お店の中はシックな感じ。右端のアオザイの女性がママさんなのかなあ。この一角で、飲み物を作っていた。フレッシュジュースは、ここでおもむろに果物を切って、必死で絞ってた。アオザイ着てると、すごくスマートに見えるけど、近くにくると結構ボリュームのある女性なのよ。アオザイって、はじめて知ったんだけど、ウエストのあたりまでスリットが切れ込んでるから、手を上げたりすると、ウエストのお肉が見えるのね。ベトナム航空のスチュワーデスさんも、お肉がぷにってはみ出してて驚いたものだ。女性を世界一綺麗に見せる衣装ってのは本当かもしれないと実感。
店内から外を見たところ。すごく賑やかな感じ。
タクシーは右側通行なので、この店の真向かいで降ろされた。ところが、幅5mほどの道なのに、バイクがひっきりなしに通るので渡ることができない。そうこうしていると、このレストランの前で風呂椅子に腰掛けていた男の人がやってきて、手を引いて渡らせてくれた。どのお店にも、店の前にこういう人がひとりか二人いるのだが、この人たちの仕事はこのためなんだろうか?そんなわけない。道を渡れないのは私くらいなんだから。たいてい、お店の前か横の部分がバイク置き場になっていて、そこの整理をするためにいるみたいだ。そういえば、現地のお客さんたちはみんなバイクでやってくるものね。要するに駐輪場係ってわけみたい。
「Banh it ram」という料理。
疲れていたのもあって、あまり食欲がないなあと思いつつも、これがおいしいと聞いていたので、何かもわからずとりあえず頼んだもの。回りにあるのは、中華料理でいうおこげみたいなものだろうか。コメをつぶして揚げたような感じ。一目見て、「あ、くどそう。」と思ったが、食べてみるとこれがいける。あっというまに、1/3くらい食べてしまった。
とはいえ、これ、すごく量が多いのだ。30cmくらいのお皿なので、楽に3人分はあるだろう。悲しいかなこれ以上食べられないなあ。。相変わらずのココナツジュースは、ご飯のお供にはならないし。。
で、ここで解禁。アルコール。ベトナムにきて一度もアルコール飲んでなかったのだ。あ、バーで飲んだのは別にして、晩酌ではってことね。といっても、公会堂であった大阪のおばさまが、333(ベトナムのビール)は甘ったるくて薄いと言ってたのを思い出して、ハイネケンを注文した。
さっきの飲み物を作る場所というのが私の席からよく見えるので、退屈しのぎにじっと見ていたのだが、なんだか変ったことをはじめるではないか。ジョッキにいっぱいの氷を入れては、捨て、入れては捨てを繰り返している。「もしかして、食洗機で洗ってジョッキが熱いから冷やしてる?」と思ったのだが、それなら水で冷やしてもよさそうなもんだ。しばらく繰り返した後、最後にひとつ大きな円柱形の氷を入れて、ハイネケンの瓶と一緒に持って来てくれた。
「え??氷の入ったこのジョッキにビールを入れて飲むの?」 ベトナム人は、とことん温度にこだわるのかしらん。さすがにビールはキンと冷えておいしい。もうたくさんと思ってた先ほどの料理が、また進みだした。
そして、もっと他のものも食べたいなあと思い、「cha Gio」を頼む。これは揚げ春巻きだ。
でも、さっきの料理の量からすると、この揚げ春巻きも量が多そう。前日にホアンイエンで食べた生春巻きの大きさを思い出して、これは困ったと思い直す。
給仕のおにいさんに、少しでいいからと伝えようとするのだが、これが中々伝わらない。このレストランもベトナム語オンリーなのか。。身振りでなんとか説明していると、これまた前日同様に、他の給仕さんたちも集まってきた。さっきのママさんもいる。私が何か言いたそうなのを、みなで必死で解釈してくれようとしているのだ。こうなると途中でやめられないし。
まるで、ジェスチャーゲーム。大きな四角を作って、その半分だけというジェスチャーをすると、「ヤーッ!!」言いながら、うんうんという風にうなずく。「わかってくれたのね!」と思って彼の方を見ると、その彼がジェスチャーをし返すのだが、これが違うのだ。春巻きの形を作って、それをはさみでチョキチョキと切る仕草をする。
「ああ、私が大きな春巻きは食べられないから、切ってほしいと言ってると思ったのね。そうじゃないのよ。私はもうお腹が大きいからたくさんは食べられないの。」とお腹前で手を膨らませる動作をした。
すると、そこにいた全員が一斉に「ヤーヤー!!」わかった!!と言ってくれたのだ。そして、交代で、私の肩をたたいては「わかったよ」という風にうなずいてくれた。ママさんにいたっては、頭の上で手を打って、大笑いしている。
