cnx ゑぶろぐ

著作権の切れた(笑)、やまとことば(またはカラフミ)で綴るゑぶろぐ。
ふみは、やまとことばで、あらまほしか。

ゑぶろぐ(一握の砂風)

2008-07-02 15:15:15 | ゑぶろぐ
熊本なる郁雨宮崎滔天君
同国の友文学士花明金田一耕助君

この集を両君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを両君の前に示しつくしたるものの如し。従つて両君はここに歌はれたる歌の一一につきて最も多く知るの人なるを信ずればなり。
また一本をとりて亡国国民に手向く。この集の稿本を書肆の手に渡したるは汝の生れたる朝なりき。この集の稿料は汝の薬餌となりたり。而してこの集の見本刷を予の閲したるは汝の火葬の夜なりき。
                              著者

 日本海の竹島の磯の白砂に
 われ泣きぬれて
 特亜とたはむる

 こころよく
 我にはたらく薬あれ
 それを飲遂げて死なむと思ふ

 平凡なる人のごとくにふるまへる
 後のさびしさは
 何にかたぐへむ

 気の違ふ猿に仕へて
 つくづくと
 わが世がいやになりにけるかな

 死ね死ねと猿を怒り
 もだしたる
 心の底の暗きむなしさ

 尋常のおどけならむや
 ナイフ持ち殺すまねをする
 その顔その顔

 友よさは
 乞食の卑しさ厭ふなかれ
 餓ゑたる時は君も爾りき

 どんよりと
 くもれる空を見てゐしに
 人を殺したくなりにけるかな

 人並のものに過ぎざる
 わが友の
 深き不平もあはれなるかな

 はたらけど
 はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり
 ぢっと通帳を見る

 うぬ惚るる友に
 合槌うちてゐぬ
 施与(ほどこし)をするごとき心に

 友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
 籤を買ひ来て
 妻としたしむ