cnx ゑぶろぐ

著作権の切れた(笑)、やまとことば(またはカラフミ)で綴るゑぶろぐ。
ふみは、やまとことばで、あらまほしか。

ゑぶろぐ(続近世畸人伝風)

2006-04-25 15:35:17 | ゑぶろぐ
播磨加古郡別府村の人、滝野古之丞、剃髪して自業自得といふ。貧春斎瓢水は俳諧に称ふる所なり。千石船七艘もてるほどの豪富なれども、遊蕩のために費しけらし。後は貧窶になりぬ。生得無我にして酒落なれば笑話多し。酒井侯初メて姫路へ封を移したまへる比、瓢水が風流を聞し召て、領地を巡覧のついで其宅に駕をとゞめ給ふに、夜に及びて瓢水が行方ヘしられず。不興にて帰城したまふ後、二三日を経てかへりしかば、いかにととふに、其夜、月ことに明らかなりし故、須磨の眺めゆかしくて、何心もなく至りしといへり。又近村の小川の橋を渡るとて踏はづし落たるを、其あたりの農父、もとより見知リたれば、おどろきて立より引あげんとせしに、川の中に居ながら懐の餅を喰ひて有しとなん。京に在し日、其貧を憐みて、如流といへる画匠初、橘や源介といふ。 数十張の画をあたへて、是に発句を題して人に配り給はゞ、許多の利を得給んと教しかば、大によろこび懐にして去りしが、他日あひて先の画はいかゞし給ひしととふに、されば持かへりし道いづこにか落せしといひて、如流がために面なしと思へる気色もなし。所行、大むね此類なり。はいかいは上手なりけらし。おのれが聞ところ風韻あるもの少し挙。

大坂の知己の者遊女を請んといふを諫て、
 手に取ルなやはり野に置菠薐草

ゑぶろぐ(山家集風)

2006-04-13 15:56:29 | ゑぶろぐ
願はくは花のしたにて春な死にそ そのきさらぎの望月のころ

佛には櫻の花をneたてまつりpas わが後の世を人とぶらはば

人はみな吉野の山へ入りぬめり 鄙の花にわれはとまらむ

花見にとむれつつ人のくるのみぞ あたら櫻のとがにはありける

花もちり人は都へ帰りなば 山さびしくやならむとスラム

あくがるる団子はさても山桜 ちりなむ後や塵にかへるべき

吉野山花の散りにし木のもとに 埋めし屍は翌年待つらん

註釈 neたてまつりpas ne~pasはフランス語の否定形。
   スラム 貧民街、a slum。ここでは「すらむ」との掛詞。