そんな大騒ぎをした揚げ春巻きだが、ちゃんと2個だけやってきた。すごく大きなお皿の中に、2個だけ。 しかも、その春巻き、やっぱり一口大に切ってあるし。思わず、笑ってしまったら、お店の人たちもみんなこちらを見てて一緒に笑っていた。たわいないことだけど、そういうサービス精神がうれしかったりするじゃない。
そんなこんなで結局、ひとりで1時間あまりも店にいた。すごく楽しいのだけど、8時半にはホテルに戻らなくてはいけない。ホテルに集合してから空港に向かうことになっているのだ。フリーだけど、空港とホテルの往復だけは、現地のガイドさんが付いてくれることになっているので、ちゃんと時間を守らないといけない。でも、時計を見て、まだ40分あるから余裕ねと思いながら、タクシーを呼んでもらうようにお願いする。いくらガイドブックを見て言っても、ベトナム語は通じないのはわかっていたので、仕方なく英語で言ったのだが、すると給仕をしてくれていた男の子のひとりがすごく嬉しそうな顔をするではないか。どうやら彼には英語が通じるらしい。「すぐによんであげるから、そこで待ってて」と言いながら、電話をかけてくれた。
タクシーを待っている間、先ほどのママさんが席にやってきて、大笑いしながら何か話しかけてくれるのだが、これは全然伝わらない。 でも、彼女的にはすごく受けてるらしくて、自分と私を指差しては、背中をバンバンたたいてくるのだ。ああ~~なんて言ってるんだろう。。
そうこうしていると、10分が過ぎた。タクシーってすぐに来るものだと思っていたが、郊外なのかなかなか来てくれないみたいだ。気になって表まで出て待とうとすると、さっきの電話をかけてくれた男の子が一緒に外まで出てきてくれた。そして、英語で何か話しかけてくるのだが、私の聞き取り能力の悪さゆえか、彼のベトナム英語なゆえかわからないのだが、ようするに彼の言ってることが私にはよくわからない。ごまかすように笑いながら首をかしげていると、レジの請求書の束をひっくり返して、英文を書き始めた。なるほど。書いてもらえば私にもわかるわ。受験英語しか知らない世代の悲しさよ。 でなぜか?こちらの言うことは、彼にちゃんと伝わる。そんな風で、私が聞き取れないと、紙に書いてくれては私が口で答えるという繰り返しだ。レジの紙は、何枚も繰っては、だんだんくちゃくちゃになってきたが、彼はそんなこともおかまいなしに必死で書いてくれるのだ。
そんなことをしているうちに途中で、これはもう間に合わないと思い、JTBのガイドさんの携帯に電話をかけさせてほしいと頼んだ。また店内に戻ってお店の電話を貸してもらう。今回の旅では、何度かこういう電話を借りるという場面があったのだが、ベトナムの人は電話代を受け取らないのだ。それって、電話代が極端に安いから?みんな「いいよ。いいよ。」と言ってくれたので、細かい日本人としては拍子抜けしちゃったんだけど。。不思議のひとつだ。
そんな調子で、お店の表でバイクの喧騒を前にして、30分近くも話をしていたことになる。その彼に「今度はいつ来るか?」と聞かれた時には、真剣に「いつだろう。。」と考え込んでしまった。いつかは来るのだろうかというのが本当のところなのに、「まだわからない。」と答えてしまった。すると、驚いたように「どこから来たの?」と聞いてきた。私が近くに住んでいるとでも思ったのだろうか。それなら、注文にあんなに苦労しないよ。
私が「日本から来たんだよ」っていったら、私の顔をまじまじと覗き込んで、穴があくほど見つめる。
「ええ~~。あの私って、なんに見えてるんでしょうか。。」と聞きたかったけどやめといた。聞かぬが花って言葉もあるしね。
それにしても、こんなに長い間、お店の仕事ほっぽりだしてていいの?「こら、さぼるな」なんて怒られたりしないのかしらん。それとも、これもお客様サービスとして、ちゃんと仕事として認められてるのかな。
それはともかく、ベトナムの男の人は本当に親切だ。私が日本人だからじゃないと思うのだが、どこへ行っても至れりつくせりのサービスをしてくれる。日本だと、エレベーターひとつ乗るのにも、我先にと飛び込む男の人ばかりで、「なんなの!」と思ったりするのだが、それとは真反対にいるような感じ。いわゆるお姫様扱いってやつね。 だから、優しさに飢えてる日本人女性が、ころっとまいっちゃったりするのかもしれないなあ。なんて思ったりもして。
すっかり長くなってしまった【クアンヒーレストラン】記。これで、ベトナム話しは終わりです。長々しい文章を懲りずに読んでくださった皆様、ありがとうございました。