ー ウザランチ 1ー
僕たちの昼食は先輩と共通の上司を交えた3人で取ることが多い。
基本は外食で、行き先は上司が決める。
お店はいくつかあるが、職場近くの中華屋が僕たちのお気に入りだ。
特別美味しい訳ではないが、どれもそれなりに美味しい。
それにランチにはお得なセットもある。
『麺類1品+丼1品』どちらも5種類ずつくらいあるので、25通りの組み合わせが楽しめる。
お店に入り席に着くと、先輩がサッとランチメニュー表を取り上司に渡す。
上司が決め終わると、次に先輩が決める。
先輩が決め終わると、次にメニュー表が置き場に戻る。
「僕まだなんですけど」と言うと、忘れてたフリをして あぁ とか言いながら、大きいメニュー表が渡される。
「すみません、ランチのメニューをお願いします」と言うと、舌打ちしながらランチメニューを取り、僕に渡すのと同時に「すみませーん!」と店員さんを呼ぶ。
僕は上司と先輩が注文を言い終わるまでの間に決めなければいけない。
そんな中、先輩は「台湾ラーメンと麻婆飯にしたら?」みたくメニュー決めに口に出す。
「そんな辛い・辛いの組み合わせなんか誰も頼まないでしょ」などと答えようもんなら、とても嬉しそうな顔をして邪魔を繰り返す。
「ソース麺にしたら? ソース麺にしたら?」とソース麺を連呼しているが、もちろんそんなメニューはない。
で、さらに「醤油ラーメンと天津飯」でも頼もうもんなら、普通過ぎる・凡人・おもしろみがないと人の注文に文句を言う。
とりあえずここまでがルーティーン。
近所の中華屋に行くと必ずこのやり取りが繰り返される。
こんなルーティーンを3回も繰り返せば飽きそうなもんだが、先輩は飽きない。
仕事中には見せたこともない笑顔で毎度やってくる。
こんな些細なことがとても嬉しいらしい。
今日も満面笑みで中華を食べている。
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