告 発 状
告発人
住所 高知市御畳瀬38番地
職業 塾講師
氏名 印
被告発人
住所 東京都永田町霞ヶ関
氏名と職業 河村建夫(自民党国会議員、前官房長官)、自民党幹部首脳氏名不詳
一、告発の趣旨
被告発人の以下の所為は、刑法第156条(虚偽公文書作成罪及び行使罪)、第246条(詐欺罪)、第247条(背任罪)、第253条(業務上横領)、第197の2条、第197条3(加重収賄及び事後収賄)、第197条の4、第197条5、第198条に該当すると思料するので、被告発人を厳罰に処することを求め、告発する。
二、告発事実
自民党の河村建夫前官房長官は、麻生前内閣が、今年2009年8月30日の衆院選で惨敗した直後の9月1日に、国庫から官房機密費2億5千万円を引き出し、支出した。麻生太郎内閣は、今年4月から計8億5千万円の官房機密費を国庫から引き出したが、現平野博文官房長官が政権を引き継いだ時点では、官邸の金庫に残金はなかったという。
11月20日、「政権交代確定後の引き出しはおかしいとの指摘がある」との記者団の質問に対し、河村建夫議員は、「使途は非開示で、私の判断だ」と強調し、使途の真相についての説明責任を果たさなかった。9月1日から政権交代までの僅かな期間に、2億5千万円もの大金である公費を、いつ、どこで、誰が、何のために、どのように支出したのか不透明極まりない。状況証拠が物語る事実とは、政権与党であった自民党組織ぐるみの選挙資金のための偽装工作による「私的流用の疑い」が濃厚であると推察され、前官房長官による「汚職の罪」が思料されるので、被告発人等の罪状の解明を求める。
三、参考事項
11月9日以降だと記憶していますが、フジテレビ系の「とくダネ!」という番組で、社会党政権当時、官房長官室を訪ねた議員に対して、海外視察の餞別として「官房機密費」が支払われていた実態が関係者の証言で明らかになっているとのエピソードが披露されていた。これらの特別収入は、受け取った議員の会計処理としても適正に処理されなければならない公費であるが、「官房機密費」が領収書の要らない公費であるため、背任行為で、不適正処理(詐欺・横領)をされている可能性が高いと、多くの主権民は、歴代の官房長官による汚職の罪を疑っている。従って、現官房長官の職務実態に関しても真相究明が必要である。
四、告発の動機
ジャーナリストの西島博之氏が、10月12日号週刊プレイボーイNO.41で報じているところによると、最高裁事務総局の主計課長や山形地裁所長などを歴任した石川義夫氏が、回顧録『思い出すまま』(れんが書房新社)で最高裁判所に裏金や予算の不当流用があったことを告白。山形地裁時代には、職員のカラ出張で蓄えた裏金の出納を記載した大学ノートがあり、石川氏が焼却を命じたことも記されている。裁判所のカラ出張については、90年度、東京、広島、福岡など7地方裁判所で1620件、総額1973万円の旅費が「不適正支出」されていたことが会計検査院の検査で発覚。これについて、ある元裁判官が嘆く。「私自身、行ってもいない出張の書類に判を押してくれと言われたことがあります」と(裁判所組織ぐるみの詐欺の告白)
石川氏は、カラ出張のほか、事務総局幹部が旧大蔵省主計局幹部や自民党政治家などを一流料亭やキャバレーなどで接待していたとも記述。経理局主計課長時代、事務総局の人事局長と経理局長のお伴で、銀座の某クラブや某寿司店で飲食した。そのつけは「会議費」名目で処理。つまり、予算の不当流用があったわけである。もし、これが税務署の調査で法人に判明した場合、納税者は修正申告を書かされ、悪質なケースは重加算税が課せられる。公務員が血税を不当流用しても横領をしても、会計検査院は、経理の修正は求めても公務員個人や組織的謀略の結果の責任を不問に付し、その横領にかかる所得税の修正申告をさせるための手続きをとらず、告発もしない。これは、立法不作為ではないか。刑事訴訟法第239条には「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」と定められているが、これは、努力義務であって罰則規定がないからと公務を司る当事者等(検察官、裁判官も含む)は、憲法第99条と法律の要請を無視する。これは立法不作為であるとも考えるが、公務員の良心と内部統制機能の問題でもあろう。後に犯罪が証明された場合という条件で、「詐欺・横領に関する不作為の罪」として処罰規定を設ける必要があると思う。そうすれば積極的平和への力動が働く。また、公務員の犯罪には時効を設けてはならないし、その償いはきっちり果たさせる仕組みを作るべきだ。もちろん、そこに至る前に懲戒制度で自浄作用を働かせ内部チェックが行き届く仕組みこそ肝要である。いずれにせよ「修復的正義」こそが重要で、罰則はその一手段に過ぎない。悔い改めた犯罪者や情報提供の公益通報者に対しては、やり直しが利く寛容な仕組みも作らなければならない。
