニューMA1®、ペプディエット®)です。乳清由来の蛋白質を利用したミルク(MA-mi®、ミルフィーHP®)もあります。
 ひと口に牛乳アレルギーと云っても、乳清に反応する人と、カゼインに反応する人がいます。チーズはほとんどカゼインの成分でできていて乳清は入っていません。従って、「牛乳を飲むとダメだけどチーズは大丈夫」という人がいるわけです。

乳アレルギーの方が注意すべき医薬品(当院で処方されることはありません);
・下痢止め、整腸剤の一部はカゼインを原料としているので注意が必要です。歯科で使用されるフッ素製剤の一部にもカゼインが含まれるため、必ず歯科医師に確認しましょう。
(例)タンナルビン® ラックビー® ビオスリー® エンテロノン-R®
・重症牛乳アレルギー患者では乳糖による副反応も問題になります。乳糖はタンパク質ではないので本来はアレルゲンになり得ないのですが、乳糖は牛乳から精製されて作られるため、極微量ですがの乳たんぱくが含まれます。内服薬(漢方エキス剤に付加されていることが多い)のほか、吸入剤には要注意
(例:吸入性剤)イナビル®/リレンザ® (アナフィラキシーの報告があります) アドエアディスカス フルタイドディスカス アズマネックスツイストへラー シムビコートタービュヘラー セレベントロタディスク セレベントディスカス レルベアエリプタ メプチンスイングへラー メプチンクリックへラーなど
(例:注射製剤)ソル・メドロール静注用40mg(125mg/500mg/1000mg製剤には含まれない)

乳アレルギーで注意すべきポイント

アレルギー食品表示
 牛乳は特定原材料として法律により市販加工食品への表示を義務づけられています(ただし「牛乳」ではなく「乳」とのみ表示)。しかし、食堂や食品売り場でつくられた料理・総菜、ファーストフード、レストランには表示義務がないので注意が必要です。

その他のまぎらわしい添加物:乳酸カルシウム、乳化剤、乳糖
 牛乳とは関係がなく、食べても問題ありません。
「乳糖」は本来糖質なのでアレルゲンとはならないはずですが、原料が牛乳であり乳成分が微量(0.3%)残るため、重症の乳アレルギー児(ラスト値5〜6では要注意)では症状が出ることがあります。

牛乳アレルギー用ミルク
 治療として牛乳を除去することはカルシウムの摂取不足につながるため、アレルギー用ミルクによる代替が必要となります。アレルギー用ミルクはアレルゲンである乳蛋白質を分解してできる低分子ペプチドあるいはアミノ酸乳のため、独特のニオイと苦みがあります。乳児期に開始しますと飲めるようですが、離乳食が進んで美味しい味に慣れてしまうとどうしても飲むことができない場合があります。その時には離乳食の中に混ぜて使いましょう。独特のニオイや苦みを目立たなくさせるには、牛ミンチ肉に混ぜたり、みそに混ぜたりするなどの方法があります。
 種類としては、MA-mi®、ニューMA-1®、ミルフィーHP®など。大豆乳(ボンラクト®、ソーヤミール®)も使用可能ですが、長期間使用した場合大豆アレルギーを引き起こす危険性がありお勧めできません。
 牛乳アレルギー用ミルクにはビオチンがほとんど含まれていないため、適切な時期に離乳食を開始しないと欠乏症を発症する可能性があります。

まぎらわしいペプチドミルク
 ペプチドミルク(ペプチドミルクE赤ちゃん®、アイクレオHI®)はアレルゲン性が残っており治療用ミルクとしては使用できませんが、除去食解除の際には利用可能です。


乳アレルギー用ミルク一覧



 乳アレルギー用ミルクはアレルギー反応を起こしにくい状態まで低分子化されているため、風味が独特で赤ちゃんにとって飲みづらい傾向にあります。
・MA-1 ・・・味がやや悪く飲みにくいけど下痢を起こすことは少ない傾向
・ミルフィーHP ・・・味はいいけど下痢を起こすこともあります

乳製品・ヨーグルト
 乳酸菌飲料やヨーグルトは乳酸菌の力である程度牛乳たんぱくを分解していますが、アレルギーを抑制するだけの効果はなく、牛乳アレルギーでは利用できません。チーズは乳たんぱくが濃縮される(牛乳の約7倍)ので強い反応が出る可能性が大です。一方、バターは主として乳脂肪分で、たんぱく質含有量は牛乳の約1/5と少なくなります。
 「粉乳」には牛乳の約10倍の乳たんぱくが含まれる可能性があり、注意が必要です。

マーガリンは乳製品?
 ・・・植物油に水素を添加し、脱脂粉乳を少量(ふつう0.3%)添加してある食品ですので、乳アレルギーの方は症状が出てしまうことがあります。

他の動物の乳、牛肉は?
・乳アレルギー児の90%はヤギ乳に反応して症状が出ます。
・牛肉の主なアレルゲンは血清アルブミンで牛乳のアレルゲンと異なります。牛肉中に牛乳のアレルゲン(カゼイン、β-ラクトグロブリン)はほとんど入っていません。牛肉を食べて症状の出る人は牛乳アレルギーの約10%で、残りの90%は無症状です。血清アルブミンは加熱により反応性が低下するので、十分加熱した牛肉ではアレルギー反応は起こしません(レアステーキには注意)。

「乳アレルギーと牛肉」「卵アレルギーと鶏肉」の関係
 卵は鶏が産む、牛乳は牛の乳であるから、親子関係で抗原性も同じと誤解されがちですが、そのようなことはありません。なぜなら、アレルゲンとなるのは蛋白質でありDNA(遺伝子)ではないからです。

乳アレルギーの除去食品と代替食品
 牛乳入り食品をアレルゲン性の強弱順に並べ、その代わりになる食品を例示した表です。いろいろな書籍で作られていて比較すると微妙に異なるのですが、この表が一番整理されていると思われます。
 この表は、制限食を解除する際にも利用します。
 医師の管理の下、一番下の欄の食品少量から開始し、症状が誘発されたら中止してまた数ヶ月後にトライし・・・これを繰り返しているといずれ症状が出ないときが訪れます。その後は量と回数を増やし、その食品がクリアできたら同じレベルの種類を増やし、その欄を制覇したら次の強度の食品を試す・・・この粘り強い繰り返しで解除を進めることになります。


(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年発行より)

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