11) 運動路 その2
そして遂にやって来た『運動路』!! 養老天命反転地は、ココでないと撮れないような、いろいろ面白い写真がたくさん撮れる体験型の美術館ですが、この一枚、と言われたら、『運動路』での写真が、私は最高♡だと思います。
故マイケル・ジャクソンが『smooth criminal(スムーズ・クリミナル)』のミュージック・ビデオで、地面に対して45℃ぐらい傾いていましたが、アレ並みに自分が地面に対して30℃は傾いているようにしか見えないスゴイ写真が撮れます。重力がどうなっているんだろう? まさか脚の筋肉を鍛えてこんなことを? って思わず目を見張ります。
が、実際は、かなりの傾斜地にソファやBOXキッチンを埋め込んであり、木も植えてあるのですが、そういう元もと斜めの背景を真っすぐに撮るんです。コツは、ソファの底面がまっすぐになるよう、カメラを斜めにして撮影することです。すると地面に対して直立に立っている自分の方が、逆に傾いて倒れそうに見える、という斜めの方と真っすぐの方の関係が、逆さまに反転して見える世界が創出されます。
忍も「一番いいものは、入口から一番遠い所に置いてあるなぁ~」とため息をついていました。ホントはじめココまで、どうたどり着いていいのかわからなくて、もう諦めかけたぐらいだったんですよ。頑張って来た甲斐があった!
ここからは、『陥入膜の径』という建物も見えます。これも見事に傾いています。ゆえに、建物をまっすぐに撮ると、その前で普通に立っている人が傾いて見えます。斜めの方を基準に見ると、真っすぐな方が斜めに見える。真っすぐな方を基準にすると、斜めは元の斜めのまま。世の中は全てこんな感じで、基準を何にするかによって、相対的・比較的に本来の姿が変わってしまうものなんでしょうね。
さて帰りの道ですが、来た道を戻るのでは芸が無い、という話になって、しかし来た道でないと道っぽい道が無いんですよ。
そこへ大学生ぐらいの男性3人組が、運動路の目の前にある急な坂道の山肌を、ドタドタドタって走って『宿命の家』の方に駆け降りて行ったので、「ゆっくりいけば大丈夫じゃない? かなり坂になってるけど」と言いながら、木と木の間にロープを手すりの代わりに張っているだけの山肌を、着物を着ているみたいな足取りでジリジリと降りていきました。カバンは肩に掛けているけど、両手にカメラと三脚、そして傘を持っていたので、ちょっと怖かったですが。
先に私が降りて、後から忍がそこを降りて来ていたのですが「ワァァァァァ!!」と叫ぶ声と同時に、ドタァッと倒れる音がしたから、「いけるん?」と叫んで振り返ると、見事に忍が尻餅をついて、地面の上に座っていたんですよ。
尻餅をついている人も、久しぶりに見たな、と思いましたが、ほんと皆さんも、養老天命反転地の鑑賞の際には、安全第一でお気を付けくださいね! 私が行っていた3時間の間にも、こうして転倒者が続出。忍は尻餅をついただけで、出血するようなケガは無く、器物や服の破損も無かったのでよかったですが。帰ってホテルでしっかりお風呂で温めてマッサージをしておいたら、次の日も特に問題は無かったみたいです。が、尻餅をついた時は、スゴい音がしたのでホントびっくりしました。
もう4時半ぐらいで日没の気配が濃厚になってきたので、出入り口にあるミュージアム・ショップの方に戻っていきました。私は養老の滝限定のキティちゃんストラップを家族のお土産に買い、忍は天命反転地記念バッジと、それとココで写真コンテストが行われたことがあったらしく、その入賞作を一冊の本にまとめたものがあったので、それを購入しました。この本って、養老天命反転地の良さが存分にわかるような、素晴らしい作品揃いでしたよ。入賞するようなものは、どれも玄人はだしというか、セミプロみたいというか。
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ところで忍も言っていましたが、この養老天命反転地って、いわゆる商売っ気が無いみたいに思えます。同じ体験型ミュージアムでも、ベネッセの瀬戸内国際芸術祭のお土産物の充実ぶりといったら、どこの島のショップに行っても、食べ物・生活雑貨・文房具・書籍にファッション雑貨、と見て回る時間もかかるし、あれこれ買っているとアート関連のグッズって結構値が張るので、あっという間にお金もどんどん落としていきます。それでもセンスいいし、思い出になるしで、買っちゃうのよね。
それとは対照的に、ここのショップは、チケット売り場の裏にこじんまりと、4畳半ぐらいの事務所の一角みたいなところにスチール棚を置いて、数も大変控えめなんで、正直欲が無いな~と思いました。私たちの行った平日の好天ではない肌寒い午後に行っても、お客さん自体は結構来ておられたから、いろいろ作ればかなりの売り上げが見込めると思いますが。岐阜土産なんかも全然置いてないんですよ。置けば私たちも、ここで買ったのにな。
楽市楽座も、戸外でのお食事は紅葉の時期に既に寒かったので、ミュージアム・カフェをショップに併設して運営し、「天命反転(この言葉、面白いですね!)ランチ」でも作って@1,500円くらいでドリンク付きで出せば、お客さんも喜ぶと思うのですが。
公式HPもPRが控えめで、忍の買ったコンテスト写真集を見ていると「スゴい!行きたい!!」って思わせるものがいっぱいあったのに、ほんの一部をサラリと紹介していて、これも瀬戸内国際芸術祭と比べたりすると、あっさりしています。
HPで、岐阜県の運営なのか、養老町の運営なのか、わかりにくかったですが、あれほどの広い敷地(約18,000㎡)に入場料が大人@750円では、収益をメンテナンスの費用で使ってしまうんじゃないかと心配です。行政だけの運営なのでこのようになっているのかもわかりませんが、創立以来今年で21年という話なのに、四国の私が初めて聞いた、みたいな調子です。本当にユニークで不思議なアート体験ができるから、個人的にもっと広報していただきたく、そうでないとモッタイナイな、と思います。