これは政治家のチャックが行き届いていない証拠でもある。与党政権の政治家には、会計検査院や監査委員会の報告の中身を精査して、国会でしっかり責任の所在を追及し、納税者の信託に応えていただきたい。それが知事や政治家の責務である。本物の政治家や官吏・公吏であるならば、憲法の要請に従い、その責任を全うするであろう。ところが、官房機密費という同質の犯罪を官房長官が犯している以上、この修復的正義は働かない。全ての真実を封殺しようとする現政権には怒りを感じ、機密費の全容解明が必要だと考えた。
昭和40年~59年まで、広島地方裁判所に勤めていた事務方の友人の証言では、当時、カラ出張、カラ残業の裏金を事務方職員全員に配分する慣習が確立してしたと言う。この裏金の配分は、所得税の対象にならないので、脱税状況が生まれる。これは、国家公務員による二重の国家に対する横領と背任行為である。国家公務員が公然と組織ぐるみで国家に対して詐欺を行っているのである。地方裁判所の所長ともあろう裁判官がこれに気づいていないはずはない。この警察・検察・裁判所・政府官邸の裏金問題は、会計検査院と検察庁が特捜チームを組んで、総力を挙げて真相究明しなければ、日本の司法に夜明けは来ない。
この法益侵害は甚大である。なぜなら、法の精神そのものが侵されているわけだから、そのような立法府や司法府からは歪んだ判決が生まれるのは必至だからである。裁判所の裏金問題では、裁判官の等級昇格を名目に、プールした予算が裏金となり、不正分配している可能性も元大阪高裁裁判官の生田暉雄弁護士が追及している。どこまで、日本の司法・政治・行政は腐ってしまっているのだろう。このモラルハザードを放置していて、法を司る仕事が果たせるとは到底思えない。検察庁にも同様のカラ出張、調査活動費などによる裏金が存在すると、高知地方検察庁元次席検事の三井環によって告発されたが、それを森山真弓法務大臣がもみ消した事実が判明している。その上、検察首脳による口封じ逮捕で三井氏は収監中である。私は、平和学の研究者を目指す卵として、この不正義を見逃すことは出来ない。この日本の政治家の汚職は、歴史的に修復する必要がある。三井環の告発を境に、それまでの四分の一に激減した調査活動費の決算報告書が検事正の汚職の真相真実を物語っている。これでは、検察官の本来の使命が全うされない。この汚職の連鎖を断ち切るため、修復的正義を目指し、官房機密費の真相究明を果たしていただきたい。
五、問題解決のため政策提案
公務員の裏金作りに風穴を開けるために、公務員法を改正し、
会計検査院の中に「公務員コンプライアンス委員会」を設立
「内部統制」のための政策提案
日本の公務員の組織的裏金作りは、共謀共同正犯の関係にある。これは、まるで、談合や闇カルテルによって、公金の過剰出費を引き出す企てに似ている。経済の公正取引を実現する「独占禁止法」を機能させてきた日本社会において、公務員の組織的横領を野放しにしてきた素因は何であろうか。自己や仲間の犯罪に甘い体質、つまり集団主義的心理で、組織や仲間に依存しなければ生きられない性格に要因がありはしないか。事後収賄である公務員の天下りについても同様で、公益を無視してでも仲間の利益を図ることによって、自己利益を引っ張る悪徳癒着関係が背景にあるに違いない。これは、しがらみ利権体質を断ち切ることのできなかった自民党体制の置き土産である。
この闇帳簿による裏金を抜本的に問題解決するためには次の立法案を実現するしかないとの結論に筆者は達した。すべて米国司法省が考案し1990年代から違反摘発に著しい実績を上げてきた制度をモデルとする独禁法の「課徴金減免制度」(リーニエンシー)が、談合に風穴を開けた社会科学的力動を参考にしている。2006年1月に施行されたこの制度は、談合、カルテルにかかわった企業の「自首ラッシュ」をもたらし、企業経営者は本気で「談合決別」に取り組むようになった。司法取引である減免制度は、公取委にとっても大きな武器となっている。
まず、公務員法改正案の一つの柱は、損害賠償責任の所在を明白にする「損害賠償金契約」と罰則規定に基づく「課徴金制度」の導入である。懲戒制度は人事裁量権者の恣意的運用で機能不全であり、国家賠償法の求償権の考えである重過失と故意の認定は曖昧すぎて、責任逃れにしかなっておらず、国や自治体の損害の補填には不十分極まりない。「損害賠償金契約」とは、損害論の考えに基づき利息までの損害の全てを返還させる契約である。「課徴金制度」は、横領や不正経理に関わった度合いに応じて、共謀共同正犯の主犯格や、従犯である幇助者、教唆者に課されるものである。
また、会計検査院の中に、公正取引委員会のような審判機能までを有する「公務員コンプライアンス委員会」を設立し、公務員犯罪の抜本対策に取り組む仕組みを機能させる必要がある。現在の会計検査院の不正経理の解明は、現場実態の情報収集能力不足で、十分な機能を果たせていない。さらに、解明した部分においても公務員の犯罪の摘発、並びに、不正所得による個人課税の修正申告の必要性があるのに、税務署とも検察庁とも連携ができていない。これは、縦割り行政の弊害である。警察・検察庁・裁判所の「裏金偽装」は、法の精神を歪める「訴訟偽装」の温床となっているので、最優先で真相究明と改革を進める必要がある。偽装した虚構を立証材料に使う恣意的解釈の乱発は、精神性において裏金づくりと同一であるから司法の根幹である法の精神が歪んでしまう。司法関係者の恣意が、作為的デッチ上げを放任するに至っては、その公益侵害と人権侵害は甚大である。
さらに、その課徴金には減免制度を設けることによって、不正経理の実態の情報を引き出す仕組みが必要だ。減免制度は、横領・詐欺の仲間を裏切って、コンプライアンス委員会に虚偽公文書の作成及び行使の証拠と共に横領・詐欺の情報提供をした公務員の課徴金を減免し、刑事責任も免除する仕組みである。この公益通報によって、共謀による不正から決別する自首ラッシュを引き出し、修復的正義の関係構築をもたらす必要がある。上からの指示でやむを得ず、有印私文書偽造罪である領収書の作成に手を染めている警察官や検察庁職員や裁判所職員、地方行政の公務員や政治家の公設秘書は多数いる。有る意味、組織犯罪の被害者であり、独立した立場で行動できない組織の歯車である以上、幇助の関係から抜けることは不可能な訳だから、司法取引なしには、彼らは自白できないだろう。元裁判官の証言では、事務方の要請で、裁判官までカラ出張の書類にサインをしていると言う。裁判官や政治家には独立権がある訳だから、いい訳は不可能である。組織の中の立場によって、その犯罪の質は異なるので、一律に「虚偽公文書作成罪」を適用するのは不正義である。処罰が目的ではない、社会の害悪の修復を目的とする「修復的正義の基準」を確立する必要がある。この要請の実現は、積極的平和の構築である。
公務員の横領撲滅は、その不正を許すことのできない良心的不服従の通報者に、修復的司法への改革の鍵が託されている。
この減免制度は、共謀関係で結束した仲間を裏切る「チクリ」に見える。しかし、地方公共団体や国、納税者、その行政サービスの受益者である国民にとっては歓迎すべき制度と言える。通報は、「不正経理」や「不正流用」に限定して、細かい裁量権の範囲内の非難にすぎない「チクリ」とは区別する必要がある。公務員の綱紀粛正、不正摘発には、これしか道はないと思う。横領された公金は、当然のことながら公務員の個人所得税の申告漏れで脱税されている。この修正申告にも財政再建の道が開かれている。
政権与党議員、検察首脳には、不正の解明が機能するように「司法取引の仕組み」を整備していただきたい。
六、立証方法
1 参考人 河村建夫国会議員の公設秘書
2 参考人 官房長官室付職員
3 高知新聞社2009年11月21日付け朝刊一面、11月7日付け朝刊「社説」 以上
東京地方検察庁 検事正殿
平成21年11月21日